第25話 もうギャルゲーじゃねぇよ!

 まぁあれだ、心の勾玉を持ってなくても鈴木さんはいい子だし、ハッピーエンド(?)だったし、沙織に新しい友達もできて、いいことずくめだ。


 先に進もう。


 俺は最近すっかり「なりきりアイテム」として機能しなくなった神器を握りしめた。

 ……なんで機能しなくなったかって?

 そりゃあ、ハオに力を入れてもらわなかったからだよ!!


 だってさぁ、なんか微妙なんだ、うん。

 戦隊ヒーローに武器はいらぬとばかり「武器を投げて物理で戦う」追加戦士がいたと思ったけど、そんなカッコいい理由じゃなく、

 あんま仲良くないつもりの友達から急に携帯にかかってきて無茶ぶりされるみたいな、お袋の買ってきたちょっと微妙な服みたいな「いや、うれしいけど」感。


 ある日を境に、俺はハオに神器へ力を入れることを頼まなくなってた。


 もちろん、自力で祈りの力を神器に入れられたのではない。

 というわけで、今の神器はほとんど「祟り神を倒せる携帯」だ。


 ともかく、漫然と過ごしてたらバレーの大会が明日だという恐ろしい事実がわかって、イベントが多いのはいいけど、なんでこんなスケジュールにしたんだとか言いたいけどそれはともかく、

俺は軽く練習して帰った。

              

                 ☆


 さて、バレー大会当日だ。

 クラスメイトチームと着替えて体育館へ歩く。

 

 俺は緊張していた。

 でもそれはバレーの大会だからじゃない、こないだ出来上がった写真。


 なぎさ会長に心の勾玉、ありました。


 なぎさ会長とは何回かバレーの練習したけど、なんていうかあんま女性と一緒にいる感じがしな……げふっげふっ、いや、活動的なのはいいことです!

 

 いかん、出番こないことをいいことにどうでもいいこと考えてないで学校の大会なんだしそこそこしまっていこう。

 集中集中。

 

 う~ん、しかし、見てる限り、なぎさ会長意外ときょにゅ……いや、あぁ見えて運動苦手って本当なんだな。

 とてとて走って、思いっきり打ってはいるけど空振ったり、どうにか打ったと思ったら、めちゃくちゃコースアウトしたり。

 巨乳に運動能力を求めちゃいけないって本当なのかな。


 俺の組はなんとか一回戦に勝って……あ、やべぇ、このままいくとなぎさ会長と当たる。


「試合開始!」

はい今、ホイッスルが鳴りました。

なぎさ会長がレシーブを打って、かろうじてこちらのコートへ。

難しい球じゃない、なんなくチームメイトが拾って、前へ回す。

そのままアタッカーが力強く相手コートへ!


辛くも拾った!

後ろの相手プレイヤーが打ち上げて、球は相手コートの前へ。

ここで相手チーム、二人でジャンプ!フェイントか!


しかし我がチームも負けてはいない、ここでキャプテンの登場だ!

この男野球部でありながら他のスポーツも万能と、女子にはモテモテですが、

さぁ今日は黄色い声援があるか?


おぉっと一撃だ!

鳴りやまない拍手と声援、相手コートギリギリに落ちた!

落ちた!球が落ちた!

一点入りました!


……おかしいと思ったら、俺の尻ポケットの神器が『古館 伊知郎』になってた。

なんでだよ!

そこは選手側にしとけよ!

あぁもう、今日はハオに頼んで念を込めてもらってたんだった、そうだった。


あぁ、役に立たねぇ。

プレイしながら実況なんてみんなびっくりしてるよ、あぁもう。


「久保、携帯は置いてくるように」

ほら先生に怒られた、やだよもう。


             ☆


 そんなこんなでどうにか試合は終わった。

 主に野球部のあいつの活躍で俺らの勝ち。


「ナイスファイト!負けちゃったけど、楽しかった」

試合後、なぎさ会長が握手を求めてきた、俺は軽く応じる。

 その瞬間なぎさ会長の胸から光が溢れ、勾玉の形になっていった。


 こうして俺は二個目の『心の勾玉』を手に入れた。

 まぁ、スポーツを通じて心が通じることもあるよな。

 ってもうギャルゲーじゃねぇよ!


 



 

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