第7夜 歌野晶午は呪縛から逃れられるか?

(これで焼き直し、終わりです。我慢して付き合ってくれた方、ありがとう)


 さあ、今宵もやってきました。PV上がらぬ不人気コーナー。『眠れない夜はミステリーを語ろう』このコーナー、みなさんと語り合うのではなく、僕が勝手に語り尽くす場所です。

 今宵は歌野晶午さんなんてどうでしょう。

 歌野さんといえば『葉桜の季節に君を想うということ』が大ブレークしたのは十年前か。前にも話したけれど、この本に会うまでは、ミステリー小説をテレビの二時間サスペンス程度の低俗なものと思って、全く手を出さなかった。それが書店の文芸書担当になって『このミステリーがすごい!』で、聞いたこともない小説家が一位をとったと知って、あくまで勉強のために買って読んでみた。寒い頃だったので布団の中に丸まって読んだ。内容はネタバレしてしまうから言わないけど、じわじわと真実が分かってくるうち「なんだこりゃ」と僕はびっくりしてしまった。「ミステリーってこんなにすごいことができるのか」と感嘆した。以来今日に至るまでミステリーを読み続けている。まさに僕にとっての転換期、ビッグバンに相当する刺激を与えられた。未読の方は是非読んでいただきたい。ああ、まだこの本を読んでいない人は幸せだ。あの大トリックに騙される喜びを持てるんだから。


 そのあともちろん、歌野作品を読んだが、合格点を与えられるのは『ROMMY 越境者の夢』と『ブードゥー・チャイルド』ぐらいだ。お金がないから全部読んでいないけれど、新装版として出た信濃譲二シリーズ『長い家の殺人』『白い家の殺人』『動く家の殺人』はいくら若書きといえど、及第点は与えられなかった。

 氏は本格を超越した何かを模索しているようだが、今の所上手くいっていないように感じる。言ってみれば『葉桜〜』の呪縛に取り憑かれているような気がする。あれよりももっと人を驚かせたい。そういう気持ちが氏を苦しめているのではないだろうか。氏の作品を全部読んだわけではないのであくまでも僕の勝手な憶測だ。間違っていたら訂正します。誰かご連絡ください。


『葉桜〜』を超える作品を書いた時、歌野さんはミステリー作家の頂点に立つことができると僕は思う。変格の本格を小説を極める。そのつもりで作品を書いて欲しい。できたら、明るめの作品がいいな。

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