第11話 なお、俺の勉強コマンドは壊れてる
眠気と戦う午後もなんとか終わり、やっと来ました放課後。
「じゃあさっそく『心の勾玉』探してくれるの?明緒?」
「あ、今日は沙織と約束があるから、それに沙織が『心の勾玉』持ってないとも限らないし」
俺とハオは学校の図書館へ向かった。
「ハオ、図書館では静かにな」
俺はどきどきしながら静かに図書館の戸を開けた。
好きとか嫌いとか最初に言いだしたのはだれなんだろうね?いや、俺は沙織のこと思春期になってからちょっと避けていたってのもあるけど、それをいうなら向こうだって。
なお俺のステータス的には学校の成績よりもっと大事なものってあるよなぁとしか言えない、運動は、うん、どうしよう。クラブ?特に入ってない。まぁ今の感じだと沙織は多分無理だし隠しキャラに願いを託すしかないと思っていたら、ハオに出会ったんだったな。
ハオに出会ったことで俺のやる気が上がり、沙織攻略可能までステータス上がる可能性まである、それはさておき。
俺はそおっと図書館の戸を開けた。沙織が静かにゲーテの詩集を読んでいる、絵になるなぁ、じゃなく、声かけなきゃ。
「沙織」
俺の声うわずってないよな?
「あっ、明諸くん。ちょうどよかった、ここ、どう思う?」
沙織はそう言って詩集の一節を差した。俺はかがんでそれを読む。
俺は成績ガタガタだけど、理解出来る範囲で言うと……。
「すごい繊細な人だねぇ、でもなんかオーバーだし、面白いな」
としか言えないけど、沙織は沙織で
「え?そうかな、こんなに思ってくれたら嬉しいなぁとか思うけど……」
って、あからさまに嫌な顔されたんだけど。
まぁ今の沙織の俺に対する好感度ってきっと「ちょっと眉が下がった嫌そうな顔」なんだろうな、わかっているけどさ、あ~ぁ。
でもだったらなんで今日は付き合ってくれたんだろう?
「友達と一緒だったから、冷たい人だと思われたくなかったのかも?」
ふわふわ浮いてたハオが、逆さになって俺の顔を覗き込んできた。
「うわっ!!」
「えっ?何?」
俺の驚いた顔で沙織まで驚いてしまった、やべぇ、ハオのこと忘れてた。とっさに俺は出まかせを言う。
「ポケットに入ってた携帯のバイブがなったんだよ。ちょっと出てくる」
俺はそう言って神器を取り出し、ハオに目配せして一旦図書館を出る。
「とにかく邪魔しないでくれ!頼む!」
俺はみんなに見えないハオに土下座した。通りがかる人は皆けげんな顔。
「えぇ?せっかくアドバイスしてあげたのにぃ?」
ハオはすっかりふくれ面。
「でも急に話しかけるのはやめてくれよ」
「うん、わかった」
ハオはちょっと落ち込んでいる、言いすぎたかな?
「急にじゃなきゃいいのね?」
にっこり笑顔で言われてしまったぞ、おい。しょうがない交渉するか。
「アドバイスがあるならその都度じゃなく、その日の夜にってのはどうだ?」
俺は譲歩した、ハオのことは嫌いじゃなくても、ハオ以外の娘といい雰囲気になったときなんかにひょっこり顔を出されたらたまったものじゃないからな。
「でも、私、時間は戻せないよ?」
「え?」
そうだった、ハオは心が読めるから、今俺がちらっと「ダメだったらロードすればいいや」って思ったのもわかってるんだよな。
「だから、言えることは言った方がいいと思ったんだけど」
意外な指摘に俺は「それはそうだけど」とほとほと困り果てて、しかたなくこう言った。
「とりあえず図書館では静かにな、後の事は、帰ったら考えよう」
「わかった」
それから俺は、沙織にいつ使うのかわかんない数式や謎の定理についてならった。
なんだか、数学について詳しくなったきがするなぁ。
そのあと沙織から意外なことに
「こうやって教えてると分かる事もあるから、たまにだったら、また教えようか?」
と言われてしまった、やったぜ。
え?神器で写真?手を繋ぐ?図書館じゃ無理だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます