第9夜 逢坂剛を侮るな!

 なあ、かっぱくん。久々に本当に眠れないよ。

「そんな時の時間つぶしに、このコーナーがあるんですよね」

 そうだよ。でもさ、江戸川乱歩論で疲れちゃったんだよ。

「じゃあ、寝ればいいじゃないですか」

 脳が興奮して眠れないの。しょうがないから一席打つよ。

「付き合いますよ」

 今回はね、本当に偏愛している作家さんだから気楽に行けるよ。

「よかったですね」

 その作家は逢坂剛さん。僕ねえ、逢坂さんにはとても悪いことをしてしまっていたんだ。

「どうしたんですか?」

 うん。逢坂さんのこと、単なる通俗作家だと思って、敬遠していたんだ。食わず嫌いならぬ、読まず嫌いだね。

「じゃあ、どうして読むようになったんですか?」

 ある本の叙述トリックベスト3に逢坂さんの『燃える地の果てに』上下が入っていたんだ。僕、叙述トリック大好きなんだ。だから、すぐに買って読んだ。そしたらすごかった。感動したよ。それからは検索して、逢坂さんの本を買いまくったんだ。最初は『岡坂神策シリーズ』そんな本知らなかったから重版未定だと思っていたんだけれど、ラッキーなことに全部揃えられた。今、手元に本がないからはっきり言えないけれど、岡坂神策って人は神保町で、調査会社を一人でやってるんじゃないかな。何か事が起きると、古書店に行って、その関係の本を買いまくって調べるんだ。それが羨ましくてね。

「今ならインターネットでちょいちょいですけどね」

 書かれた時期を考えろよ。ネットなんてなかったんだ。携帯電話もないんだぞ。足で情報を稼ぐ。憧れるな。


 それからね、スペイン物。この中の最高傑作は何と言っても処女作の『カディスの赤い星』上下。これは本当に面白いよ。書店員の時、フェアをやろうと思ったくらいだ。でも、キツネ顔の女店長に反対されて、できなかったんだ。悔しいな。ちなみにこのキツネ顔の女店長が僕を病気だからってクビにしたんだ。恨んでやる。

「憎しみが深いようですね」


 うん。それから、テレビで低視聴率だった『百舌シリーズ』ね。これはハードだよ。主役だと思っていた人があっけなく殺されちゃうんだ。叙述トリックも使われているしね。テレビのことは忘れて読むべし。


 あとは『相棒に気をつけろシリーズ』。これにはある仕掛けがあるんだ。実際に読んでから解説を読むとびっくりするよ。


 忘れちゃいけないのは『禿鷹シリーズ』主役は悪徳警官なんだけど、悪の美学。強いものが勝つっていう感じ。これは人を選ぶかな。


 重厚なものを読みたいなら『イベリアシリーズ』第二次世界大戦中の各国のスパイたちの動きをダイナミックに描く、超大作だ。今月か来月、最終巻が文庫化されるから、この期に全部読もう。でも初期のものが講談社に在庫あるかな? ちょっと心配。僕、売っちゃったんだよね。なんとかもう一度読み直したいから金策をしなきゃ。


 あとね、西部劇や時代小説も書いているんだよ。西部劇の『アリゾナ無宿』『逆襲の地平線』も面白かった。時代劇はごめんなさい。読んでないんだ。金の関係でね。


 他にも面白いのがいっぱいあるけど、眠くなってきちゃった。本屋さんには新刊しか置いていないことが多いから、注文して取り寄せるといいよ。

「面白いのに置いていないなんて、本屋も商売下手ですね」

 出版流通される本が多すぎるからいけないんだ。極論言っちゃお。カクヨムやっているアマチュアの皆さん。あなたの力作はたぶん本になりません!

「暴論です」

 ごめんちん。でも逢坂剛。一度読むと虜になるよ。たぶん。

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