第13話 システムになれるまで大変
そうだ、食事の前にあれ、忘れないようにしないと。
「明緒、それ、なぁに?」
神棚に今日のおかず、餃子を供える俺を見てお袋はいぶかしんだ。
「あ、え~っと、おなじない。成績上がったり恋人できた人がいるんだって、今、流行ってるんだ」
俺はテキトーに言葉を濁した。
「へんな宗教とかじゃないわよね」
お袋は心配性だなぁ。
「お稲荷様だって、あ、上げたのは俺が後で喰うから」
このぐらい話してたっていいだろう。
「あら、そうなの、じゃあ食べましょう」
「いただきます」
俺んちの餃子はお袋の手作りじゃなっくスーパーの値引きの買ってきて焼くだけだけど味は最高なんだ。
でも、ここにハオがいてもいいよなぁ、いつまでも俺の部屋で留守番なんてかわいそうだ。そのうち、どうするか考えよう。
ご飯を食べた俺はネットでバイトを探したりSNSを更新したりして過ごした。
「いいかハオ、ここで明緒と一緒に暮らしてるとか書いちゃだめだよ?」
SNSに「ギョーザ」と書き込むハオにはこういっといた。
だって、俺同姓同名の有名人がいるんだ、そんなこと書かれたら炎上しちゃう。
「なんで?」
でも炎上ってなんだろ?ハオに説明できるかなぁ……。
「プライベートなことだからね、そういうことは、これに書いとけば?」
俺はそうごまかしてハオにノートを手渡した。
「わかった、明緒くん、見ないでよ?」
「見ないよ」
ハオとはいつも一緒なんだろうし、隠すことなんてないはずだ。
それにしても、二回目でも女の子と一緒の部屋で寝るなんて落ち着かない。
あのキャラとか、よくこの状態で寝れるよなぁ。
ってことで朝だぞ
「おはよう」
「おはよう明緒くん」
うん、いいな、なんか新婚さんみたい。
「今日から『心の勾玉』を探すのね?」
「そのつもりだよ」
嬉しそうに飛ぶハオ、パンツ、見えそう。でも見えない。(不思議な力が働いてるとしか思えない)
「今日は金曜日だしね、土日は学校の外にいる女の子をあたってみようかなと思ってる」
「本当にありがとう」
可愛いなぁ、美人ではないけど愛嬌がある、見ていて飽きない。
「俺もとりあえず片っ端からバイト先探してみる、じゃ、行こう」
俺とハオは一緒に登校した。
今日も校門になぎさ会長はいて、すんなり通された。
さて、今日から『心の勾玉』探しだけど、多分システム的に一か月で出会うのが難しい女の子が持ってるってそんなにないはずなんだ、沙織と、ハオ、あと誰か多分バイト先に、おっ、楽勝じゃん。
ちなみにここ一か月のスケジュールは、学年クラス対抗バレー、文化祭事前会議とけっこう忙しい、テストがないだけ楽だろう。
ってことは文化部の沙織なんか忙しいだろうなぁ。
昨日教えてもらってわかんないことあったんだけど、聞くの悪いかなぁ。
とにかく頑張らないと。
昼休みまでなんもない、昨日の今日でまた沙織に聞くのも、う~ん?
「どうしたの?」
え?沙織が向こうから話しかけてきた、なにこれ奇跡?レアイベント?
「ノート落としたわよ?」
ハオだな、あのおせっかいめ。
「見ていい?」
「いいよ」
沙織の指が止まった、俺のわかんなかったとこだ。
「あ、ひど~い。ここ昨日教えたのに間違ってるよ?」
やっぱり怒られますよねぇ。
「……だからほら、教えて?」
「え?」
「教えるって勉強になるなよな、沙織」
俺は苦し紛れを言った。
「へぇ、誰か教える友達いるんだ」
沙織はちょっと嬉しそうだぞ。いいぞ、いいぞ。
「う~ん、今日はちょっと忙しいから、土曜日は?」
よっしゃ!あ、土日はまずかったんだった。
「土日バイトとかなんだ俺、沙織、他は?」
バイト、まだ決まってないけどな。
「じゃ、火曜日は?毎週火曜日ね」
「わかった、毎週火曜日、図書館で」
なんという重要イベント!俺は神器を取り出しスケジュールを入力したのは言う間でもない。
言い忘れたけど、今日の念ならハオに入れてもらってるぞ、ピクともしないけど。
ここぞというときに、力を貸してくれる。
俺の脳内で世界とハオの危機を救うかっこいい俺のイメージがむくむくと広がった。
「……どうしたの?」
「あ、いや、じゃあね」
ところがこの神器、それから、なんで?って時に力を貸してくれたんだ。
お昼もハオと一緒、帰るのも。
これが日常になるのなら、バットエンド一回見てみようかとも思ったけど、よくよく考えたら世界が滅ぶので真面目にやりましょう。
ってことでネットでバイト探し、いいのないなぁ、う~ん。
「おふくろ、どっかでバイト募集してない?」
夕飯時俺はお袋に水を向けてみた。
「あら、私いつもいくスーパーで高校生可の募集があるわよ」
「えっ、とりあえずそれでもいいかな?」
その日携帯で電話したら「じゃあ、明日昼一時に面接に来れる?」って言われた。
こうほいほい物事が進むのもギャルゲーっぽいよな、うん、いい。
しかし、ハオと一緒の部屋で寝ることだけはなれることがないのだった。
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