第七話 本当はヤンデレな灰かぶり

 童話で有名な「シンデレラ」には、実は「灰かぶり」って意味があるらしい。

 そんなことを、わたしが自宅のリビングでぼんやり考えていると、


「えりす」

「なに、お兄ちゃん?」


 いつものクソきしょい変態乙な抱きまくらを持ったお兄ちゃんが、わたしに話しかけてきた。


「どうしたの?」

「俺の携帯に、高橋から留守電が入っていたんだが」

「ゆかりさんから?」

「ああ、内容がちょっと不気味でな。まあ聞いてくれ」


 ――ピッ

 ――メッセージは一件です


 もしもし、高橋ゆかりですわ。

 今日は面白いゲームを行うので、実況中継してみます。

 うふふ……どこに行きますの? どこにも逃げ場はないのに?

 あっ、ゲームの説明がまだでしたわね。

 実はですね、今朝に学校で。

 マサト様の下駄箱に、恋文を放り込もうとした。

 ――メス豚ッッ!

 を、わたくし発見しましてね……

 うふふ、許せませんよね?

 マサト様は、わたくしのものなのに……あら、泣いても無駄ですわよ?

 クスクス……

 失礼、ちょっとメス豚が泣きだしたので。

 とにかく、人の恋を横取りするような泥棒猫には、

 なにか「キツイお仕置き」が必要だと思いませんか?

 必要ですよね? マサト様もそう思いますよね?

 だから、マサト様に恋文を贈ろうと謀るような淫売と。

 ただいま、わたくし一緒にゲームをしてますの。

 町外れの廃工場に、汚らわしい豚女を連れ込んで。

 すべての出口を塞いで、鬼ごっこを……あはは、まだ泣いてる。

 ほっんと、馬鹿な淫婦ですわ。

 わたくしのマサト様に、あろうことか色目を使うなんて。

 ウフフ、だ・め♪

 これは鬼ごっこですから、逃げないと駄目ですよ。

 わたくしが鬼で、あなたが逃げる側で、負けた方は――ふふふ。

 あら、何をおっしゃってるのかしら?

 あなたが勝手に転んで、わたくしの手にした………に体当たりしただけなのに?

 あれ、もう動けないのですか?

 けっこう脆いのですわね。

 すうずうしい毒婦のあなたらしく、生命力もゴキブリ並みかとおもいきや。


 もしもし?

 あなた聞いてますか?

 わたくしの声が届いてますか?


 …

 ……

 …………明日がゴミの日で良かったですわ。

 ……

 …


 だって、いま、

 捨てるモノが、たくさんできましたから。


 うふふ……ふふふふふ……


 あは、

 ははっは、

 あはははははは――っ!


 ――メッセージは以上です

 ――ピィー


「こんなメッセージが来てたんだが、えりすはどう思う?」

「ヤンデレら……」

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