第30話 ハオとデートだ♡

 日曜日になった。

 恒例のハオとのデートも三回目。

 「今日はどこに行きたい?」

 なんとなく聞くが、

「えぇ~!!そういうのって、男の人が考えるものじゃないの~!」

ぷぅっ、ふくれるハオ。

「それに着替えるんだから出てってよ~!明緒のえっち!」

 ばしーん!ビンタされて手跡がついた。まぁお約束ですね。


 「じゃあいこう」

ハオは秋らしい色の可愛いワンピースの下に長いこれまた秋らしいスカート、なんで女の子ってワンピースの中にスカートとかズボンはくんだろ?

 どんぐりのついたナチュラルな帽子被って、落ち葉模様の小さなバッグ持って、なんとなく90年代のファッション。

 ちなみにハオの来ている服はお袋のお下がりとか、あとリサイクルショップで買った。(新品なんかほいほい買えるかってんだ!)

 うんそう、そんな数百円とかせいぜい千円ちょっとのだよ?

 ハオには色々世話になってるし、このぐらいは、まぁ。


「いやぁ、昨日の親父は怖かったなぁ」

 俺の頬にはまだ名誉の負傷の跡があり、昔の漫画キャラみたいに絆創膏が貼ってある。

「大丈夫だった?」

 ハオは俺の顔を心配そうにのぞき込む。

「ダイジョブダイジョブ、『悪いことはしてないな?信頼してるぞ』それだけ」

 親父に殴られたことはないけど、怒ると怖い、心配させないようにしないと。


「で、今日はどこに行くの?」

 ハオとデートということで、俺はまずは駅に。

「ひ・み・つ」

 ハオの好きそうなとこをこっそり調べておいたんだ。


 しばらく電車に乗って、知らない街へ。

 なんてことない住宅街、ここにあるのは……

「あ、わかった、隠し家レストラン?」

 ハオは嬉しそうにしてる

「もっと、楽しいとこ」

 俺はずんずん歩く。


 恋人たちのホテルの集まる場所に来てしまったぞ。

「……ここであってるのかなぁ?」

俺はポケットから地図を出す

「あのお……明緒……」

ハオは普段だったら絶対俺の側をふわふわ離れないのに、なんだかやけに後ろに離れて歩いてる。

「こういうとこは……もっとお互いを知ってからの方が……」

ハオは耳まで真っ赤でもじもじしながら言った。

あ、やっぱ誤解されたか。

「いや、この辺でいいんだ、ほらこの山」

そう言って俺は近くの低い山を指した。


 「○○稲荷」

山の入り口には石段、そして石柱、ここは地元で親しまれてるというお稲荷様だ。

ネットの情報によると、今日はここで豊作祈願の小さなお祭りをやるみたいだ。

 といって、お祭りによくある屋台はない、宮司がお祈りをして、参拝者が奉納したり拝んだりするやつ。

 せいぜい、さっきからちょっと甘酒の匂いがするぐらい。


「な、ここ同業者だろ?」

俺は得意顔で石段を登る

「?あれ?ここにいたっけなぁ……」

ハオもそう言いながらふわふわついてくる。


 こじんまりした境内には、お社と、お守りを売ってる社務所、手洗いの水、小さな看板。小さなテント。

 甘酒の匂いがしたのはテントで地元のおばさんらしい人がさっきから「百円だよ~!」と甘酒を売っているからだ。


 我ながらのんびりしたデートだ、こういうの、いいなぁ……

「帰ろ、明緒」

ぷいと、看板を見てたハオが石段を早飛びで飛んでった。

「え?え?」

ホテル近いのはまずかったけど、お稲荷様だぞ?

同業者だぞ?あいさつもなし??


                 ☆


「待てよ、ハオ!」

どんどん飛んでるハオを俺は走って追う。

「ちょ、待てよ!」

こういう時に限って神器が光る、画面を見なくてもなんとなくこの語尾で誰になりきっているかわかるテレビっ子な俺。

「私をこんなとこ連れてくるなんて!明緒サイテー!!」

ぷんすか怒るハオ、それはそれとして……うわっ!ここでその話するの??


 そう、ここは恋人たちのホテルの前。

 そこで女の子にそんなこと言われてる俺は、はたから見れば、『女の子をホテルに誘って振られたかわいそうな男』だ。

 もちろんハオは俺以外の男には見えないみたいなんだけど……。


「だって行きたいって言ってたじゃん」

いきたい、がなんか違う意味に感じる、顔も変わんねぇし、キ○タク使えねー!!

「あのなぁ、マジいうんだけどありえなくね、だってここ、そういうことするとこだよ」

俺は神器をかなぐり捨てた、そういうこと=神様にお祈り、だよねぇ?

「ぷん!」

ハオは口を聞いてくれない。キム○クが抜けた俺は言った。


「せめてなんで怒ってるか聞かせて?次回の参考に」

俺はハオに土下座した。

「……ほんとうに、わかんないの?」

ハオは困った顔になった。

「わかんない。俺はちゃんとお稲荷様で検索したはずなんだ」

頼む、俺は本当にハオがなんで怒ってるかわかんないんだ。


「看板」

あぁ、あのハオが読んでた、正直誰が読むのかよくわかんないやつな。

多分神社のならわしとか書いてある系の。

「あそこ、神社じゃない、仏様!もう、これじゃ『久しぶり~!』なんて言えないじゃない、せっかく同類に会えると思ったのに……」

???え?お稲荷様に仏様??








 

 

 

 


 

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