宝くじに当たるより幸運なこと。

今はもうないのかな。

当時、シンデレラコンテストっていう某エスティックサロン主催の美女コンテストがあった。

太っている女の人がエステによってどれだけ美しくなったかを競うコンテストで、コンテストの出場者になればエステにかかる費用は全額タダ。

エステなんて庶民が続けて通うなんて不可能なくらい贅沢なものだから、自己流ダイエットで無様にリバウンドしたわたしには夢のようなコンテストだった。


コンテスト出場者募集の知らせを見てから、かなり熱のこもった応募書類を書いた。

全身写真、顔のアップ写真、3サイズの記入、出場を希望する理由……。

おこがましくも「痩せたらカワイイ」という周囲の優しさを半分真に受けて、半分ダメ元で応募した。


結果、もちろん落選。

すごーく狭き門らしいし、そもそも「美女」じゃない。

しかたない、地道にダイエットするしかないや。

しかし、コンテストに応募したことなんて忘れてかけていた数か月後、ある電話がかかってきた。

それはコンテストを主催しているエステの会社の方で、「銀河さんは今回、惜しくも出場していただけなかったのですが、○○というTV番組に興味はないですか?」


○○という番組は容姿にコンプレックスのある人がエステや整形などで美しく変身するという有名な番組だった。

この番組も出場者募集をしているし、シンデレラコンテストよりも応募者が多いと思うのだけど、まさかスカウトされるとは思わなかった。

わたし、TVで変身させられるほどひどい容姿だったか。


わたしとしてはタダでエステを受かられるなら飛びつきたいところだけど、やはり顔をさらすとなると家族や会社やTの承諾が必要となる。

しかもわたしは古風な考えの持ち主なので、整形は絶対にしたくない。

ピアスすら開けたことないくらいだ。

電話をくれた方に相談するとあくまでも本人の意思を尊重するので、整形をしたくなければエステだけでもいいそうだ。


半ば強引に両親と姉を説得し、会社の承諾を得て、Tに相談した。

Tは海外に長期の遠洋航海の最中だったので他人事なのか「整形しないなら、勝手にすれば~」ってあっさり承諾してくれた。


担当してくれたエステシャンの方いわく、やはり応募者は大勢いて、わたしは「宝くじに当たるより確率の低い幸運を手に入れた」らしい。

「やはり、相当変身させがいがあると思われたんですかねぇ」と聞いてみた。

相手は接客のプロ。まさか「そうです、あなたの容姿が並外れてひどいからです」とは言わずに「痩せたら綺麗になるって思われたからですよ」と言ってくれた。

じゃぁ、シンデレラコンテストでいいじゃないか。


わたしは一つの可能性を考えた。

前の話でも書いた通り、当時は海猿ブーム全盛期。

わたしの出場理由は「海上自衛官の彼が海外に遠洋航海中に太ってしまい、帰ってくるまでに痩せないと振られてしまう」というものだった。

ドラマを放送したTV局とこの番組のTV局は同じ。

よく間違われる海上保安庁と海上自衛隊。

もしかして、わたしの出場理由が旬だったから???

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