第10話 勇者あああああの新たな仲間

「ということがあったのじゃ」


「…ぐう。」


「寝てんじゃねえ!」


ガリアンが俺の頭を叩いた。


「三途の川……じゃなくて、聞いてたよ。

要はクーデター起こされて涙目敗走ってことだろ。」


「なっ……泣いてないもん!!」


「敗走は認めんのかよ。」


「違うもん!勝利への転進だもん!」


「はいはい。」


「ぐぬぬ。馬鹿にしおって!」


ヒミコが唸る。


「ヒミコちゃん大変だったんだね。」


アリゼが優しい声を掛ける。かわいい。


「アリゼ!うう…ぐしゅん。」


ヒミコがアリゼの胸に飛び込んだ。


「それにしても、大神官ですか。ダーマ神殿の大神官が失踪したと聞いていましたがまさかそんなことに…」


ヒミコの頭を撫でながら、アリゼがそう言った。


「我らが神を降臨させると言ってたな。てことはダーマの神を呼び出すのか?」


 ガリアンが言った。


「うーん。それなら失踪はしないはずです。大神官の権力を利用できますし。」


「ということは、トロールの神か?」


「おそらく。」


アリゼが頷く。


うへー。トロールの神とか想像したくねえ。

ガリアンに肩を並べるくらいキモそう。


「トロールの神と言えば、ビッグボストロールです。」


深刻な表情をするアリゼ。かわいい。


「知能の低いトロール族をまとめ上げ、強靭なトロールの軍隊を作り上げた英雄。魔王バラバラモスが魔王と呼ばれるようになったのは、ビッグボストロールを打ち破ったからだと言われています。」


「そんなにすげえ奴なのか?」


ガリアンが尋ねる。


「ええ。強靭な肉体を持つトロールの軍隊。現在の魔王軍と比べれば、規模は小さなものですが、練度が非常に高かった。

ヒトは為す術が無く蹂躙されるのみでした。

しかしそこに魔王バラバラモスが現れた。」


ごくり。


「魔王とトロールの死闘は3日3晩続きました。周辺の大地は荒廃し、瘴気に満たされた。今、その地はネクラゴンゾと呼ばれる毒の沼地が広がる死の大地となっています。」


うへー。戦いたくねえ。

話聞いてるだけで、土下座したくてうずうずしてくるぜ


「ビッグボストロールを打ち破ったバラバラモスを救世主と崇める人も多かったです。バラバラモスが人類に牙をむくまでは…」


アリゼがそう言ってうつむいた。

憂いを帯びてかわいい。


「なるほどなあ。そんなの蘇らされたらたまったもんじゃねえや。」


ガリアンが醜い顔を更にしかめた。

不細工ぅ~。ビッグなんとかトロールかよ。


「蘇るわけではないぞ。」


突然、ヒミコが割り込んだ。


「あの玉座に蓄えられていたのは、生命の魔力。生命無き物に活を与え使役することができるのじゃ。」


「どういうことだ?」


 俺は言った。


「うむ。彫刻などを生きてるかのように操るだけで、命を与えるわけではない。ビッグボストロールの統率力は再現不可能じゃ」


物知りじゃろと言わんばかりのどや顔。


「いえ、なおさら事態は深刻です。」


アリゼは、小さなこぶしを握りしめた。かわいい。


「僧侶として最高位まで修行を積んだ大神官の力が加わればあるいは……」


「命を与えられる?」


 俺は言った。


「おそらく。先程の大神官の言葉を聞く限り、その算段がついているのではないでしょうか。」


「むう。確かに、『血肉を持った完全な生命として』とかなんとか言っておったな。」


「ほぼ完全に再現されたビッグボストロールを魔王軍が使役する……」


「それってつまり?」


 ヒミコがつばを飲み込む。


「人類は絶滅するんです!」


「「「な…なんだって――!!」」」


俺たちは声を揃えて驚いた!!


「何とかしないと!」


力強く宣言する俺。

何とかして逃げないとヤバい!


「ええ!あああああさんの言う通りです!何とかしないと!」


何とかして止めなきゃ!


拳を握るアリゼ。かわいい。


「けどいったいどうする気だ?」


ガリアンがアホ面で言った。


「魔法が発動する前に止めるしかありません!」


「おお!我がジャパングの秘宝を取り返してくれるのじゃな!」


取り返さねーよ。なんでお前のために…。


いやまてよ

そんなに凄まじい魔力が込められてるなら、手に入れば無双出来るんじゃないか?


大神官は強そうだけど、こっちには油まみれの生きた盾があるし、奪って逃げるだけならいけそうじゃね?


「ああ!その通りだよヒミコ君!世界の危機を黙って見過ごすわけにはいかないからね!それに…」


 俺は勢いよく、寝床から立ち上がった。


「俺たちもう仲間だろ」


どんっ!!


ヒミコは、目を見開いた。


「あああああ!!わらわは、お主を誤解しておった!!

今までの非礼、本当に悪かった。共に悪を討ち滅ぼそうぞ!」


涙声のヒミコ。わーい。ちょろーい。


案内役ゲットだぜ!


それにしても、このヒミコ。


最初はむかつくやつだと思ったが、

ここまで落ちぶれて、ちょろいと可愛く思えてくるぜ。


そうだな。偉大なる勇者様の弟子にしてやってもいい。


あとで、おれが研究しつくした、

芸術的な土下座の仕方を教授してやることにしよう。


これからの落ちぶれライフできっと役に立つことだろう。

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おまえらが”あああああ”と名付けた勇者がリアルにいたらこうなる @bukky

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