第20話 三個の理由
俺の目の前には祟り神、ゴミ集積所に気づいてそちらへ気をとられているようだ。
そして、俺の陰に隠れた沙織が「見るな」という言葉どおり瞑った目を手で覆ってる。
可愛そうに、足ががたがた震えて。
気絶してないだけでもいいほうだ。
沙織から心の勾玉はもらってない。
俺と心を繋いでくれなくっても、沙織を、守らなきゃ。
「なんて仮面ライダーなら言うかなぁ」
俺はなるべく余裕な感じを醸し出すためにそんなことを口にする。
でも、本当は逃げたい、けど、沙織は。
沙織は、俺との関係がこのまま「いいお友達」で終わるにしたって、大切な人だから。
俺は。
「明緒くん……」
沙織が俺にしがみついてくれてる、いい、このイベント、いい。
「沙織、今のうち逃げよう」
俺は沙織の手を取って逃げようとした。
その時。
黄緑の静かな、しかし不思議な力のある光が俺と沙織の周りを包み、沙織の胸が光った。
「きゃっ」
沙織はびっくりして思わず目を見開き、見てはいけないであろう祟り神を見てしまう。
倒れる沙織。
そしてその胸から勾玉がすぅっと出てきた。
血のようなものは見当たらない、痛みはないのかな?
「ありがとう、沙織」
気絶してる沙織にお礼を言うと、俺は心の勾玉を掌に収めた。
「変身!」
なんとなくノリで言ってしまった、しかも555の変身ポーズで。
神器は心の勾玉に感応して光りだした。
変身はしないけど、ヒーローになった(気分の)俺は沙織をハオに預ける。
俺は祟り神に向かって走り出す。
祟り神は集積所のがらくたを食べていたが、こちらに気づいて向かってくる。
俺の神器に555の戦闘時BGMを入れていて助かった。
俺は音楽にのって、誰も見ていないというのにスタイリッシュにかっこつけながらシュッ、シュッと攻撃を避けていく。
むずがる祟り神、BGMのサビに攻撃をすればきっともっとかっこいいぞ。
そう思った俺はちょっと壁にくっついて時間を稼ぐ。
もうすぐクライマックス。
さぁ、必殺技で決めるぜ。(俺そんなキャラじゃないけど)
「あ、」
しまった、必殺技の名前って……うわぁBGMBGM!
「ゴッド・ブレッシング!!」
なんとか、俺の必殺技(神の祝福を英語にしただけ)が決まって祟り神は光に包まれ、消えた。
☆
「そうか、こういうのが三つ出るから、女の子三人と仲良くなれって言ったんだ」
『疲れた』と言う沙織を送りながら、俺はハオに話す。
「明緒くん?さっきから誰と話してるの?」
ハオは俺以外には見えない、沙織はいぶかしげだ、ハオは心が読めるから口に出さなくってもいいんだけど、いやなんとなく。
「え、え~っと携帯」
俺は慌てて神器を取り出し、こっそり前の着信(お袋)にかけてごまかす。
笑う沙織、この笑顔を守れて本当に良かった。
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