第5話二人の出会い4

時計が1時を指した頃。俺と咲はゆっくりと眠りの世界へと旅立とうとした時、


ドンドンドン!

「おい!居るのはわかってんだ!早くここ開けやがれ!」


なんだなんだ!!!??俺何かしたか??

部屋の真ん中でパニック中の俺と怯える咲。そんな2人に構わずにまだ扉を叩く音と声は止まない。


「早く開けろって言ってる・・・・・・でしょ・・・・・・」


・・・・・・ん?でしょ、だと・・・・・・?あれ?それに静かになった・・・・・・?不思議に思った俺は恐る恐る玄関の方に歩いて行く。そして、近づくにつれて、声が聞こえてきた。


「優羽ちゃん〜開けて〜お願〜い」


ん、優羽ちゃん?まさか、アリスか!?

俺は恐る恐るドアノブを回して、少し覗いてみると、ドアの前に立っていたのは・・・・・・俺の高校の同級生でしかも、編集担当の柊アリス(ひいらぎアリス)だった。

「ア、アリス!?えっ、じゃあ、さっきのは、まさか・・・・・・お前がしたのか?」

「い、いや〜ま、まさか〜アハハ、ハハ」

と、誤魔化しながら目を逸らすアリス。

「まぁ、そんなことより入れよ」

そう言って俺はアリスを中に入れる。

「こんな時間にどうしたんだ?メールにはいつも通りの時間に来るって書いてあったぞ?何かあったのか?」

そう、いつも通りの時間とは大体俺の昼寝から起きる時間の1時間後つまり、4時以降に来るはずなのだが、今日はまだ昼寝すらしていない時間に来るなんて珍しい。

「えっとね、今日はその、メール送った後に気づいたんだけど、実は今月ピンチなの!!だから、お昼ごちそうして、お願い!!」

なるほど、そういうことか。ということはさっきのはお腹が減っていてイライラしてて、最近見た漫画か小説に影響されたんだろう。よかった、この時間帯にアパートの住人がいなくて。あんなの聞かれたら警察に通報されていたかもしれない。しかし、どうしたものか。俺が頭をひねって悩んでいるところに、

「パパ〜?どちら様だったのですか?」

なかなか部屋に戻ってこない俺のことを心配して咲が部屋の襖を開けて玄関の方を見る。

「ああ、咲。もう戻る――よ」

あ、やばい。そういえば、アリスって・・・・・・俺はアリスの方を見るとさっきまでいたはずの場所に姿はなく・・・・・・部屋の中で咲をモフっていた。

「パ、パパ。この人誰ですか・・・・・・あっ、そこ、触らないでくすぐったいです」

「可愛い〜この子。優羽ちゃんの親戚の子?」

ああ、忘れてた。アリスのやつ、小さい子に目がないんだった。ロリ、ショタどっちもOKって大人としてどうよ・・・・・・と、また、考えていると、

「パパ、助け・・・て?」

咲の頼みならしかたないな、

「こら、アリス。咲が嫌がってるだろ、とりあえず離れてくれ」

「もっとモフりたかった・・・・・・」といいながら渋々離れるアリス。

「優羽ちゃん、それでさっきも言ったけどこの可愛い子は親戚の子?」

それを聞いて、いや、聞かなくてもするつもりだったが、俺は咲の事をアリスに説明することにした。

「いや、親戚の子とかじゃなくて、咲は俺の娘なんだ」

俺の発言と同時にピキーンと音を立てて部屋の空間が凍りついた。

「優羽ちゃん、今なんて言ったの?」

顔は笑っているが目が笑っていないアリスが俺に向かって感情のこもってない声で聞いてくる。俺はその声に気圧されつつも、

「だ、だから、咲は俺の娘なんだ」

あなたは本当に作家なんですか?もう少し言葉を選ぶか付け足してくださいよ!

「優羽ちゃん、説明いいかな?娘ってどういうこと?相手の人がいるってこと?」

うん、そうだな。ちょっと事情が特殊だし、これからの付き合いもあるし、説明しとくか。

「咲は養子なんだ、簡単に言うと――」

そう言って、俺は説明を始める。説明を聞き終わると、アリスは、

「なぁんだ、そういう事だったんだね。相手がいるわけじゃないんだ・・・・・・よかった、ってことは、まだ私にもチャンスがあるんだ」

「ん、最後のほう何って言ったんだ?」

「ううん、なんでもない。気にしないで」

「そう言われると気になるな。まぁ、いいか。それで、昼飯だが、簡単なものしか作れないぞ?」

俺は冷蔵庫を眺めながら、アリスに聞く。

「いいよ、優羽ちゃんの料理なんでも美味しいから」

そう言われると悪い気はしないな。よし、作るものも決まったし、

「少し待っててくれ」

そう言って、俺は調理にかかる。


優羽が調理を始めた頃、部屋の中に2人きりになったアリスと咲はというと・・・・・・

「ねえねえ、咲ちゃん。またモフらせて〜?」

「イヤです!」

この人本当に大人なのか、子供にしか見えない。しかも、パパと同い年・・・見えない・・・。

「うう〜じゃあ、質問する!」

「質問・・・?それなら別に・・・(何に対してだろう)」

「ではでは、今何歳?どこから来たの?パパの印象は?・・・・・・等々」

あ、質問って自己紹介みたいな感じなんだ。

「えっと、8歳です。高津児童養護施設から来ました。パパの印象・・・・・・優しい人・・・・・・です・・・・・・等々」

アリスの質問攻めに対して、一つ一つの質問に丁寧に?答えていた。アリスの質問が尽きたところにちょうど、優羽が料理を持って、部屋に入ってきた。

「ほら、アリス。有り合わせだから期待はするなよ?」

と言って、テーブルに置く。そして、その前にアリスが座る。

「は〜い。いただきま〜す」

そう言ったと同時に見ていて気持ちがいいくらいのスピードで目の前にある料理がアリスのお腹の中に消えていく。そして、20分も経たないうちに完食してしまった。

「ごちそうさまでした。優羽ちゃん、とっても美味しかった〜ふぅ」

その後、食べ終えた皿をキッチンの流しに置いてきたアリスに、

「で、今日はどうしたんだ?」

いきなりの仕事モードの顔つきに変わったので、咲がビクッと肩をすくめる。その隣でアリスはいつもと変わらない様子で、ニコニコと笑っていた。

「今日は原稿の進行状況の確認と今後の予定の連絡」

「ん、そんなことならいつもみたいにメールや電話で良かったんじゃないのか?」

いつもなら、こんな業務連絡はメールや電話なのに、何かあったのだろうか、と考えていると、アリスは顔を赤く染めながら、

「優羽ちゃんに会いたかったんだよぉ・・・・・・最近、忙しくて顔合わせる機会なかったから」

ああ、そういう事か。アリスの中の俺成分が尽きかけている、いや、尽きているということか。それじゃあ、しかたないな。うんうん。

「まあ、いいや。そうだな、原稿は順調だな、今のところ。それで、連絡って?」

「うん、それね。来週、編集部に顔出しに来てだって、編集長が」

編集部という言葉を言ったと同時に優羽の顔が険しくなっていく。そして、ポツリと、

「編集部。はぁ〜行きたくないなぁ、アリス、それって強制?」

「もう、何言ってるの!そんなの当たり前じゃない。副編がいない時に来ていいから!ってか、その日に呼ぶから」

「あ、じゃあ、行く!」

ちょっと、あなたは目上の人をなんだと思っているんですか。それに、どうして副編集長さんがいるとダメなんですか?

「まぁ、副編の木山さん、私も苦手だけどね」

と、アリスは下を出していたずらっぽく笑う。あなた達ねー!まぁ、いいですよ、嫌いな人や苦手な人の一人や二人いるのが普通ですもんね!

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