ミーアキャット組

「一年、ミーアキャット組」


 教室入り口上部に備え付けられたプレート。そこにはそう記されている。


「コチラのミーアキャット組が、今日からカタリさんのクラスになります」

 ニコニコとシズカは言う。


「ミーアキャット」再確認する俺。

「こ、これも母の提案でして・・・・・・。わたくし達と親交の深い学校があるのですが、そちらの理事長が『学徒を数字だけでくくるのは好かない』といった理念で、くじ引きでこういったクラス名を決定しているんです。で、母は『生意気な』と、対抗し始めました」

「『生意気な』」


 やはり色々と危なそうな理事長だ。関わってはいけない。


「わたくしのクラスは一年デスにゃんこ組といいます」

「『デスにゃんこ』!!」俺は衝撃に固まった。



「空院 静です。語 龍士郎さんをお連れしました」

 教室のドアをノックしたシズカがそう言うと、中から低い声が返ってきた。


「──入りなさい」


 シズカと俺はドアを開け、室内に入る。

 

 通常一般の教室よりやや狭い。

 陽光の差し込むレトロ調な室内の壁には、まるで小学校みたいな装飾がちらほらと施されている。

 折り紙で作った輪っかのアーチ、折り紙のお花、絵の具で描かれた誰かの似顔絵、変な習字。

 

 教壇と、その前に置かれた二つの学習机。

 そこにいたのは一人の女性と一人の少女だった。

 

 少女が、俺の前に興奮気味に走ってきた。


「ん、も、も、も、もも、も」


 お、おう。元気そうだ。彼女は目を見開いて、猫みたいな口でまた何かを伝えようと頑張っている。

 俺も次第に釣られて「ん、も、も、も」と目を見開いて頑張った。

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