第20夜 近藤史恵しかいない!

 前回は取り乱してすみませんでした。まさか「け」で始まるミステリー作家さんがいないなんて夢にも思いませんでした。本当、ミステリー作家としてデビューする人がいたら「け」から始まるペンネームつけたら何かと得ですよ。

「そんなこといってないで「こ」から始まるミステリー作家を紹介しましょう」

 そうだね。そうなんだけど、偏愛作家がねえ、いないんだよ。

「ええっ!」

 小泉喜美子さん。『弁護側の証人』は読んだよ。でも、“叙述ミステリーの最高峰”と言われても、ピンとこなかったな。

 小鷹信光さん。ドラマ『探偵物語』の原案者だね。でも、テレビとは全然違うらしいよ。読んでないけど。

 古処誠二さん。気にはなってるんだけど、読んだことないんだ。

 小松左京さん。学生の頃ショートショートとか短編集は読んだ。でもSFの大家じゃん。

 今野敏さん。やけに、最近人気だね。でも読む気しない。警察物ってあんまり好きじゃないんだ。

 近藤史恵さん! 彼女なら七冊ぐらい読んでる。でも偏愛作家と呼んでいいのかな。でも、面白いよ。彼女にしよう。


 申し訳ないけれど、彼女のデビュー作『凍える島』は読んでない。読み始めたのは『女清掃員探偵 キリコシリーズ』からだ。最初はなんかつまらなかったけれど、読み進めるうちに面白くなってきた。これって最初は文春文庫だけど、途中から実業之日本社文庫に変わるんだよね。実業之日本社文庫って、案外面白いの多いんだ。

「ノベルスを持っている強みですね」

 そうかもね。で、彼女の最高傑作は『サクリファイス』だ。彼女、自転車のロードレースが好きみたいで、詳細に、レースのことやチームのことを書いている。そして、ラスト。驚いたな。でも続編の『エデン』はミステリー要素が少なくて、あんまり面白くなかった。


 それから、シリーズとして面白いのは『ビストロ・パ・マルシリーズ』フランス料理店で起こる日常の謎系だね『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』と出ている。第三弾もあるみたいだよ。僕はこのシリーズが一番好きだな。

「なんか、職業小説が多いですね」

 そうだね。きっちり取材するタイプなのかな。


 ごめんなさい。これしか読んでいないんだ。偏愛作家とは呼べませんね。

「充分じゃないですか?」

 そう言ってくれると助かる。お礼に相撲を取ってあげよう。

「やったー」

 僕は金太郎さんと稽古しているからね。白鵬より強いよ。

「クマですもんね」

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