姫、乱舞

「──く、空院 静!」


「な、何ぃ! 一年総司令にして空院女学院を統べる、あの空院家の姫君・・・・・・!」


「そう、彼女こそ生徒会長をも畏怖させる、空院家令嬢」


「また遅刻しちゃった空院家令嬢! その名はシズカ!」

 

 何やら説明的なセリフが飛び交う中、シズカは穏やかな足取りで壇上の方に向け歩き出した。



「──世界は今、かつてない戦に見舞われています」


 シズカはゆっくりと歩きながら、手に握るマイクを口元に近づけ語る。

 なんでマイク持ってんだよ。マイマイク?


「おのれぇ! 親衛隊何をしている! かかれっ! かかれぇっ!」

 生徒会長がナゼか攻撃命令を出した。それに従い、数名の女子学徒が「とりゃー!」とか「うりゃぁー!」とか言いながらシズカに襲い掛かる。


「はっ!」とシズカの手刀が親衛隊女子の首筋をビシッとやると、食らった女子が「みゃう!」と崩れ落ちる。

 俺はとりあえず固唾を飲んで見守った。


「せいっ!」

「みゃう!」

「やっ!」

「みゃう!」

 という具合に親衛隊がどんどん崩れ落ちる。


「──子供でさえ銃を手にとり、人類はその敵に立ち向かう」

 地に積み重なった戦士達の亡骸を背に、戦姫は進む。そのオーラに周囲の学徒達は後ずさっていた。


「くっ! カタリん! 行け!」

「え何で?!」

 生徒会長の無茶ブリに衝撃を受ける俺。カタリんって。


「──カタリん。何も問題などありません。世界がどれだけ混沌に荒れ狂う時代でも、わたくし達は手を取り合い、立ち向かってゆきましょう」


──シズカ・・・・・・。でもカタリんって。


「おのれぇぇ!」

 生徒会長が遂にシズカに襲い掛かった。

 

 しかし勢い余った彼女はつまずき、「みゃう!」っとコケた。


 目前で自爆した生徒会長の亡骸を背に、戦姫は進む。そのオーラに周囲の学徒達は後ずさっていた。


「そう。性別など超え、この時代を生きるというだけで、わたくし達は繋がってゆける」

 シズカが足を止め、壇上の俺を見上げた。


「何がおかしい事がありましょう! 例え女の園に男が紛れていようと! 女子校にいきなり男子が転校してこようと! 何がおかしい事がプッフー!」

「吹いてる吹いてる」

 俺は笑いを堪えるシズカに冷静にツッコんだ。

 

 てかナンだったのこの寸劇。

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