第2章7 「旅立ちの朝」

「フィリア…」


俺は、ようやくフィリアの顔を見れる事が出来た。

そこに居たフィリアは、とても美しくまるで眠っている様だった。


「今度こそ…君をちゃんとした生活に戻してやるからな」

「だから…待ってて」


俺は、泣きそうになりながらもフィリアにそう告げた。


「侑…侑…」

「え?」

「侑、貴方には聞こえるのですね。私の魂の声が」

「フィリ…ア?」

「私の声が聞こえるのですね?」

「ああ、はっきりと」


どういう事だ?不思議に思ってるどころか、もう唖然としている。

フィリアは、今目の前で眠っているのに、声が聞こえる。

魂の声?なんだそれは。


「俺なんで聞こえるんだ?」

「恐らく、魔力が付いたからではないでしょうか?」

「魔力が付いたら聞こえるのか?」

「侑の場合は強い魔力が付いたからです」

「強い…あーあれか」

「誰からそんなの…」

「知り合いだよ」

「本当にお身体は異常ないのですか?」

「ああ、何とも?」

「凄いですね。侑は凄いです」

「何で?」


俺は普通に茜から貰った魔力だから、何とも思ってなかった。


「普通、それ程の魔力があれば、死にます」

「え?」

「本当です。魔力はある意味毒素を持っていますから」

「まじかよ」

「でも、生きているという事は、侑には素質があったという事ですね。だからその方も魔力を与えたかと」

「知らなかったよ。怖いな。それ」

「とにかく、侑…気を付けて下さい」

「フィリアの為だよ?」

「私の為…嬉しいです。でも死なないで下さい」

「絶対、死なない」

「あっ、フィリア?」

「侑、そろそろ私の方が限界です」

「あっ、伝えたい事が」

「また、戻って来たらゆっくりはな」


言葉の途中で声が聞こえなくなった。


「好きって伝えたかったのに」


朝を迎えた。出発の朝だった。


「おはようです。侑さん」


メルが明るく挨拶してきてくれた。


「おはよ。メル」

「気分が優れませんか?」

「いや、大丈夫。絶好調だよ」


そこへ、ココアもやって来た。


「侑、おはようございます…」

「おはよ。ココア」

「では、出発しますか?」

「ああ、時間が掛かるみたいだし、行くか」


俺達は、荷物をまとめて出発した。


「侑君、気を付けて」

「陛下もお身体に気を付けて下さい」

「ありがとう。無事に帰って来たらまた話をしよう」

「はい!!」


バーンクロス城が遠くなっていくのを見て、俺は思い出した。


「あっ、そうだ。店に寄って良いか?」

「私は構いませんよ」

「私も構わない…」

「ありがとう」


俺は、店に寄った。

そして、閉店の看板を改めて飾った。

店にあった僅かな材料を持ち、店を見渡して、寂しくなったが、店を出た。


「お待たせ。じゃあ行こうか」

「はい!!」

「はーい…」


俺達は、バーンクロスの門を出た。


to be continued…

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