短歌、記憶帖

2

1

（句）

べとついた　夏の小瓶の　色合いを

小気味良く割る　べっこうのあめ

（読み方）

べとついた　なつのこびんの　いろあいを

こきみよくわる　べっこうのあめ

2

艶やかに　髪梳き流し　風光る

小百合の肌に　浮かぶ汗玉

つややかに　かみすきながし　かぜひかる

こゆりのはだに　うかぶあせだま

3

甘辛い　母のあげたて　油揚げ

夜明けの空に　匂いたちこめ

あまからい　ははのあげたて　あぶらあげ

よあけのそらに　においたちこめ

4

青レモン　パンの焼く音　白砂糖

コーヒー牛乳　誰か作って

あおれもん　ぱんのやくおと　しろざとう

こーひーぎゅうにゅう　だれかつくって

5

白百合の　眠たげな眼の　涙かな

花弁におつる　つゆの一滴

しらゆりの　ねむたげなめの　なみだかな

かべんにおつる　つゆのいってき

6

片手間に　髪を束ねて　（＃）コーラルの

桜髪留め　指先血塗る

かたてまに　かみをたばねて　こーらるの

さくらかみどめ　ゆびさきちぬる

7

食べごろに　ほど遠きかな　柿の下

小首かしげて　見上げるスズメ

たべごろに　ほどとおきかな　かきのした

こくびかしげて　みあげるすずめ

8

月夜会　愛想笑いに　嘘笑い

狐の目じりに　狸のこころ

つきやかい　あいそわらいに　うそわらい

きつねのめじりに　たぬきのこころ

（＃）珊瑚