最後の戦い、そして、さよなら。

第33話 最後の祟り神

 人をはけるったって、アーケード街は結構な人通り。

 ちなみに主婦が多い時間帯らしい、これをどっか行かせる案なんかない。

 何より時間が無い、一体いつ祟り神はここに出る?


 こんな時特撮だったら都合よく人気のない場所があったりするんだけど、

あいにくとこの辺は……。

「はい、これ」

そんなことを考えているうちに由利ちゃんがもうゲームショップから出てきた!

はぇぇし!

 まぁケース内の物を買うだけだしね……。


「見て、こんなんもらっちゃった!」

由利ちゃんは笑顔で一見ガラクタにしか見えないモノが入った袋を見せた。

なんでもゲームギアとかいう聞いたことないハードで由利ちゃんが買ったソフトもついているとか……。


「いいからここから逃げて!それは捨てて!」

『ジャンク』って書かれたシールを張られたそれを気の張った俺が由利ちゃんの

手から引きはがす。

 ……しまった。


 果たして由利ちゃんの手から離れたゲームギアは、祟り神となり果てた。

 俺にゴミ扱いされた恨みを80年代独特の音で叫びながら。

「なんでそんなことすんのよ!せっかく魔導物語やろうとしたのに!」

あ~の~な~、うーかVCでやれそんなん!

突っ込んでる暇はない、黒い悪魔がこちらを見ている……。


 そう、悪魔。

 なんかこんなモンスター出てくる映画なかったっけ?全体的に無機質で、

重たげで、深海魚が立ったみたいな雰囲気。しかるのち大きな画面がカラフルに光っていて、そこから何かこの世のものではないモノが見える。

 幾重にも張り巡らされているのはコードだろうか、それがさながら手や足のように、由利ちゃんを狙っている。

「逃げて!」

しかし、その俺の声は何故か届かない。


 代わりに由利ちゃんは意外すぎる行動に出た。

「大丈夫、ちゃんと持って帰って、遊んであげる」

まるで子犬にでも話しかけるように……祟り神の頬に手をやって……。

 って、由利ちゃん祟り神が見えてるの?

「危ない由利ちゃん!」

俺はとっさに由利ちゃんをかばい、彼女を抱いて転がりだす。

 ドサッ、あぁ痛ぇ、

「気持ちはわかるけど、話し合いの通じる相手じゃない!」

俺、なんかヒーローっぽくない?

 上になっている俺の手が思わず由利ちゃんの手に触れる。

 (なんでもこれを『床ドン』というんだそうだ、後で知った。)


 由利ちゃんは泣き出してしまった。

 泣いている由利ちゃんを置いて、俺はハオを呼ぶ。

「時間が無い!手を貸してくれ!」

「うん、どうすればいい?」

ハオはいつも通りいい子だ。

「そのままの意味だよ!手、繋いでくれ!」

「……?」

俺とハオが手を繋げば、この敵も倒せる、はずだった。


 

 



 


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