第23話 10月22日 日記

 日常の記録は小説のアイデアになるだろうか。小説は嘘をつくことでもあるけれど、嘘は真実の中に紛れ込ませないと目立ちすぎる。


 回想

 朝七時に起きて燃えるゴミを出しに行く。緑色の膝丈ステテコに、青色の耳付きミッキーのパーカーで外に出た。霧が出ていて、駐車場の路面は濡れていた。ゴミを出してベッドに戻る。

 「池田晶子 不滅の哲学」を読む。言葉がどこからでてくるのかとか、哲学的と感じる文章や詩的な文章とはなんぞやとか考えながら読む。


「読むとは絶句の息遣いに耳を澄ますことである」


 いかに考えながら深く降りていくのか。最近のテーマな気がする。自分には表層的で軽薄な上っ面しかない。だから深く思索することに憧れがある。

 文章を読み、その余白の部分に自分の考えが生まれる。

 今日もゆっくり本を読んでいたつもりだけど、本に集中しすぎると自分の考え自体が無くなるのを感じる。常に文章を書く意識で読んでいると考えが浮かぶ。

 

 蜜蜂と遠雷 春と修羅、プロコフィエフピアノ協奏曲二番を聞いているうちに寝てしまった。

 天気予報は雨だったが晴れた。十時に起きて昨日の残りの鍋をおじやにして食べた。天皇陛下のなにかがあるらしい。即位だったか……。

 

 散歩に出る。晴天である。相変わらず足羽山付近を歩いていた。マムシ注意と書かれた看板を横目に頭上から落ちてくる葉っぱを見ていた。

「わっ」

 身体が強ばって後ろに下がった。

 道幅ほどもある巨大な灰色の蛇がいた。写真をとろうと距離をとりながらiPhoneをかざした。するすると枯れた紫陽花の間を抜けて行ってしまった。

 レアな蛇に出会ったのでいいことがあると無根拠に思う。

 山を登る。

 途中食べられたアケビの残骸を発見する。小さな蟻が紫色のアケビの中を歩いている。たくさんドングリも転がっているので少し熊が怖くなる。

 カマキリに三度遭遇した。

 完全に緑色のカマキリ。

 木の葉色の小さなカマキリ。

 下半身部分だけが緑色のカマキリ。

 鎌を持っているのはすごいかっこいい。

 自分の一部を何かに特化するのはおもしろい。


 足羽山動物園に到着する。近くの山奥チョコレートというところで少し涼もうと思ったが休みだった。

 プレーリードッグを見つめる。ほっぺという名前を付けられている。 動きが定期的に止まり、思い出したかのように動き出す。何か考えているんだろうか。穴に入っていく時のお尻の動きがかわいい。

 モルモットを観察する。藁の中で寝ている。

 子連ればかりなのでなんとなく肩身が狭い。

 アヒルが柵にもたれかかり微動だにせず、鬱な感じに見える。

 他人から見える見え方と、自分が自分をどう見てるかは違う。

 影に生えるキノコの写真を撮りながら帰宅。

 昼寝。

 

 三時ごろ起床。

 インサイトというビジネス? 自己啓発書を読む。

 自分を変化させたいという意志は常に自分に感じる。

 てっとりばやく楽して、高めたいという思いが強いので、こういうのを読む。

 

 緑道を散歩しながら読む。道行く人に声をかけられるとこんにちはと返すが、無言で通り過ぎる人には頭を下げるだけだ。こういう時こんにちはと自分から言うべきか悩む。ラジオをかけながら歩くおばさんがいた。

 

 インサイトの内容

 自分自身を性格に認識することで人生うまくいく!

 自分が他の人にどう見えているか客観的に理解することでうまくいく!

 自己受容セルフコンパッション が大事!

 自尊心を高めるのが大事というのが昔の研究だったが、自尊心高めるとろくなことにならない! 自分最高だと思ってるので人の意見聞かないし、自分はできると思ってる。実際に人間は自分の能力を高く見積もる!

 自分もそういう傾向あるなと思ったので謙虚になろうと思いました。

 

 カマキリ四度目の遭遇。全く動かないので死体かと思った。小枝で押すと顔面を地面につけながら動いたがすぐに止まる。無常観。


 蜘蛛の巣に引っかかった葉っぱが風で揺れて生き物に見える。


 夜ご飯にキャベツと豚肉の炒め物とほうれん草と大根のみそ汁を食べました。


 自分を性格に理解するってとても難しい。認めたくない部分や嘘ついている部分が自己欺瞞になって自分でさえもよくわからない。


 

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