それは恋が始まった瞬間
リポト館に新人の女官がやってくる。
その噂を聞いて、ベルナルドの近衛騎士たちはにわかに色めきたった。
田舎の離宮に主がひきこもること約四年。近衛騎士隊というエリート集団は、王太子と一緒に離宮にひきこもり日々近くの牧場で牛や羊の世話をしたり、鶏の卵を取ったりしている。おかげで牛の出産で、逆子の足にロープをくくりつけて引っ張り出すことだって朝飯前だし、そもそも出産で大量の血を見て貧血をおこす者もいなくなった。(出産の血と自分たちのけがの血は別物だ、とは倒れた者たちの談である)
気難しい王太子のもとで働くにはそれ相応の適性が必要だ。
女官にしても、最近では家柄ではなく彼の怖いまなざしと気難しい性格につきあえるかどうかが選考の第一条件になっている。
「で、こんどの推薦人はあれだろ。エリセオなんだろ」
カルロスは上官のアドルフィートに探りを入れた。
前任者が「もう無理ー」と言い残して去っていったのはひと月ほど前だ。真面目な性格の女官は融通もきかなかった。この特別な職場環境で一番大事なことは真面目さに加えて柔軟さであると、カルロスは思っている。
「まあな。パニアグア卿が売り込みに来た。ついでに、殿下の侍従にも心当たりがあるらしい」
「あいつ、いままで殿下に取り入ろうとしなかったのに、どんな心境の変化なんだか」
「さあなあ。殿下に取り入っても殿下がやる気を出されない限りそっちからの出世は見込めないと思うけどな。あいつの考えていることはわからん」
カルロスもアドルフィートもついでに王太子ベルナルドも十代の頃、軍隊で同じ訓練を受けている。そのころからの顔なじみだ。
エリセオは自分はそういう柄じゃないから、と近衛騎兵隊への入隊は辞退して現在は軍部のほうで順調に経歴を重ねている。
その彼が自分の身内を王太子に差し出してきた。
一体どんな女性が来るのだか。
とか考えていたカルロスは、少しだけ驚いた。
女官として現れたのは黒髪に紫色の瞳をした美しい娘だった。
(うそだろ……)
近衛騎士隊に紹介された少女はダイラ・ライネスと名乗った。
カルロスはちゃんと覚えていた。昨年の夏、モーテルゲイン湖でかかわりあいになった少女で、どこかの金持ちの家で家庭教師をしていた美人さん。顔立ちがきれいで、そのくせ愛想ってものがまるでなくて、そして胸が大きかった。
「至らぬ点もあるかと存じますが、よろしくお願いします」
ダイラはなんの感情も乗せない真面目腐った顔つきで深々とお辞儀をした。
「なあ、おい。ダイラちゃんめっちゃかわいいな。しかも、胸! 胸がちょーでかい」
食堂で色めき立っているのはベルナルドの侍従を務めるシーロという青年だ。
年中女の子のことしか考えていない脳内桃色男である。
カルロスも女の子は大好きだ。だから彼とは気が合うのである。しかし、やはりというか彼もまたダイラに目を付けたようだった。
「そうだね。とてもきれいだね」
「いいなあ。あの瞳! あれって北のほうの血が混ざってるよな。でもってあのつんとしたところがまたいい! さっき話しかけたらめっちゃにらまれた」
睨まれた割にはシーロはうれしそうに身をよじらせている。
カルロスはシーロの行動の早さに内心舌を巻いた。まさかもう声をかけたとは。
一年前のあのときもあまり笑わない子だったけれど、それはいまも健在らしい。
カルロスはかわいい女の子が大好きだ。
ダイラのことだって興味がないと言えばうそになる。しかも、こんなところで再会するなんて。エリオストはどんな縁なのだろう。まさか彼のお手付きだろうか。いや、さすがに自分のお手付きの女に離宮とはいえ王族の女官などという職場をあっせんするとは思えない。
にわかに興味がわいてきた。
けれど、この女好きの同僚には今は自分の感情は知られたくない。
カルロスは黙って適当に相槌を打つにとどめておいた。
彼女がこの環境に慣れて定着するかどうかなんてまだわからない。いろいろと難しいところのある主君だけれど、カルロスにとっては大事な上司なのだ。
カルロスの心配もよそに、ダイラはあっさりとベルナルドのひきこもりを受け入れて、淡々と職務をまっとうする。真面目なだけだと思っていたら意外と柔軟性も持ち合わせていたらしい。
シーロの毎日の攻勢にも塩対応で、その冷たい反応を目にして出方をうかがっていたほかの近衛隊の男たちもダイラは脈なしと勝手に舞台から降りて行った。
シーロのことはともかく、カルロスとして面白くなかったのはダイラが自分のことをまったく覚えていないということだった。
顔を合わせる機会はいくらでもあるわけで。
こちらを見て彼女なりになにか反応を示してくれるかななんて淡い期待をしていた自分の心は数日後にはシャボン玉のようにぱちんとはじけた。
というわけで面白くなかったけれど、カルロスのほうから名乗り出た。
「ねえ。君、俺のこと覚えている?」
ダイラは目をしばたたかせてそのまま黙った。
「いえ……どこかでお会いしましたっけ?」
いぶかしげな表情から察するに本当にきっぱりと忘れ去ってしまったらしい。
カルロスは地味に傷ついた。
金髪碧眼のカルロスはベルナルドよりも十分に王子様らしい容姿をしていると自信がある。女の子のお店に行けばいつもたくさんの女の子たちが寄ってくる。貴族の令嬢にもてないのは自分が伯爵家の次男だからで、そういうのを抜きにした既婚女性にはばっちりもてもてだ。
「うわ、ひどい。ホントに忘れられている俺」
「すみません」
ダイラはそうは思っていないだろうと顔つきで謝った。
「去年の夏。モーテルゲイン湖。これで思い出さない?」
そこでしばしの沈黙。ダイラはカルロスの顔をまじまじと見つめて、ようやく合点がいったようだった。
「思い出しました。そういえば軽薄などこかの伯爵家の次男とお会いしました」
「軽薄とか……傷つくなあ……」
ひどい思いだし方をされたのでカルロスは改めて名乗った。
けれど、ちょっと楽しかった。
同じ職場なのだし、いまはこのくらいの距離でもいいのかもしれない。
と、余裕を見せたくせにこのあとやってくる新人の侍従とダイラの関係を見せつけられてカルロスは落ち込むことになる。
「ダイラちゃん、やっぱりルディオのことが好きなのかな。俺、どうしたらいいと思う?」
「知るかよ」
なぜだかシーロとリポト館の裏庭でこそこそと話す羽目になっている。
男の恋愛相談なんて面白くもなんともない。しかも相手はあのダイラとのことである。おまえそもそも相手にもされていないだろう、とはリポト館で働く者全員の意見に違いない。
「ああルディオがうらやましいぜ。あのでっかい胸を独り占めかぁぁぁ」
シーロの美点は自分の欲望をあっさりさらけ出すところだが、あいにくと女性受けはしない。
しかし、ルディオがうらやましいのはカルロスも同意するところだ。
ダイラから遅れること約十日。シーロ待望の新入り侍従は線の細い少年だった。
金茶色の髪の毛に明るい緑色の瞳をもった新入りは、線が細くてこんなんでちょっと大丈夫かというどちらかというとなよっとした男だった。
筋肉ちゃんとついているのか、と心配になるほどなルディオという少年は、その警戒心を抱かせない容姿と体格でリポト館の女性陣から受けがいい。愛想もよく女官や下働きの女性らの荷物をもってやったりするしぐさが自然なのだ。
おかげで彼だけの好感度が増している。
かといって不愉快といえばそういうことでもなく、明るくさっぱりしているので憎めない。ついでに線が細くて心配になる。もっと食えと食堂で彼の皿に山盛り肉を盛りたくなるくらいだ。
そんな彼に落ちたのはダイラも一緒だったようで。
先日ルディオはベルナルドの嫌がらせ(近衛騎士隊はもれなく殿下の思惑については察している)に巻き込まれて池に落ちて熱を出した。
その際看病役を買って出て、頑としてほかのだれにも譲らなかったのがダイラだった。
ベルナルドが見舞いをしたそうなしぐさを見せても絶対に中に入れなかった。ある意味鉄の心臓を持っている。そしてベルナルドが一回の侍従の熱に動揺している光景にまずびっくりした。
「ま、ダイラがあの手の男のが好きだって言うんならおまえに勝ち目はないんじゃないか」
カルロスは自分に言い聞かせるように口にした。
「そうかなあ」
シーロはまだ納得できなさそうだ。
「おまえだって、ルディオみたいにガラス細工のような少年じゃないだろ」
「う……」
ガラス細工のような儚い感じがよろしいのですわ、とはルディオに恋をした突撃娘、もといグラナドス侯爵家の高慢令嬢の言葉である。
確かに男を感じさせない線の細さとか、小柄なところがよいと言われれば黙るしかない。
ルディオはダイラよりもほんの少し背が小さいのだ。
カルロスがダイラに対して二の足を踏むのは、彼女がルディオのことを憎からず思っていることを察したからだった。
カルロスと同じような、上勢もあって男らしい体つきをしている男が好みだと言われれば恋敵の一人や二人やっつけることくらいしたかもしれない。
けれどルディオとカルロスとではまるで違う。自分がガラス細工のような繊細さを持ち合わせているかといえば答えは否、である。これでも脱ぐとちゃんと筋肉は付いているし、背だってダイラよりも高い。
(仕方ないんだよなあ……)
隣で盛大に嘆き悲しむシーロの横でカルロスも嘆息した。
ルディオはいい奴だ。
明るいし親切だし、ベルナルドの現状を知っても陰口をたたかない。心配はしているようだけれど、それは別にアルンレイヒの未来を嘆いてのことではなく、王太子としての彼ではなくベルナルド自身を心配している。
そういうところをカルロスもアドルフィートも評価しているのだ。
(それに、ダイラちゃん、あいつの前だと笑うんだよな)
地味に傷ついた出来事である。
いつのことだったか、ダイラとルディオが一緒に話しているところを遠くから目撃した。
そのとき、遠目にもわかった。ダイラがくつろいだような表情をして淡くほほ笑んでいることが。
あのときはショックだった。
自分たちには絶対に見せない笑顔をルディオには見せていることに。しかも頭をなでていた。
というか逆だろう。ふつう男のほうが女の子をなでるものではないのか。どうしてダイラがぽんぽんと彼の頭に手を載せる。ちょっと待て、と心の中で突っ込みを入れた。
「まあそのうちいいこともあるさ。ほら、落ち込むなって。酒なら付き合うぞ」
カルロスは自分にも言い聞かせるようにシーロに立ち上がるよう促した。
そう。仕方ないのだ。
ルディオの明るい笑顔と、彼を見てやさしく目元を緩めるダイラ。おままごとのような二人だけど、お似合いなのかもしれない。
王妃の機転によりベルナルドがリポト館からアルムデイ宮殿に居を移して、ついでに成り行きで隣国の式典に出席することになって。
住環境が変わり、それまでの酪農から一転、カルロスもようやく本来の王太子の近衛騎士隊副隊長としての職務をまっとうする機会が巡ってきた。
牛の出産にやきもきする生活から変わりまくってときどき夢でもみてるのかな、と思うこともあるけれどこちらが本来の仕事だ。
ベルナルドはなぜだかルディオのことが気になるらしく、カルロスとしてはガラス細工のような美少年がついに王太子まで籠絡し始めたか、といろいろと心配にもなった。ひきこもりの次は男色の道か、と。
とはいえやっぱりルディオはいいやつなのだ。
ついでに反応もうぶでかわいい。ダイラと付き合っているはずなのに女性経験がゼロなのだ。
確信を聞いたことはないが、同じ男同士反応を見ていればわかる。
しかしあまりつつきすぎると最近はベルナルドがとても不機嫌になるので注意が必要だ。
彼がここまで誰かに執着を見せるのも初めてだから、それも面白い。しかし相手が男なのがちょっと、いやかなりいただけないが。
とかなんとか思っていたらとんでもない事実が発覚した。
繊細な美少年だと思っていたルディオが正真正銘、女だったのだ。
「ええと。もう一度お願いします。隊長」
カルロスは頭に手をやった。
なんだか頭痛がしているのだ。
「だから、ルディオは実は女だ。というか、パニアグア侯爵家のご令嬢とのことだ。要するに、エリセオの妹君だ」
アドルフィートは懇切丁寧に言葉を添えた。
エリセオに妹がいることは知っている。妹がエリセオの父の後妻が生んだ半分しか血がつながっていないということも。彼は昔からなにかにつけて「妹は素直だからからかいがいがあるんだよ。顔をまっかにしてすねるのがかわいくて仕方無くて」と妹にしたら迷惑極まりないセリフを堂々と吐いていた。
「女……まじっすか。み、見えなかった……」
正直な感想だ。
「うそだろ……。最初は俺も騙されたが、どこからどうみても女性だろう。さすがに侯爵家のご令嬢だとは思わなかったが」
その言葉にカルロスのほうが驚いた。
どうしたらあれを女だと思える。カルロスの知るルディオは元気いっぱいで、木には登るわ牧場を思い切り走りまわるわベルナルドの無茶ぶりにも対応するわ、で深窓の令嬢っぽいところなんてまるで見当たらなかった。ふつう男装して王太子の侍従になる、というところでひるむはずだ。
「エリセオいわく、ちょっとお転婆とのことだ」
「ちょっとどころじゃないだろう」
しかしなんとなく腑に落ちる部分もある。やたらと初心だったり、虫が苦手だったり体力がなかったり、男の裸に免疫がなくて上半身裸で訓練していたら「何しているのーーっ」と顔を真っ赤にしていたことを思い出した。
「……なるほど」
そりゃあことあるごとにベルナルドから冷たい視線を向けられるわけである。
ということは、彼は気づいていたのだろう。男装に至る経緯についてはアドルフィートに聞かされた。エリセオから聞き出したとのことだった。
てっきりベルナルドのところに妹をけしかけて嫁にでも差し出すつもりだったのかと思ったが、単に家族問題に彼のほうが巻き込まれたらしい。
引きこもりの根暗にかわいい妹を渡す気なんてなかったのに、とはその後彼が酒に酔ってぐちぐち管を巻いていたときのセリフである。
レカルディーナへの気持ちを隠さなくなったベルナルドは急に過保護になり、レカルディーナを部屋に閉じ込めた。銃で撃たれたというのだから、どうしようもないおてんば娘だ。
王太子殿下をかばったと聞いていたが、好きな子が自分をかばって銃に撃たれたらそれは閉じ込めたくもなるというものだ。
ベルナルドの目を盗んで会いに行ったレカルディーナは当然ながら女物の部屋着を身につけていて、そうしたら確かに女の子だった。つい胸元を確認するように目をやったら、ふつうに睨まれた。
男だと思っていたのに、突然女だと知らされたら確認のひとつもしたくなる。
侯爵令嬢のくせにさっぱりして明るいのは天性のものらしい。こちらが気にするそぶりもなくふつうに話しかけたらいつも通りの口調で返事が返ってきた。
ベルナルドの目を盗んでちょくちょく見舞った次第だ。目的はおもに、ダイラとの関係について。
「じゃあダイラとは姉妹みたいに育ったんだ」
「うん。彼女とは物心ついたころからずっと一緒だったの。寄宿舎に入ることになって離れ離れになっちゃったけど。ダイラにも悪いことしたわ。わたしの事情に巻き込んじゃって」
レカルディーナは寝台の上でしょんぼりした。
こちらとしてはそのおかげでもう一度彼女と巡り合えたのだから感謝しても足りないくらいだ。
ダイラのことをちゃんと真面目に気になり始めたのはリポト館で働く彼女と接したからだった。
「でも、彼女はここの仕事気に入っていると思うよ」
カルロスは正直な感想、もとい願望を口にした。
それに対してレカルディーナは相好をくずした。
「俺はずっときみとダイラが付き合っていると思っていたんだ。仲良かっただろ」
「ああ、みんなに勘違いされてて申し訳なかったのよね。ダイラ絶賛彼氏募集中なのに。って、本人から聞いたわけではないけれど。わたしのせいでダイラの春が遠ざかったらどうしようって……。女同士なのに言えなくて心苦しかったわ」
カルロスが若干含みを持たせたことなんてまるで気づかないようにレカルディーナはこともなげに内情を暴露した。そうか、彼女特定の相手いないのか。
ということは。
カルロスは突如閃いた。
言質は取った。当たり前だが二人の間には友情というか、親愛の情しかないというわけで。
レカルディーナのことはベルナルドがばっちり抑え込んでいる。彼女もベルナルドの気持ちにこたえたとのことで、殿下はさっそく彼女を自身の婚約者として扱っているくらいだ。
ダイラはガラス細工のような男が趣味というわけではなく、単にお屋敷のお嬢様の無謀な挑戦が心配で影ながらこっそりフォローしていたということらしい。
(俺にもまだチャンスはあるんじゃないか?)
自分とは真逆な体格な男が好きなら、自分でもどうしようもないからあきらめようと思っていた。
しかし、そういうことではないとしたら。
カルロスの目の前に突如明るい未来が開けた瞬間だった。
ダイラの笑顔をこちら向けてほしい。
お屋敷のお嬢様相手ではなく、自分にその笑顔を振りまいてほしい。
ということでカルロスは決意も新たにダイラを口説き落とすことに決めた。
「どうしたの、カルロス? にやけ顔が気持ち悪いわよ」
レカルディーナが少しだけ口元を引きつらせた。
「いや。大丈夫。俺にも運が回ってきたってだけ」
「運?」
そう、俺はあきらめない。
ああいう手合いに微妙なやり取りはまったく効果がないというか気づいてもらえない。
直球勝負に出るに限る。まずは時期を見極めなければ。
「おい、何勝手にレカルディーナの部屋に入っているんだ」
「うわっ、まずい……じゃあな、レカルディーナ様」
ベルナルドがダイラを従えて入室してきたのでカルロスはあわてて退散することにした。レカルディーナは近衛隊にもシーロにも好かれているから、なんだかんだ主君の目を盗んで見舞いに訪れているのだ。もうあと二日後にはミュシャレンに帰ることになっている。レカルディーナ自身はもう元気になったと主張しているのに、過保護な主君は首を縦に振らなかったのだ。
「あなたね、女性の寝室に軽々しく入らないで」
ダイラは退出しようとするカルロスにじろりと視線を寄せてきた。
「いやあ、俺にとってはまだまだ同僚って意識のが強くて」
カルロスは笑ってごまかした。まさかきみのことを聞きたくて、などとは言えない。
しかし、これももちろん本音で。そのうち、ドレス姿のレカルディーナばかり見るようになれば自分の頭も落ち着いてくるだろう。
去り際、カルロスはもう一度ダイラをじっと見た。
彼女の意識はもうレカルディーナへと向けられている。彼女のほうも、親しいダイラに心を許した笑顔を向けている。ほほえましいな、と思った。
カルロスが本格的に動き出すのは、レカルディーナがアルムデイ宮殿に居を移し、ダイラが正式にレカルディーナ付きの女官になった頃。
秋も深まった季節のことである。
ダイラにとってははた迷惑な、求愛を受ける日々の始まりである。
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