三人だけの教室
「現在、この空院女学院にはキミ以外にも沢山の人が避難しているわ。そういった事も踏まえたクラス編成の事情で、既存クラスはもう定員オーバー。教員の数も足りてないので、私がワルディーの教育者として名乗り出たのよ。定員の問題以前に、学力的な問題もあってね」
ホームルームの終わりごろ、別に俺は何も質問したわけじゃないが、ライフが察して説明してくれた。
特別学級か。早い話、ちょっとおバカさんなワールディアの個人レッスン教室だ。
見方を変えれば贅沢かもな。教師不足のこの時代に、代打とはいえ美人な姉さんにマンツーマンレッスン。
──でも一人ぼっちじゃ、やっぱ寂しいよな。
俺は隣のワルディーに視線を向ける。
うわ。なんかコッチずっと見てた。超ニコニコしてる。バックにお花畑オーラが見える。
ワルディーは俺の眼差しに、嬉しそうに身体を揺らした。
「キミの避難受け入れについても、私が面倒見るという事で一発OKだったわ。大らかな学校だと思う」
大らか過ぎだろ。
けどその柔軟性のおかげで力の行使は抑えられる。
ここに来る前に俺がいた山奥の小さな学校は、先日の大規模戦闘の巻き添えを食らって吹き飛んだ。
学校といっても廃屋や空き家を少し改修したような粗末なモノで、ボランティアで教師を勤めてくれた大人数名による運営だった。生徒数も小、中、高合わせて十人に満たない程度だ。
戦乱による子供の浮浪化を防ごうと、そういった取り組みは全国各地で見られた。
戦災孤児として天涯孤独だった俺は学校に住まわせて貰っていた身で──それもこの時代じゃ珍しくもない事なんだが──、おかげ様で住む場所さえ失った俺は路頭に迷うところだったが、ボランティア教師の仲介により、やや遠方になったがこの空院女学院に居場所を確保することができた。
──という設定だ。
強制認識。
俺の描く理想、そういう世界を周囲の人間に無理やり認めさせているんだ。
そうだよ、マジカルセイシャインパワーだよ。それでいいよメンドくさい。
そういう学校が存在した事、そして崩壊してしまった事までは事実だ。
だが俺という孤児など、ソコには存在しなかったんだ。
なるべく流れに沿う形で、俺はこの世界に割り込んだ。
それによって生じる歪みを最小限に抑える為にだ。
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