王女さまはカウチポテト
お母さまは怖い。
女王様は恐ろしい。
とにかく恐怖の二文字がそこにある。
以前、寄宿学校にいたころにパジャマパーティーをしたとき、各国の姫君たちがあつまって、自分の怖いものを告白する大会があった。(この場合、告白というのが大事なポイントである。王女たるもの少しでも秘密めいたものがあればぶっちゃけではなく告白という言葉を使い、周囲の者に心を開いているという姿勢をアピールすることが民衆や部下の信頼を得るのに有益である。)
当時も現在も私にとって怖いものはお母さま。
つまり、この国の女王である。
しかし、やんごとなき姫君たちは違ったのである。
海賊にクッパに魔王。姫君たちが恐れる悪役は多数いる。
姫君ごとに担当悪役がいるらしく、恐ろしさのバリエーションもさまざまである。
女王を母に持つということは威厳に満ちた支配者であるのだから恐怖心を持つことは通常だと当時の私は思っていた。
だから他の姫君たちがおびえる悪役がそれほど怖いものか知らなかった。
いつだって気高く美しく、冷酷なほど冷静な女王それが私のお母さまである。
幼少のころから、昼間「お母さま」などと予防ものなら、その場で二の腕の肉をつねりあげられた。
「女王陛下と呼ぶように。」という風に教育された。
母親としての人生というより職務一筋なキャリアウーマンが私の母親、否、この国の女王様である。
おかげで私は引きこもりだ。
誰とも話したくない。
明るい場に出向きたくない。
親ができすぎていると子供はこんな風に苦労するのだ。
ドレスを着て社交界に顔を出した折にまた、「お母さま」などと口を滑らせれば私は子供の時と変わらず尻を真っ赤にはらすまでたたかれるだろう。
引きこもりはいい。
一日中、水晶ネットワークを通じて流れてくる嘘か誠かわからない(魔法使いというのは噂話が大好きなのだ)情報を惰性で消費しつつ、薄く切って揚げた芋と怪しげな泡立つ黒い飲料を摂取する。
だらだらと城の一室で過ごすのは快適であるので一度やったらやめられない。
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