第2話 勇者あああああの仲間達

俺は、城を後にするとルイーラの酒場に向かった。


仲間を探すなら酒場に決まってる。


一緒に酒を飲めば、どんな奴とだって分かり合えるからな。


そう、どんな奴とでもさ。


名前、職業、性別、強さ。


理想の相手を思い浮かべながら酒場に行くと運命の出会いができるらしいぜ。


不思議だよな!


俺は、ワクワクしながら酒場に入った。


 「おい、あああああじゃねえか」


 うげ、その声は幼馴染のガリアン!ついてねえな。こんなやつとつるんでたら、運命の出会いなんて一億年たっても来やしねえ。


 こいつは、生まれ落ちた時から腹筋が6つに割れていた筋肉野郎だ。それに「ガリアン君油でテカッてキモッ」の異名を持つくらい常に謎の油で光り輝いている。


 「働かずに飲むビールはうめえか」


 ガリアンは言った。


 「極上だぜ」


 「チ、勇者だからって好き勝手ブラブラしやがって」


 「何言ってんだよ。魔王を倒して、世界を救うんだ。英気を養わずしてどうするんだ」


 「そうか?そういえば三年前からずっと同じこと言ってんな。いつ倒しに行くんだよ」


 ぐぬぬ。こんなやつと無駄話するためにルイーラの酒場はあるんじゃない。運命の出会い。そう、運命の出会い。運命のであ...い?


 そのときおれは、酒場の片隅のプラチナブロンドの美少女に気付いた。おれはガリアンを放置して、光の速さで、美少女のとなりにさっと座った。


 美少女は、おれに気づくと、琥珀色の目を見開いた。おれはほおづえをついて、両足を組み、指を鳴らした。


 「おい、ルイーラ。ノマリア産の978年モノを彼女に。」

  

 一流の男は、さっと一流のワインをおごるのだ。


 「いいのかい?あんた、今月のお小遣いはまだでしょ?」


 ルイーラめ、余計なことを。


 「魔王払いだ」


 「魔王払い」というのは、おれがよく使う言葉で、魔王の財宝から払うということだ。ようするに、出世払いというやつだ。ルイーラのため息が聞こえた。


 「おれは、勇者あああああだよ、お嬢さん」


 おれは「勇者」のところを強調して言った。


 「アリゼといいます」


 美少女アリゼは、うつむきがちに、少しはにかんで言った。おお、タイプだ!


そして俺は、アリゼを仲間にした。


アリゼは魔法が得意らしい。


攻撃魔法も、回復魔法も使えるとか。


まあでもそんな事はどうでもいいんだ。重要なことじゃない。


かわいい。


それだけさ。男なら他に理由はいらないぜ。


ルイーラさんは、3人まで仲間にできるとか言ってたが必要ないね。


かわいい女の子と2人きり。


誰だってそうするだろ?俺だってそうするぜ。


おっさんたちと4人パーティとかルイーラさんも冗談きついぜ。



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「すごいです!あああああさんってあの勇者オルぺガの息子さんなんですね!」


などと、嬉しいことを言ってくれるアリゼ。


「まあね。ぐふふ。でゅふこぽぉ。」


本当にアリゼはかわいいな。俺の理想の女性像そのままだぜ。


こんなかわいい女の子と出会えるなんて運命ってあるんだな。


そして俺たちは、早速冒険に出るべく、町を出ようとした。


すると、一人の男が立ちふさがった!


「待ちな!」


男は大きな斧を背負った、ムキムキテカテカマッチョだった。


「油のテカリ具合がキモッ。・・・ってなんだ、ガリアンか。」


「なんだとは、ご挨拶だなあああああ。


それより旅立つんだって?俺を連れてけよ。


仲間の数が足りてないんだろ。具体的にはあと2人。」


「やだよ。なんでお前を連れてかなきゃいけないんだ。


俺は、アリゼと二人で旅するって決めたんだ」


俺はすかさず、ガリアンの提案を断った。


俺の幸せを邪魔させるものか。


「まあ考えても見ろよ。この世界は4人で旅をするのが普通なんだ。


そういう風にできてるんだ。


いくらなんでも2人はまずい。せめて3人じゃないとこれから大変だぜ?」


「いやだ。」


「考え直せよ、な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


「な?」


「いやだ。」


・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・・

・・

気付くと、辺りは夕焼けに染まっていた。


そんなにも長い時間俺たちは争っていたらしい。


「へへっ。お前やるじゃねえか。」


ガリアンがすっと俺に手を差し出す。


「お前もな!」


俺はその手を握り返す。


手が油で滑ってキモッと思った。

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