激突! 『柴犬無双』3
「──やあ後輩。ガッツリいってるね」
テーブルを挟んでワルディーの対面に座った俺に、ワルディーの隣でお弁当を広げているポニーテール女子が気さくに話しかけてきた。
俺はとりあえず「ども」と頭を下げておく。
「三年総司令、
しっとりと落ち着いた感じのお姉さんだった。俺も改めて名乗り、もう一度ペコリ。
「ワールディアれす。酢めしとごはんでだいじょうぶれす」
「乗っからなくていいから」
ぺこりと俺に頭を下げるワルディーに、俺はもぐもぐカレーを頬張りつつ言う。
「なっつんのおにゃぎり、おいしいねぇ~。い、いいよぉ~。いいんだお~」
ナツミのおにぎりを分けて貰ったのか。幸せそうだなワルディー。
「どうだ? 女子校は。中々にカオスだろ? 幻想を打ち砕いてしまったかな?」
微笑みながら言うと、ナツミもおにぎりを上品に口へ運ぶ。
「ここの店名から彼女らのノリまで、結構イカレてて、いいと思います」
俺はシズカ達の方に目をやりながら素っ気ない感じで答える。
「──そう、あれは沙理緒とわたくしが学校帰りにおやつを食べようと、変なたい焼き屋さんに寄ってみた時の事でした・・・・・・」
・・・・・・なんかまだ続いてる。
てか結局何なのアレ。変なたい焼き屋とかチョット気になるし。
「ふふ。ここの店名も、前にくじ引きで決まったらしい。理事長の方針でな。あまり気にしなくていいよ。それに──」
ナツミは言いかけると賑やかな女子学徒達に顔を向け、優しく見守りながら続けた。
「元気があっていいじゃないか。みんな、楽しく生きようと前向きだ。──私達は五分後には死んでいる可能性の高い世界を生きている。・・・・・・だから、せめて、その時までは」
俺に向き直り、ナツミは優しく微笑む。そして彼女はワルディーのほっぺについたゴハン粒をそっとつまんだりしながら、それ以上は言わなかった。
せめて、笑おう──か。
昔、アイツにも言われた。
そう、ここは読者さん達の世界より、明日死ぬ可能性が上がっている世界だ。
そして俺は過去にも、ここと同じような時代を生きた。
──そんな残酷な世界で、このノリがおかしいと思うかい?
でも読者さんの世界だって、誰かが死んでいる部屋の壁一枚隣で、お笑い番組に声を上げて笑ったり子作りに励んだり、そんなもんだろ?
そんなもんだ。命なんて。
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