第2章13 「死への恐怖と想いの記憶」

「侑君大丈夫?」


俺は、何も答えられなかった。

そもそも何故震えているのかも解らなかった。

取り敢えず魔女に狙われない様に、少し村と距離を置いて野宿をした。

俺はまだ放心というか、意識が集中していないというか、言葉では言い表せない程だった。


「侑はどうしたんでしょうか?」


茜にココアは質問した。一応茜の正体等は、彼女の口から説明した様だった。

でも、それを知るのも数日後の事だった。

茜は、こう答えた。


「多分、死の恐怖ね」

「死の恐怖?」

「2人はいくつもの実戦形式、特にメルちゃんに関しては実践も経験しているから大丈夫だけど、侑君は1度きり。しかもあの時は無我夢中だったから恐怖すら感じなかったのだろうけど、今回のは違う」

「つまり、初めて意識的に戦闘をしたから。そして危うく死んでしまう可能性があったからですか?」

「そういう事になるね。死の恐怖は暫くすれば自然に治るものだから」

「そんなに簡単ではないと思うのですが…」

「大丈夫!!私の魔力に耐えたんだから!!」

「魔力に耐えた?」

「私が侑君に魔力を与える際に、この人ならこれくらいかなと思ったけど、意外にもそれ以上の魔力を吸い込んだから心配になったけど、生きているから凄いなって」

「え?普通ならどうなるんですか?」

「普通なら…確実に死亡ですね☆」

「えっ…」


茜とココアの会話が段々と凄い方向へと向かっていたが、それもその時の俺には聞こえなかった。


その晩、俺は少しずつだが回復していった。

けど、回復と言っても、寝ている状態から起き上がっただけ。状態の変化は特になかった。


「メルちゃんもまだ疲れて寝てるし、困った子達ね」


茜は、困った顔で2人の光景を見ていた。


「いや、茜さん仕方ないと思うのですが…」


それに冷静にツッコミを入れるココア。


「でも、何にしても早く2人には回復してもらわないと困りますね」

「私の回復魔法では外傷だけしか治せないからね。疲労とか精神面とかは本人達にやってもらわないと」

「取り敢えず、今日のところは私達も寝ますか?」

「そうね。そうしましょう」


周りの灯りが全て消えた。

俺も自然と眠っていた。


「アハハハハ」

「待ちなさい。フィリア」


俺は何故かバーンクロス城に居た。

それも俺の知っているバーンクロス城の姿ではなかった。


「(何だこの夢は。あの小さな女の子はフィリアか?後、隣に居るのは…)」

「お父様、庭のお花が咲きましたよ」

「ああ、綺麗だね」

「(そうか、陛下か。若い頃はあんな感じだったのか)」

「お父様、もし世界が危ない事になったらこのお花達も消えちゃうのですか?」

「どうして、そう思うんだい?」

「だって、お花達は感情を持っているんでしょう?怖くて萎んじゃうかも」

「大丈夫、きっと強い人が守ってくれるよ」

「強い人?」

「そう、フィリアの事を一番理解して、フィリアの守って欲しい物を守ってくれる人だよ」

「いつか現れるのでしょうか?」

「現れるとも。きっと」

「(フィリア…この記憶を覚えていたのかな…というか何故フィリアの記憶が…)」


俺は今ある光景を理解しようとした瞬間、


「そんな人現れませんよ」


聞き覚えのある声だった。

後ろを振り返ると、


「ギギ…」


to be continued…

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