第11夜 大倉崇裕は玉石混合?

 このところの急な寒さで、風邪をひきましてね。熱があるのか、眠れないんですよ。もちろん、風邪薬も睡眠薬も飲みましたよ。でも僕の強烈な不眠症に今夜は効かないみたい。だから、無駄話にお付き合いください。

「ぺこりさん。大丈夫ですか?」

 咳とくしゃみと、鼻水が止まらない。気分はブルーだよ。

「気分が白くなくてよかったですね」

 若い人のわからないジョークを言うんじゃない。きみ、いくつだ?

「十万歳ですけど」

 だいぶ、先輩でしたのね。口調、変えなきゃいけない?

「今までと同じでいいですよ」

 そう。じゃあ始めよう。かっぱくん、大倉崇裕さんは知っている?

「なんか、深夜のドラマの原作者で見たことがあります」

『白戸修の事件簿』だね。

「ああ、そうです」

 面白かった?

「いつも途中で寝てしまって……分かりません」

 眠れるんだ。いいなあ。『白戸修の事件簿』は単行本の時は『ツール&ストール』って言ったんだ。そこそこ売れたよ。表題作は小説推理新人賞を獲得している。その前年には『三人目の幽霊』で第4回創元推理短編賞佳作を受賞していてこの作品をタイトルにした本で、2001年にデビューしている。

 大倉さんの小説の特徴は「落語」「フィギュア」「山岳」「刑事コロンボ」という、自分の趣味を作品にしているところかな。もちろん、違う作品も書いているけどね。

『白戸修の事件簿』はシリーズになってて、単行本を含むと三冊出ている。事件に巻き込まれやすい体質の白戸修を主人公にしたユーモアミステリーだ。僕はこれを推すね。

「『三人目の幽霊』はどうですか?」

 これもシリーズになっている。二冊目が、僕が表紙だけ見て時代小説の棚に差しちゃった『七度狐』だよ。これは長編なんだ。後の二冊は連作短編集だ。落語が好きな人には面白いんじゃないかな。

「ぺこりさんは?」

 僕は落語と言ったら『笑点』しか知らないから。でもそこそこ面白かったよ。もう一つ『オチケンシリーズ』がPHP文芸文庫から出ているけど、金銭面の都合で読んでいない。金さえあれば買うんだが……


「次はフィギュアですね。スケートものですか?」

 違うよ。オタクの好きな方だ。これを題材にしたのが『無法地帯』幻のフィギュアを大の大人が取り合う、宝の奪い合いパターンだ。これは、まあまあだったかな。よく覚えていないや。まあ、読んで損はないんじゃないの。


「次は山岳ですね」

 これは『聖域』という作品が面白かった。でもヤマケイ文庫から出ている『生還』ははっきり言う。最悪につまらなかった。でも登山する人なら別の感情を抱くかもしれない。そのあとたくさん、山岳小説を出しているんだけど、お金のやりくりがつかなくて、買ってない。どうしても山岳小説だと笹本稜平さんや樋口明雄さんに目がいっちゃうな。


「刑事コロンボは?」

 これはテレビドラマにもなった『福家警部補』のシリーズだな。僕は一冊目は名著だと思っている。でも二冊目はなあ……微妙だったな。なんか大倉さん、少し、劣化していないか。『警官倶楽部』とか『小鳥を愛した容疑者』とか、読んでいて苦しかったもの。正直言うよ、大倉さんの作品は玉石混交だ。最高に面白いのもあるけど、「壁ドン本」もある。

 全部読んでないから推測だけど『白戸修』シリーズと落語もの。山岳ものもいけるんじゃないかな。『福家警部補』シリーズは一巻だけで充分かもね。

「今回は手厳しいですね」

 それだけ、期待が高いということだ。

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