第18話 いや……これって? 誰得展開ですか。

「ロリババア!」オレの影から声をあげるハク。


「……そうか、ぜんぶ白起の仕業ね、こらっ!」


 ハクの本当の名前は《白起はくき》という。

 オレはめんどうなのでハクと呼んでいるから、忘れがちだが。


「ロリババアが怒ったのじゃ! 逃げるのだ!」


 すごい早さでオレの中に消えるハク。

 ……いつものことだった。

 避難場所オレ。


「あの……母上、橋がですね。あっちの橋も……」


「また、派手にやったわね……」


「……ごめんなさい」グリーンがしゅんとして謝る。


「? なんで貴方が謝るの? 悪いのは白起でしょ?」


「えっと、手前の橋はあたし……うぐ」


「そ、そうなんです母上! ハクが悪いんです! ぜんぶハクが!」

 オレはグリーンの口をふさぎながら、ハクにすべての責任を押しつける。しょうじき、これいじょう話がややこしくなるのは勘弁だ。


「……ハッくん。言ったでしょ? 白起をしっかり見ていなきゃダメじゃない。放っておくと、本当にたいへんなことになるんだから……。神である白起の管理。それがフェニ子達の……いえ、白神家の人間の使命であり仕事なのよ」


『わしを管理などとはおこがましいぞ! ロリババア!』


「晩ご飯抜きだからね」


『わ、あわわ。……ごめん……なのだ』


「母上すいません。後でオレからもハクにいっておきます……」


『もうしません。ロリバ、いえ……可愛いババア様』


「いや……バアアの部分を直してくれるかな。どうせなら。でも、まぁ仕方ないか……だいじょうぶ。電話しとくから大臣に」


 大臣とは防衛な大臣のことだろう。白神家は代々、国からハクの管理をアウトソーシングされている。

 うん……アウトソーシングと言いたかっただけなんだけど、ハクとうちの遠い先祖が約束したらしい「世話をする代わりに一度だけ国を守る」と……。

 その当時の国とは、集落単位の規模のものだったらしいけど。うちの先祖は賢いので、その力を行使せずに代々受け継いできたというワケ。

 そりゃあ、使ってしまうと無くなってしまう力なら取っておいたら色々とおいしい。神様の「守る」というお墨付きってチートだし、これ以上の切り札もない。白神家にずっと付き合っているハクもハクなんだけど、彼女にしてみたら、そもそもたいして長い時間でもないのかもしれない。興味もないのだろう。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



母上が「白起がやりました。あとはよろしくー」的な電話をしてくれた。これで万事OKらしい。聞くと、ハクが壊した奥の橋にも人的な被害は無かったらしい。ラッキーだ。



「そんなことよりも……ところでっ! その格好、グリーン・バーミンガムでしょ? 【震撃のグリーンブルーファンタジア】の?」


「え? ええ、そうですけど……」


 いきなり母上に話を振られたグリーンが、戸惑いながらそう応える。


「ちょっと触ってもいい? そのコス?」


「コス?……いいですよ」


「ありがとっ。うっわ! なにこれ!? ちょっと本気?」


「……え?」グリーンが戸惑いの声をあげる。


「(ゴクリ)……これ……金属……だよね。すごい」


「そうですけど……」


 ノーコスノーライフ。その価値はプライスレスでコスプレが趣味な母上。というか普段着からしてゴスロリな母上の心に火をつけたようだ。……グリーンの場合。コスプレっていうか、本人なんだけど。だから身につけている衣装もとうぜん本物。


「鎧重くない? 動けるの? っうか、さっきからガンガン動いているか……」


「あたしは、ずっとこれ着ているからだいじょうぶ……」


「(ゴクリ)ずっと……着ている」


「いつモンスターに襲われても大丈夫なように。着ていないと不安ですし」


「?」首をかしげる母上「……あ、その剣もみせてもらっていい?」


「……どうぞ」


「うわ重っ! めっさ金属製だ……あなたよくこれを片手で軽々と……って、これはさすがにやり過ぎじゃない? 危険じゃない。会場とか持ち込めないでしょ?」


「?」首をかしげるグリーン。


「でも、ここまでやる心意気はすごいよ! あなた……えっと、名前は?」


「グリーンです。グリーン・バーミンガム」


「!? くあーそうきたかー! 入っているねー。完全に入ってる! さすがねグリーンちゃん! もう真顔で言い切っちゃうあたり最高! フェニ子、おもわず本人かと思っちゃったよ!」


「あの……本人な――」


「フェニ子感動した。それに」

 ぐいっと、グリーンにじぶんの顔を近づきすぎぐらい、近づける母上。しっかりとグリーンの両手をにぎっている。


「うん。すんごい綺麗だよ」


「……綺麗」


「はー。ため息がでる……。なんてあざやかなグリーンなんだろ。髪も瞳も」


「え、……ありがとうございます」頬を赤らめるグリーン。まんざらでもないらしい。


「肌も綺麗……ほんとうに……」


 ――ちゅ。


「……あ」


「綺麗すぎて……キスしちゃった……」


「(//▽//) 」

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