第2夜 東直己は知ってるね?

 (このエピソードは『カクヨム廃人』38話の焼き直しです。このシリーズを一本にまとめたくてこういう強引な技をつかっちょります。手抜きではございません。なんてね)



 僕、思い出しちゃったんだ。「あ」のつく作家でまだ好きな作家がいることにさ。東直己さんだ。東さんといえば、映画になった『探偵はバーにいる』で有名だけど(バーはカタカナでいいんだよ。BARは映画だけ)主人公の『ススキノ探偵』“俺”は僕のイメージだと大泉洋じゃないなあ。もっとガタイのいい大男、どちらかといえばデブなんだよなあ。はっきり言っちゃうと東さん自身のイメージなんだよね。写真でしか見たことないけれど。まあ、北海道といえば大泉洋だし、僕も『水曜どうでしょう』とか『1×8いこうよ』とか『おにぎりあたためますか』とか、大泉フリークだから結構なことなんだけどね。この役と真田信幸役はちょっと違うなあって感じ。役の幅を広げるのもいいけれど、原点を忘れないで欲しいな。あっ、僕、まちがえていた。大泉洋はコメディアンじゃなくて舞台俳優だった。ごめんごめん。


『ススキノ探偵シリーズ』は名前を明かされていない「俺」が主人公で、ライトでユーモアのある作風なんだけど、取り扱う事件は重いものがある。北海道の闇を題材にしたものが多いのかな。東さんのシリーズ物は大きいものだとあと二つあって、『探偵・畝原シリーズ』と『榊原健三シリーズ』がそれなんだが題材には暗い川が流れていてとても重い。時に畝原シリーズは読んでて辛いものがある。それでも読んでしまう。リーダビリティーの高さの証明であろう。


 僕の自慢は『探偵はバーにいる』が映画になる何年も前に、このシリーズのファンになっていたことだ。その頃のおいらは左遷されて、神奈川県のど田舎? と言っちゃ失礼か。天下の政令指定都市? 相模原市の大学病院にある、ちっちゃな本屋で働いていた。この店、店内のほとんどが医学の専門書で、医学書の知識のないおいらは一般書、雑誌。つまり医学書以外のすべての担当をやっていた。助手のアルバイトもいなかったんだぜ。おいらの休みの日は新刊から注文品までみんな放置だ。いい加減なところだよ。でも、すごーくヒマだから、おいらは自分の趣味に走っていた。つまり、ミステリー文庫の棚をおもいっきり充実させて、遊んでいたんだ。その店の一番のお得意様はおいらってわけ。その点では楽しかったなあ。そこで、自分にあったミステリーはないかと検索していたら出てきたのが『探偵はバーにいるシリーズ』だ。でも、その収集は楽じゃなかったよ。出版社にも取次(本の問屋)にも在庫がないものが数冊あったんだ。僕は他店舗の在庫を全部調べて、ようやく全巻確保した。まだ、ハヤカワ文庫がでっかくなる前だ。早川書房さん、なんで文庫をでっかくしちゃったんだろ? 現場ではとっても不評だったぜ。お客さんの反応はわからなかったけど。


 Wikipediaで調べたら『ススキノ探偵シリーズ』2011年で発行が止まっている。それまでは一年に一回は出てたのに。東さん、体調大丈夫かな? お酒飲む人だから気になるな。

 映画のせいで、『ススキノ探偵シリーズ』の装丁がスタイリッシュなものに変わってしまった。でも僕は初期の、ちょっともっさりしたイラストの表紙が好きだった。とても残念に思う。


 ああ、また朝だ。かっぱくん今日の朝食は?

「いくら丼です」

 分かってきたじゃないか。

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