Jupiter to Mars
葱奴
第1話
今にも落ちてきそうな星々の下で二人は確かに存在した。
今夜は木星と金星が最接近する日である。
「近いな」
「近いわね」
二人の男女が同時に呟いた。
少し驚いた風にお互いの顔を見つめ、微笑む。
そして二人並んでまた星を見始める。
時刻はそろそろ夜中の12時。
男は心の中でふと思った。
あんなに近くに見えるのに、本当は離れている。
重なることは永遠にない者たち。
まるで自分達みたいだなと。
だが、男はそれを口にすることはなかった。
言葉にすることで、実感するのが嫌だったのだ。
「まるで私たちみたいね」
ふっとに彼女がつぶやく。
自分の気持ちが伝わったのかと思い、驚いて彼女を見ると無邪気な顔で笑っている。
時刻は12時。
触れるか触れないかわからないぐらいのキスを交わす二人。
男は思った。
自分たちは離れることはない。
ずっと近くにいるものだと。
しばらくの間互いに見つめ合っていたのだが、彼女の方から切り出した。
「また来週会いましょう」
「あぁ」
そして二人は別れた。
日付は木曜から金曜に変わる。
Jupiter to Mars 葱奴 @negidon33
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