第4夜 男だったら稲見一良を読め!
(まだまだ『カクヨム廃人』の焼き直しです。加筆訂正はしています)
脳が興奮してやっぱり眠れない。今回は稲見一良さんのことを書いてしまうよ。かっぱくん。
「はい」
ところでかっぱくん、稲見さんのこと知ってる?
「いいえ、知りませんでした」
僕もねえ、長いこと知らなかったんだよ。でもね、古い『このミステリーがすごい!』には上位にランキングされているんだよ。
「でも、新刊とか見ませんね」
うん、残念ながら物故者なんだ。それにね、生前、九冊しか本を書いていないんだ。
「少ないですね」
本業に専念していて小説を書いていなかったんだ。それが肝臓癌の手術を受けて、自分の余命を悟ったんだろうね。それから小説を書くようになったんだ。
「闘病をしながら書いていたということですか?」
そう。だから九冊しか、世に残せなかった。とってもおしい作家さんなんだ。
「おすすめはなんですか?」
僕が強くすすめたいのは、ちょっと男性限定になってしまうんだけどハヤカワ文庫から出ている『ダック・コール』だね。たぶん絶版にはなっていないはずだ。山本周五郎賞を受賞しているからね。はっきり言うよ。「男だったら必ず読め!」
「珍しく、はっきり言いましたね。では女性は?」
うん、女性にはちょっとおすすめはできないなあ。でも、強い女になりたかったら読んで損はないと思う。
「なんでですか?」
詳しくは内容に触れちゃうから言わないけれど。本当に強い男とは何かということを考えさせる骨太の小説なんだ。
「ハードボイルドなんですか?」
それとはちょっと違うな。とにかく強い心を持った男が出てくる。現代の口ばっかりで実のない男性に、男のダンディズムを見せつけるというのかな。不器用で粗雑だけど本当の温かい心を持つ男。憧れないかい?
「僕もそうなりたいです」
きみの場合はまず、カナヅチを克服するべきだね。それがかっぱのダンディズムだ。
「余計なお世話です」
そりゃ失礼。男には一見、ぶっきらぼうに見えても心に愛と優しさのある人がいるだろ。そういう男が何人か出てくる。
「そりゃあ、男のバイブルですね。読んでみます。他におすすめはありますか」
うん。今流通しているか自信がないけれど何年か前に、光文社文庫から『セント・メリーのリボン』『猟犬探偵』『男は旗』それから角川文庫から『ソー・ザップ!』が復刊されたんだ。どれも面白いよ。でも入手できるかな。書店で聞いてみてよ。僕は全部持っているよ。
「九冊書かれたと言いましたね。あとの四冊は?」
残念ながら絶版や重版未定になっていて、新刊書店では購入できない。古本屋か図書館を当たるしかない。僕は古本や図書館の本は嫌いだから、諦めている。でもさ、稲見さんが魂込めて書いた本だぜ。出版社はなぜ復刊しないのか、とても疑問だ。というより、頭にきている。良作を見つけ出して復刊するのも出版社の役目だと思うんだよな。
「出版社だって利益優先だから仕方ないですよ」
いや、復刊したら売れる。売れなかったらサーカスに売り飛ばされたっていい。
「ぺこりさん、いつにもなく強気ですね」
それだけの価値のある作家さんだと僕は見ている。KADOKAWAさんだって重版未定にしている本がありますよ。復刊してください!! せつに願います。僕の駄文なんかほっといていいから、稲見さんの本、ぜひとも文庫で復刊してください。そしたら、武骨で優しい男が日本に増えますよ!
「極論だあ」
それだけ、僕は本気だってこと。これをご覧の諸兄。ぜひとも角川文庫編集部さんに手紙、メールを送ってください。かっこいい男を増やしましょう。
「今回は偏愛が過ぎますね」
それだけ良作だと思うんだ。言い過ぎは勘弁してくれ。
「口調まで変わってる。こりゃあ、マジですね」
うん。
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