第27話 そういうのはニチアサだけでいい

 一日またいで土曜日、心の勾玉はあと一個、祟り神はあと二体+本体。


 特撮だと、強化アイテムもらった回でちょっと強い敵が出てくるんだけど、そんな急に出てこられても俺の身が持たな……いや、えぇっと祟り神はどこにいるんだろう。

 出ませんように。


「ハオ、祟り神がどこにいるかわかるか?」

「……」

ハオは手を前で合わせ、祈るように瞳を閉じてちょっとだけ浮いてる。


「わかんない、ごめんなさい」

 しばらくしてしょげたハオが俺に告げた。

「ただ、あの気が強い人、心の勾玉を持ってた……あの人の周りに、やな気が渦巻いてる。気を付けた方がいいかも」

「えっ?気が強い……あ、なぎさ会長!!」


 俺は廊下を走った。

 ってか誰かが怪物に襲われるなんて特撮だけにしてくれ!

 考えてみれば沙織の時も心の勾玉と祟り神は近かった気がする。


 生徒会室へ!

 会長はそこにいるはずだ。

「失礼します!会長!」

「会長?喫茶店レオに行ったよ」

「失礼します!」

生徒会長が校則で禁止の喫茶店へ行くなよ!なんて考える余裕もなく俺は走る。


 喫茶店レオは近場だし、いくら俺の運動神経があれでもと思いきや息切れしてきた。(ダメな俺)

 でも走らなきゃ……。


 ポケットの神器が光った。

「なんだこれ?」

俺は歩き出した。

いや走らなきゃダメなはずなのに足が言うこと聞かない。

でもなんつうかこれおかしい。


 歩いてるだけなのに俺の本気の走りよりめちゃくちゃ早い。

 両足がしっかり地に着いて、膝が伸びて歩いてるのに早い早い、風景が飛ぶ飛ぶ、すれ違った子供が不思議そうに俺を見てる、足に合わせて手も振っちゃう。

 もしかしてこれ……。


「競歩 大会」

 神器が反応してた。

 うん、そんなことだと思った。

 しかし競歩なんかなんで教えたんだっけ……歩くのかったるいときに使えるかなぁぐらいだった気が……まぁいいか、うん。


 そんなこんなであっという間に喫茶店レオへ。

「会長!」

「うん?」

果たしてなぎさ会長はいた、水を飲んで座ってる。

 よかったまだ祟り神は現れてないんだな、


「会長、帰りましょう」

「はい?」

俺はなぎさ会長の手を取って喫茶店を出る。

事情を説明してる時間はない、こういう時特撮でよくあるストーリー展開といえば、パワーアップアイテムを狙った怪物がゲスト狙うとか、パワーアップアイテムを生み出したゲストが狙われるとか、とかく……。


「あの、今日約束が」

「生徒会長が喫茶店でですか?」

「そうじゃなくって、えぇっと……」

なんだかなぎさ会長らしくなくもじもじしてるけど俺はそれよりも祟り神のことが気になる。

 

 なぎさ会長がいくら喧嘩強いとかいう評判だって、祟り神にはかなうはずがない。


 「友達と約束……ってかどこ行くんだ!帰るなら私、こっちだからな」

なぎさ会長が俺の手を振り払った。

 そしてそんなことをしてるうちに、俺のバックの中にあった購買のパンが落ちた。

 するとそこから現れた紫の煙、小さな社、そして現れた、コノヨニイテハイケナイモノ。

 

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