激突! 『柴犬無双』2
・・・・・・いや状況わかんねーよ。すっごい見下ろされてるし。ほんと背ぇ高いなこの女子。
俺とヤツの視線が交差したまま、張り詰めた時間が過ぎていく。
「カタリさん・・・・・・勝利を祈っております」
迷惑です姫。
「リューシロ! 行っちゃヤダれす!」
お前超押したよね?
「カタリん、全て自己責任で」
何でアナタみたいな人が生徒会長に・・・・・・。
「カタリ君・・・・・・」
「・・・・・・信じてるよ」
「いちご牛乳おごって・・・・・・」
「BLとか興味ありますか・・・・・・?」
「グッドラック、カタリん」
──み、みんな・・・・・・。でも変なヒト混じってる・・・・・・。
う~ん。やれやれ。
察するにこのボーイッシュは大人気のコロッケを独り占めしようとする魔王ということですか?
こんなに大きく育ったから、いっぱい食べたいと。
信じられません! みんなもペコペコなのですよ?! 今すぐコロッケを下に置いて投降するがイイこのバレー部! この期待のエース! この・・・・・・女子!
──まあいい。
限られた糧を奪い合う愚かな生命に、超越者の英知というモノを授けてやるのも一興。
教えてやろう。これが争いという下等思考を解脱した、神の知恵というモノだ!
「あ、すんません。俺カレーライスデカ盛りイッちゃいます」
「あらすご~い! デカ盛りカレーね~」
厨房のおばちゃんへのオーダーにズルッと女子達の腰が砕けた。
「逃げんなカタリン!」
「しかもデカ盛りで男らしさを挽回しようとするのが小賢しいわね!」
「『イッちゃいます』の言い方が腹立つわぁ~!」
「見てあの顔! 勝者よアレ!」
「か、語君、チラチラこっち見てくるのヤめなさいホント・・・・・・プ、くく・・・・・・」
「ちょ、ちょっとさっきの『イッちゃいます』って、もう一回言ってみて・・・・・・」
アマゾネスを普通にスルーして奥の注文カウンターでふんふ~ん、と鼻歌まじりで高みの見物を洒落込む俺に、非難とかがごーごーだ。
「──今だっ!」
隙をついた生徒会長がボーイッシュに襲い掛かる。中々のゲスっぷりだ。
だが「みゃう!」っとつまづき、やっぱり自爆した。
生徒会長の亡骸を見下ろし、バレー部魔王は微動だにしない。その圧倒的プレッシャーに、乙女達はじりじりと後ずさっている。
──どうする。どうすればいい。考えろ! みんな! (俺はパス)
「──ここまでです。
・・・・・・やはりお前に託すしかないのか、シズカ・・・・・・。なんでまたマイク握ってんだよ・・・・・・。
「あなたがぺこぺこなのはよくわかりました。・・・・・・しかし沙理緒、ぺこぺこなのはわたくし達も同じ。ワルディーに至ってはぺこぺこでニャン文庫なのです」
「ぺこぺこで・・・・・・ニャン文庫」
「どこの出版社よ・・・・・・」
シズカの特殊なプレッシャーに、周囲の女子達は固唾を飲み、言葉を漏らす。
徐々に上がるボルテージに伴い、手にするマイクの位置も口よりやや上がっていく。
「せめてあなたの罪は、同門であるわたくしの手で裁いて差し上げましょう! それが幼馴染であるわたくしの、最後の情け!」
「は~い、デカ盛りカレーね~」
「あ、すんません」
お金はいいから、との事だ。事前に何やら話が通ってるらしい。
んじゃ遠慮無く。さてドコに座ろうかな。
ずらりといっぱい並ぶテーブル席には、既にサンドイッチとかきつねうどんとかチャーハンセットとかを美味しそうに食べてる女子達や教師達の姿がちらほらと。全員が日替わりランチ狙いってワケでもないのか。
「リューシロ! こっち! ここ!」
あれワルディーいつの間に。しかもモウなんか食ってんじゃん。
・・・・・・隣にどなたかお座りですな。
まあどうでもいい。俺は導かれるまま、中央窓際のそこに向かう。
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