第2章3 「瞳に写る現実」

「フィリアが死んだ」


俺の心に写る現実は俺を孤独にした。

俺がいけなかったのか?俺が魔法の力で取り戻そうとしたから。

でも、逆に他にどうしようもなかった。どうしようもなかったんだ。


俺が部屋で欝状態になっているところをある人物が訪ねて来た。


「やぁ、侑君久し振りだね」

「陛下…」


そこに居たのは、この国の国王、フィリアの父ヴァルフレアだった。


「ちょっと、お話しようか?」

「陛下…俺…」

「侑君、君はよくやってくれたんだよ。この国の英雄だ」

「でも、フィリアが…フィリアが…」

「あー…」


少しの間だったが、間が開いた。


「その事で少し話したかった」

「やっぱり、英雄でもあり犯罪者ですかね…?」

「いや、違うんだ」

「現実には、フィリアは死んだのではなく、封印されたのだ」

「え?」


封印?何だそれ?

俺は、ヴァルフレアが言っている事に理解するのに、時間が掛かった。


「予想外だった。魔女があそこまで巧妙な呪いを掛けていたなんて」

「陛下…?」

「フィリアは、命を止められている。でも、死んではいない」


俺は、その言葉を聞いて心臓が速く鼓動した。

嬉しい…そう嬉しかったのだ。死んではいないという言葉に。


「それは、魔女を倒したら目覚めるのでしょうか?」

「多分、そうだと思う。フィリアの体に魔法の呪文が掛かっていたからね。最初は私も死んだと思った」

「陛下、あの」

「侑君、これ以上君に危ない目には遭わせたくない」

「それは、命令ですか?国王の」

「んんっ…はぁ…」

「1人の人間としてだよ」


俺はヴァルフレアの気持ちは痛い程感じた。でも、


「陛下、俺がこの出来事を終わらせたいんです」

「どうしても?」

「どうしてもです」


ヴァルフレアは深く考え始めた。目を瞑って深く深く。


「君が現れたのは、偶然ではないのかもしれないな…」

「偶然?」

「侑君が、この国に現れてその時期を見計らったの様にフィリアが暴走した。これは偶然なのかなと」


確かに、幼少期からフィリアは暴走していなかったのに、俺がこの世界に来てたった4ヶ月でなった。

それは、やはり俺が異世界の人間だから。でも、それをこの世界の人に話してはいけないと俺は思った。


「では、その偶然の力を借りてみますか?」

「凄い自信だね…私には無いよそんな自信」

「一応、色々ありましたし」


俺がそう言うと、ヴァルフレアは俺の目を強く見て言った。


「侑君…」

「もうやると決めています」

「この件は私が君に頼んだ。そういう事にしておいてくれ」

「え?」

「でないと、色々と困る。お互いに」

「わ、分かりました」

「もう、元気になったかな?」

「あはは…お陰様で」


あれ?と思うくらい。今まで何であんなに病んでいたんだろう?というくらい、俺は元に戻っていた気がした。


「よし、では入って来てくれ」


ヴァルフレアの一言で部屋の扉が開いた。

そこに居たのは、ココアと1人の少年だった。


to be continued…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る