第2章5 「メルの事」
新しく仲間になったメルについて本人から色々話してもらおうと思った。
「私は、メル・アス・クラインです。歳は皆さんと同じ歳です」
数秒の間、暗黙の時間があった。
「え?それだけ?」
「わわわわ、私はその、人と接する機会があまりなくて…形式的な挨拶しか出来なくて…その~その~」
「ああ、ごめんね?別に文句言ってる訳じゃなくて…あはは」
俺とメルの会話があまり噛み合っていない様子を見て、ココアが横から入ってくる。
「侑は、名前の間に「アス」が付くのを疑問に思いましたか?」
「ああ、そこは俺も気になった。何故なんだ?」
「この国の「アス」は貴族という意味です。なので、メルも貴族の為、名前に「アス」が付いているのです」
「へー、メルもお嬢様なのか…」
メルは顔を真っ赤にしていた為これ以上は言わないでおこうと思ったが、
「恥ずかしながら、そうなんです。背も高いしお嬢様らしくないですけど…」
「そう?俺はとても素敵に見えそうだけど」
「そそそそそ、そんな事ないですよ!!」
メルは誤魔化したいのか、俺を突き飛ばした。
「うぉっ」
「ごめんなさいいいいい。すみません。すみません」
「あはは、メル1回深呼吸したら?」
「す、すみません」
「謝らなくて良いよ」
「では、ちょっとフィリアの話でも」
そう、口にした途端、俺もココアも食いついた。
「お、それは聞きたい」
「私も、フィリアの他の話を聞いてみたいです」
「あーでは…」
メルは深呼吸して、
「私の家は商売で大成功した家でした。父からの代でよく王国献上品等を一緒に持って行った記憶があります。そこでフィリアと出会ったのです」
「割と新しい貴族っていうわけか」
「最初から貴族に加わった訳じゃなくて、陛下からその地位に置いてもらったからです。陛下には感謝しています。昔は貧乏だったので」
「そういえば、陛下と仲良さそうだったよな」
「あれは、陛下がよく私の面倒も見てもらったからじゃないかなと思います。第2のお父さん的な」
「フィリアとはどうやって仲良くなったんだ?」
「フィリアはよく1人で居ました。何故か付き人も居なくて。そこで話し掛けて、歳も同じだったので自然にとです」
「俺はそんな事で友達出来なかったよ…」
「え?」
「いや、何とも。でもそうなると付き合い長いんだな」
「そうですね。もう10年になります。でも折角、騎士団になったのに、守れず」
「…」
「あっ、ごめんなさい。いきなりまた暗くして」
メルの方が辛かっただろう、10年も。俺なんか4ヶ月なのに。ココアもそうだが、この2人の方が圧倒的に辛いはずだ。なのに、俺は。
「大丈夫だよ。もう大丈夫。前に進むと決めたから」
「良かったです!!安心しました」
一瞬、俺に向けられた笑顔が可愛いと思ってしまった。やばい。それは反則だぞ。
一通り軽く話をして、ココアが提案した。
「では、これからの事お話しましょう」
to be continued…
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