第5話


 二人の住む霧生市は、山の麓にある片田舎である。北の方角を見れば、冬枯れの山々が春の芽吹きを始め、少しずつ色を付け始めていた。そのほかの方角、どちらを見渡しても、丘陵の多い土地柄だ。かつては養蚕、織物の産地として栄えたため、人口こそ少なくはないものの、交通の要所としては発展のしようもない。現代という時勢から十年は遅れているような、そんな土地である。

 特に春菜の住む水上神社は、町の奥まった、山の麓近くの丘陵の上にある。一方、純一郎の家は、片田舎ながらもそれなりに賑わう駅近くの商店街の方であった。歩くとなるとそれなりに時間はかかるのだが、歩くほかない。何せこの片田舎ではバスという公共交通機関はあまり使われず、市民は車や自転車で移動するのが普通だ。昨晩、自転車に乗る余裕もなく純一郎は走って来たため、歩いていくしかなかったのだ。


「そのうち、原付の免許、取ろうと思う」

「そうですね。純一郎さんの家が駅の方なら、高校結構遠いですもんね……でも霧生高校って、バイク通学は駄目じゃありませんでしたっけ?」


 春菜は、今朝までの巫女服から普段着に着替えていた。膝下まで丈のある長めのスカートに、上着には今の時期に似つかわしい桜色の長袖を翻しながら、少年の横を歩いている。


「あぁ、そうだったかも……でも、近場のコンビニにでもこっそり留めて……」

「あっ、駄目ですよ純一郎さん。ルールは、きちんと守りましょう」


 春菜は純一郎の方へ向き直り、少しかがんで人差し指をぴんと上げた。めっ、というつもりだろうか。しかし、全然怖くない。


「そうじゃなくっても、バイクって危ないですよ。事故したら、ほんと大変なんですから」


 そんなこと言いだしたら、バイクの製造会社は商売あがったりだ。二輪には二輪の浪漫があるのだ。とは言っても、少年の場合は単に楽をしたい、それだけなのだが。

 しかし、昨晩白滝が言っていたことが純一郎の脳裏にちらついた。良い想いを抱いている人などいるはずもないのだが、交通事故に対してこの子は人一倍、危機感があるのかもしれない。


「……うん、まぁ、そうだな。原付は、やめておこうかな」

「えぇ、それがいいです」


 別に、今後この子と縁が無くなれば、関係の無い話ではある。しかし、とりあえず通学は自転車でしよう。純一郎はそう思った。


 しばらく進むと、だんだん町が活気に満ちてきた。時刻はちょうど十時になったというばかり。それだけでなく、目的地が近くなってきた証拠だ。


「そういえば、春菜って何歳なんだ?」


 昨日から疑問に思っていた。恐らく、自分とそう変わらない歳ではあると思うのだが――。


「あ、女性に歳とか聞いちゃいます? 気を付けたほうがいいですよ、純一郎さん」


 自分にだって、それくらいの分別はあるつもりだ。だが、そういうのって妙齢の女性に聞く場合に限ると思うのだが。


「……何歳くらいだと思います?」


 春菜は口元に手を当てながら、少し意地の悪そうな顔をして純一郎に尋ねた。


「そうだなぁ……十歳くらい?」


 勿論、冗談だ、九割くらいは。


「えっ……そ、そんなに幼く見えます?」


 こちらは冗談のつもりだったのに、春菜は結構ショックを受けているようだった。


「い、いや。流石に冗談だよ。春菜、結構しっかりしている感じだし……」


 そう言えば年上だったら、さん付けで呼んだ方がいいのだろうか。そんなに歳は違わないとは思うが、自分と比べると明らかに春菜の方がしっかりしている。そう考えると、一、二歳は年上である可能性もそれなりに高い。結構失礼なことを言っていたのでは、と純一郎は心配になった。


「……ふっふー。そうですよ。私、結構しっかりしてるんですから!」


 先ほどの落ち込みから打って変わって、えっへん、と胸を張っている。そう言う所が残りの一割だったんだよ、とは言わずにおいた。


「まぁ、私の年齢は、秘密と言うことで」

「それじゃ、何で聞いたんだよ……」

「ふふふ。まぁ、私の年齢だって、多分そのうち分かりますよ」


 今朝の鼻歌の件のお返しです、だそうだ。これを意地悪と思っている辺り、素直なのか単純なのか。純一郎はなんじゃそりゃ、とは思った。だが、もうじき目的地に到着する。


(――そうだ、この一件が終わったら、きっとこの子とも関係は無くなるんだ)


 だから、深く詮索はしないでおいた。






 時刻は、午前十時過ぎ。この時間に着くようにしたのは、母がパートに出かけるからだ。


「これなら、言い訳を考えずに済むからな」


 そう言いながら、二人は家の敷地の中へ入っていく。


「……純一郎さんの家、お金持ちなんですね。蔵があるって聞いて、もしかしたら……とは思っていましたけれど」


 純一郎の家は、アーケードを更に行った住宅街の一角にある。敷地の周りの土塀も武家風の屋敷も、漆喰で塗られている。最近塗り直したばかりで、そのおかげか古臭い感じではない。


「まぁ、春菜んとこの神社と、そう面積は変わんないんじゃないかな?」


 純一郎は、少しつっけんどんな風で返した。思春期特有の、あまり家族や家のことを詮索されたくないという、一種の何かだ。


「それは、そうかもですけれど……」

「……ウチの祖先、なんか結構エライお侍さんだったらしくってさ。でも、今はトーチャンは普通のサラリーマンだし。家はでかいけど、そんなに金持ってわけでもないんだ」


 むしろ、家が無駄にデカイと掃除が大変だ。そんな風に純一郎は悪態をついた。


「とにかく、蔵に案内するよ。つっても、もう見えてるけれど……」


 純一郎が指差す方向、屋敷とは庭を挟んで反対側に、蔵が確認できた。二人はそちらの方へ向って歩き出した。


「はぁ……年季の入ったお蔵ですね」

「ジーチャンが、物捨てられない人だったから。結構、ごちゃごちゃしてるんだけど……」


 そう言いながら、純一郎は蔵の入り口に手を伸ばす。ふと、手を伸ばした瞬間、再度緊張が戻って来た。自分の家の一角に、あの声を生んだ異界があるのだ。そう思うと、不安が噴き出してきた。


「……大丈夫ですよ。私が、居ますから」


 気が付くと、純一郎の手の上に、白くて綺麗な手が置かれていた。その手から伝わる温かさが、少年の不安を少しだけ和らげてくれた。


「ごめん、勇気を出すって言ったのに……」

「いいえ、怖いのは、仕方ないです。でも、その怖いのを振り払うために、参りましょう」


 意を決して、扉を開ける。中は暗く、静まり返っている。正面には二階上がるための急な階段――ほとんど梯子と言っていい――があり、その先の窓からわずかに光が射すのみだ。一歩足を踏む込むと、多少のカビ臭さが少年の鼻孔をくすぐった。


「扉は開けておきましょう。少しでも、光が入っていた方が、安全ですから。それで……」

「あぁ、例の筒だな。えっと、少し待っててくれ」


 純一郎は蔵の奥に慎重な足取りで入っていき、まずは古臭い照明の糸を引き、電球に明りをつけた。そして「確か、この辺りに……」と言いながら漁り始めた。

 春菜は、辺りを見回している。当然、暗い中なので魔物を警戒しているのもあったが、それ以上に手持無沙汰で、やることがなかったから、という理由の方が大きいのだろう。そして、ふと春菜は立っている場所の近くに、ビニールテープで縛られた教科書と、あるものを発見した。


「純一郎さん、剣道をやってらしたんですか?」


 少年の手が、ふっと止まった。


「教科書の横にある竹刀、そんなに古いものじゃないです。それに昨日、しばらくピシっと正座をしていましたし。何か武道でもやっていらしたのかな、とは思っていたんですけれど……」

「……まぁ、ジーチャンがやれって言うからさ。小さいころから道場通ってて、それで中学ん時までは、部活でね」


 そう言うと、再び手を動かし始めた。


「高校では、やらないんですか?」

「霧生高校、剣道部無いんだよ」


 あっても、やる気は無いけどね。少年はそう付け足した。


「まぁ、そんなことはいいじゃんか……っと、あったあった。これだよ」


 そう言うと、純一郎は背中で喋るのを止めて立ち上がった。その手には、長さ四十センチ程の木箱がある。それを、春菜の方へと差し出した。


「……邪悪な気配はしませんね。とりあえず、拝借いたします」


 春菜は、気箱の蓋を取って開けた。すると中には、筒、というよりも、何かの柄のような、棒状の物体が納められていた。直接手に取り、春菜はそれをしばらく眺めた。


「やはり、気配は感じませんね。もうこの中には、既に魔物は居ないようです……と言っても、純一郎さんを追いかけていたので、当然と言えば当然ですが」


 ですが、何か他にヒントになるものがあるかもしれません。春菜はそう続けて、丹念に筒状の棒や、それが入っていた木箱を調べている。


 逆に今度は純一郎が手持無沙汰になってしまった。春菜は電球の下で、あぁでもない、こうでもない、と唸っている。何か他にヒントになる様なものでも探し当てられれば役に立つのだろうが、どんなものが役に立つのかも皆目見当もつかない。純一郎は仕方がなく、春菜の邪魔にならないように、壁に寄りかかって少し待つことにした。腕を組みながら、頭を垂れる。そして、目を閉じて無心に努める。それは、魔物の恐怖を打ち消すのは当然のこととして、先ほどの春菜の言葉を意識しないためだ。


(どうせ、俺には剣道の才能なんか無かったんだ。いや、剣道だけじゃない。なんだってそうだ……)


 考えないようにしても、むしろ考えないようにしているからこそ、思考が溢れてくる。目を瞑っているから色々考えてしまうのだ。暗い思考から逃れるため、純一郎は眼を開ける。すると視界の端に、竹刀の柄があった。


(……ジーチャンじゃないんだし、いらないなら、捨ててしまえばいいんだ)


 そうだ。中学時代のモノを整理するため、蔵に置きに来た。だが、整理などする必要も無い。最初から捨ててしまえばよかったのだ。


 そんな風に思っていると「あー! 分かりました!」という、蔵の暗さに似合わない、明るい声が聞こえた。


「純一郎さん、分かりましたよ!」

「……分かったって、あの魔物のことが?」

「あ、いえ……ごめんなさい、全然違うことなんですけれど。でもコレ、結構な掘り出し物かもしれませんよ?」


 そう言いながら、春菜は手に持った棒を左右に振っている。


「その棒が、一体なんだって――」


 聞き返そうとした、その瞬間であった。陶器が割れるような音が蔵全体に響き――直後、先ほどまでの明るさが失われた。

 純一郎は、事態が呑み込めない。電球が割れたのは分かる。だが、何故割れたのか。これが分からない。いや、本当は分かっていたのかもしれない。だが、分かりたくなかった。


「純一郎さん! 外へ!」


 少女の声で、体に力が戻る。事態があまり好ましくないのは明らかだ。純一郎は、蔵の扉へと体を向け、走り始めようとする。

 しかしその瞬間、蔵の扉がひとりでに閉まりだした。いや、閉まりだしたと言う表現ではぬるい程、扉は早く閉まった。明らかに何物かが、力一杯に扉を閉めたのだ。


「くそっ! 開かない!」


 純一郎は、渾身の力で扉を開けようとする。しかし、何かに抑えつけられているかのように、扉はピクリとも動かない。そして――。


『逃サンゾ』


 あの、声だ。それは、すぐ背後から聞こえた。


 純一郎は、言葉にならない叫びを上げるほど狂乱し、扉を開けようとした。しかし、やはり無慈悲にも扉は開いてくれない。ふと、ゾッとするほど冷たい何かが肩の上に置かれる。そちらに少し視線を見やると、何か、手のような形をした黒い闇が、純一郎の肩を掴んでいた。そして、その手は肩を強く握りしめたかと思うと、純一郎の体に浸透してきた。


「あっ……がぁ……!?」


 少年の口から、小さな悲鳴が漏れる。それは、得体の知れない恐怖から出たものであったか――それだけではない。


(い、意識が……持っていかれる……!?)


 影が体に染み込めば染み込む程、意識が遠のいていく。目の前にある扉が、歪んでいる。いや、視界が歪んでいるのだ。


『――我ガ兵法、未ダナラズ。我ガ遠イ後胤ヨ、貴様ノ体ヲ……』


 後ろから低音が聞こえる。意識は消えそうだというのに、恐怖は鮮明であった。


(い、嫌だ……消えたく……!)

「させません!」


 空気を割く、鋭い音が聞こえる。その瞬間、少年の体を蝕もうとしていた闇が抜け、後ろから激しい音が聞こえた。影から解放され、意識がハッキリとしてくる。振り返ると、春菜と闇が鍔迫り合いをしていた。当然、春菜は刀を持っているわけではない。少女の手には、儀式用の白い幣が握られ、それを刀のような形状の黒い物体で、影が受け止めていた。


「……迂闊でした。まさか微弱とはいえ、日の光がある中で襲ってくるだなんて……」


 日の光は、春菜の数歩後ろだ。影は、闇の隙間を縫って出現したのだ。

 両者とも、一歩も動かない。むしろ、動けないのだろう。それほど、両者の力は拮抗している。


「昼間で、これほどまでに強力な力があるだなんて……やはり……っ!」

『娘ェ……邪魔ヲ……!』


 拮抗を破ったのは、闇の方であった。少年の耳に何か鋭い音が聞こえたと思った矢先、影の足の部分が春菜の腹に刺さっていた。


「ぐっ……!?」


 小さな悲鳴と共に、少女は後ろに吹き飛ばされる。春菜は梯子の部分に背中を打ちつけ、その場に前のめりになった。


「あ、あぁ……!」


 少年はその光景を、ただ見守ることしかできない。


『……貴様ニ、興味ハナイ。サァ……』


 影が、少年の方に向き直る。正確には表も裏も分からない漆黒なのだが、こちらを向いている。それは、純一郎にも認識できた。

 再び手が、少年の肩を掴んだ。今度は、互いに向き合う形だ。なす術もなく、少年はその場に立ち尽くしている。


(俺、この場で死ぬんだな……)


 先ほどよりあんなにも感じていた恐怖は、不思議となりを潜めた。見える恐怖よりも、見えない恐怖の方が勝っていたのだろうか。目の前に自らを狙う悪意があるのは、背後の悪意よりは多少マシだったのだろう。


(なんだか、春菜には申し訳ないことしちゃったな……)


 意識が、再び遠のいていく。そのまま闇を見据えていると、何かうっすらと浮かび上がってくるように感じた。それは、人の顔のような――。


「――はぁ!」


 再び、影は少年を諦め、背後の少女を迎撃した。先ほどと同じように、両者獲物を打ちつけ合い、動けずにいる。見ると、少女は口から、わずかだが赤い糸を引いている。かなり強く背中を打ったはずだ。それなのに、少女の眼には闘志が消えていない。


(どうして、そんな一生懸命になってるんだよ。血、出てんのに……)


 その様子を、金縛りにあったかのように純一郎は見つめている。


「……やらせません。この町と、人々を護るのが、私の……!」


 そこまで言って、少女は言葉を止めた。そしてその代わりに、持っている白幣に力を込めたようだった。

 それに対し純一郎は、扉の前にへたり込んでしまった。目の前で起こっていることに、何かしなければならないような、そんな焦燥感。だが、影に取り込まれる恐怖は、やはり大きい。


(俺、メッチャ格好悪いな。女の子が、こんなに自分のために頑張ってくれているのに。でも……)


 自分が何をすべきなのか、それが分からない。だがそれでも、眼の前の少女の痛ましい勇士が、少年に何かをするべきだと訴えかけてくる。


『成程、小娘。貴様、ドウヤラ死ニタイラシイ……』


 実際に、二者の力が拮抗していても、影の方が技量が上だったのだろう。まるでテープを巻き戻し、再生したかのように、先ほどと同じ形で春菜が蹴り飛ばされる。


 しかし、先ほどと違う点が二点ある。一つは、春菜が蹴り飛ばされた方向。今度は蔵の奥の暗がりに投げ出された。そして二点目、影の方が今度は純一郎ではなく、春菜の方を向いている点である。


『――貴様、神祇官ガ破魔ノ巫女カ。ソレナラバ……』


 そう言いながら、闇は少女に近づいて行く。春菜は、二度飛ばされたダメージが蓄積してか、立ち上がろうとしているものの、手を床につけて未だにしゃがみこんでいる。


(――なんだっていい! きっと何もしなかったら……!)


 影は、日の光を迂回して少女の方に歩を進める。


「うぉおおおおおお!」


 少年が、手に持った竹刀を横薙ぎにする。当然、それに反応できぬ影ではない。後ろを振り向き、少年の剣を受け止めようとする。だが――。


『……ヌゥ!?』


 影の側も、無意識だったのだろう。少年の剣を受け止めるため、一歩引こうとしたのが仇となった。足の部分が、日の光に当たり、煙を上げ始めた。


(――チャンスか!?)


 渾身の力で、少年は光に影を押し込もうとする。しかし、影は光によって一瞬ひるみはしたもののすぐに足を捌き、少年の剣をゆうに受け流してしまった。


『フッ……自ラノ力量モ弁エズ、突貫シテクルナドト……』


 表情の見えない影に、確かに嘲笑される。


(クソッ……! 結局、俺じゃあ……!)


 少年の頭に、再び黒い想いが浮かんでくる。一歩踏み出したって、やっぱりこうだ。自分の力では、結局何も変えることはできないのだ。


『――貴様ノ感情ガ、我ガ血肉トナル』


 影が刃を左わきに構える。このままでは、やられる――そう思った刹那、影の背後に、何かが刺さった。昨日、影を撃退した札であった。


『グッ……!?』


 今度こそ、影は本物の呻きを上げる。これは、効いている。


「……今、貴方を滅してさしあげます!」


 一人と影の後ろで、春菜は何やら手を激しく交錯させている。そして、両の手を交差させ、少女が息を吸い込んだ瞬間であった。影の輪郭が、粉を巻いて散っていってしまう。


『――我ガ兵法、未ダナラズ……』


 声が聞こえ終わるとともに、少年の眼の前の影がすぅ、と消えた。


「逃がしま――ッ! ……逃げられました」


 春菜は叫んで後、その場に座り込んだ。純一郎は少しの間、動かずに茫然としていた。しかし、すぐに事態を呑みこみ、春菜の方に走っていく。


「だ、大丈夫か!?」

「え、えぇ。大丈夫ですよ」


 少女は、少年を心配させぬようにと、気丈にも笑顔を作っていた。


「で、でも……血、出てて……!」

「いえいえ、派手に吹っ飛ばされた衝撃で、口の中を少し切っただけです。内臓をやられたりはしていないですから、安心してください」


 そうは言っても、飛ばされた衝撃で辺りの埃を被さり、口元を拭っている少女を見るのは、何とも言えない痛々しさがあった。


「とりあえず、外に出ましょう。このままここに居たら、また襲われてしまうかもしれません」


 少女は立ち上がり、服に付いた埃を払いながら、扉の方へと向かった。少年も、その後ろを追いかけ、一旦蔵から出ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る