第19話 材料が足りないよぅ……。

もしゃもしゃ。 

白い軽トラみたいな「祟り神」は壁を食ってる。

住人が気づいて出てきたが、祟り神を見て気絶してしまった。

 

当たり前だ。

 

これはB級ギャルゲーだ、イベント戦闘だし多分勝てる。

いや、まぁ負けてから鍛えるパターンもあるけど、なんて考えながらも、

俺だって立ってるのがやっとだ、なのに。


ハオは俺に「戦え」という。

そして静かな足音、「今日はなんのクラシック音楽聞こうかな」なんていう独り言が聞こえ、振り向けば……。

 

沙織、

今、こっち来ちゃだめだ。

「そこの角を曲がれぇー!!」

俺は大声を上げ沙織の方へ走った。

「え?」

沙織は訳も分からず戸惑ってる、

沙織、あれ、見ちゃ駄目だ。

俺は普段だったらビビりのくせに、この時ばかりは沙織の目を片手で塞いだ。


何か声にならない音を出して、祟り神がこちらに気づく。

神器も反応してないっていうのに、俺はゲームの主人公さながらにかっこよく沙織をかばい立ちすくむ。


「神器を使い続けてるからね」

ハオは何がこんな時だというのにニコニコしている。

「きっとそれも明緒さんの力、あとは『心の勾玉』があれば、神器から神の光が溢れて、祟り神は倒れる」

へぇ、神器って変身アイテムかつ武器なんだ。と、ん、心の勾玉があれば……?


「ハオ」

俺はハオの顔を見ずに言った、

「俺、また誰の心の勾玉ももらってない……」

その時の俺の顔は、きっと情けなくって見れたものではないだろう。

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