第2章19 「審判の時」

「のぉ~虫よ。此方と勝負せぬか?」

「勝負?」

「な~に。戦いをしようという訳ではない。ちょっとしたゲームじゃ」

「ゲーム?」

「そうじゃ、良いじゃろ?」


魔女はそう言うと、魔法を繰り出した。その瞬間横の壁が動いた。

そこに居たのは、ココアとメルだった。2人共両手を縛られ、壁に張り付けられていた。


「ココア!!メル!!」

「侑、助けて・・・」

「侑さん・・・」


俺は感情的に、


「おい!!魔女!!こんな事して良いと思ってるのか!?」


怒りを見せている俺に対して、魔女はニヤリと、


「何を怒りに任せてるのじゃ~虫よ。ゲームと言ったじゃろ?」

「ゲーム次第では、2人を殺すと?」

「そうじゃ~簡単な話じゃろ?」

「お前・・・」

「怒りに任せていたんじゃ、このゲーム勝てんぞ?虫よ」

「くっ・・・」

「さて、ゲームをしようか?」


そう言うと、魔女はカードを出した。


「ここにカードがある。このカードは「審判のカード」と言ってな。カードが勝敗を審判するのじゃ」

「それじゃお前の有利じゃないのか?魔法で」

「それは無い。そこの魔女が1番解っている。のぉ?先輩」


話が茜に振った時、茜は険しい顔で、


「確かにそのカードは公平を保つ為に私が作ったわ・・・でも・・・」

「それ以上喋らんで良い。先輩よ」


そう言って魔女は魔法で、茜の口を塞いだ。

茜は一生懸命話そうとしていたが、口が開かないのでその言葉を理解出来なかった。

茜が何を言おうとしていたか解らなかったが、あんなに険しい顔の茜を見たのは初めてだったので、これは異様だと俺でも察しがついて。

でも、ここで負けられない。俺はそう思った。


「さて虫よ。こっちに来い」


そう言って、2人が張り付けられてる壁の側にテーブルが出現して、対面で座れる様になっていた。

俺と魔女は座ると俺は2人に、


「絶対助けるからな」


2人が涙目でこっちを見ていて少し頷いた。


「さぁ、魔女さん勝負だ!!」

「威勢だけは良いのぉ~」

「後で痛い目に合っても知らないぞ?」


俺がそう言うと魔女は笑い出した。


「あはははははは、此方が負ける?有り得ない事じゃ」

「何故だ?」

「まぁ、それは後で解る。さぁ、どちらか引け」


俺は一気に不安になったが、2枚の内1枚を引いた。


「それは魔法で絵柄が変わる。そしてそこに書いてる内容に正直に答えるんじゃ」

「絵柄が変わるカードか・・・」

「さて、表に向けてみよ」


茜は「んー!!んー!!」と一生懸命訴えていたが、俺がもうゲームに集中していた。

あの時、少しでも気付けたら・・・

俺はカードを表にした。そこに描いていた絵はバーンクロスの街の風景だった。

その中に俺の鍛冶屋もあった。

その下に書いてあった審判内容を小声で読んだ。


「汝は、自分の鍛冶屋を見つけてしまったか?見つけてしまったら正直に申せ。申さなければ、汝にとって最悪な審判を下す」


これは、正直に言った方が良いのか?正直に言ったら良いのか?

いや、これは罠かもしれない。正直に言ったら駄目なのかもしれない。


「どうした?迷っているのか?なら此方からしようか?」

「ああ、そうしてくれ」


魔女はニヤリとした。そして自分のカードに書かれてた審判内容を言った。


「汝、人を殺した事があるか?殺した事があるなら正直に申せ。申さなければ、汝にとって最悪な審判を下す。か」

「此方は人を殺した事があるぞ。審判を下せ」


魔女がそう言うとカードが話し出した。


「汝、正直に申したので無罪」


魔女は無罪だった。


「さて、虫の番じゃぞ?これで仕方は理解したじゃろ?」

「ああ、じゃあ・・・」


俺が質問に答えようとしている姿を見て、魔女はニヤついていた。

そして、茜はまだ訴えていた。まるで「正直に言っちゃ駄目」と。

でも、俺には伝わなかった。


「俺は、この絵を見て1番に自分の鍛冶屋を見つけた。審判を下せ」


俺がそう言うとカードが話し出した。


「汝、正直に申していない。最初に見たのは街全体だ。それに2番目に言った者を信用は出来ない。審判を下す」


「審議の結果、ココア、メルの2名を処刑する」


俺は、最悪な審判を受けてしまった。


to be continued…

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