え、これゲームじゃないよね?
第10話 世界の危機と心の勾玉
そんなこんなで昼休み。
ハオがいるから俺はぼっちじゃないぞ。ってことでお袋が作った弁当どこで食べようかな。
とりあえず屋上へ行こう。
しかし女の子と一緒に弁当なんて、それなりに好感度ないと起きないイベントじゃねぇの?こうなると専用スチルがほしいなぁ。
「お昼にしようかな」
ハオが心が読めるんだってこと、俺以外に見えないんだってことをつい忘れそうになるけど、かといってなんとな~く話さないわけにもいかないような、う~ん。
あ、だからあんなにギャルゲーの主人公ってひとり言多いのかな?とか思ったり。
とにかく腹減った。
「この辺で弁当にしようかな」
俺は適当に腰を降ろす。
「ところでさ、別に神器ってさ、実は世界の危機とかの時にしか現れないとかそんなことないよね?でさぁ、俺はうはうはなんだけど、世界の危機を救うためには色んな女の子と知りあってとかで、なんかすごい化け物が現れて、君は世界を救うために力を使い果たしてしまって、遠いどこかでまた会うんだろ?」
屋上の柵に腰かけたハオに俺はずっと聞きたかったことを聞く。
だってそういう展開ってけっこうありがちだったりするんだけど……
「うん」
「うん?!」
予想してたようで予想外の答えに俺は危うく弁当のチーズちくわを落とすとこだった。
「それって今世界の危機ってこと?」
「うん、そうみたい」
「そうみたい?」
うわぁ、なんだこの展開、アニメとかゲームならわかるがマジですか?
「……マジ?」
「お稲荷様が私にうそつくわけないもん」
うわぁ、マジだったんかい。
でもまぁそんなこともあろうかと、俺の小さいころの仮面ライダー変身ベルトが再販されたから買っといたんだけど。
「あれ、本当にいるの?」
そういう話じゃないんだろうなぁ。
「じゃぁ世界の危機はほんとうで、それを救うのになぜか俺が選ばれた。道具はこの『神器』、なるほど」
「選んでないの、完全ランダム」
「え」
ある意味今日一番ショックなことをわりと冷静に言われてしまったぞ。
「神器はねぇ、今あるこの世界の危機を救うこともできる。でも、しなくってもいいんだよ。契約は契約、明緒くんはこのまま神器の力を使って女の子とたのしくやってればいい」
「それで君はどうなるの?」
俺の予想が正しければ、ハオはなんか隠してる。無理はさせないようにしないと。
「別な契約先を探すけど?」
よしっ、これでだいたいわかった、これはハオルートの分岐点だ。となると俺のやるべきことはただ一つ。
「で、何をすればいいの?」
当然のように選択肢を選ぶことだった。
☆
ハオは屋上の柵に座りなおして、ゆっくり口を開いた。
「お稲荷様によればね、今の世界人間の欲望は肥大しすぎてしまった、このままでは『祟り神』が出るんだって」
俺の頭にゲームのラスボスが世界を闇に覆いつくすイメージが現れた。
それにしてもあぁ、屋上の柵に座るハオ、風になびく髪、綺麗なビジュアルだなぁ。
思わず携帯でパシャッ、とやってしまったぞ、しまった。
「きゃっ!何するの?」
「あ、写真を撮っただけだよ、続けて」
「……写真?うん、わかった」
水入りになったけど、なんとか専用ビジュアルゲットだ、これから前もって断らないとな。
「でね、『祟り神』を鎮めるには、『心の勾玉』が必要なんだって」
なんとか立て直してハオは続けた。
「でね、『心の勾玉』を宿したのは三人の女の子、この辺にいるみたい。明緒は『心の勾玉』を持ってる女の子を探したら、そのこと心を繋いで……」
俺はごくっ、と唾を飲み込んだ、そうか、ついに俺も大人の階段を登る日が来たか。
「手を繋いだら、神器に『心の勾玉』が入るから、三つ集めてね」
がくっ、そこはせめてキスとか、もっとこうアダルトな何かでもよかったと思うんだけど、まぁそういうシステムならしょうがない。多分全年齢版なんだ、これ。
「ところでさ、『心の勾玉』?持ってる女の子って見てわかるの?」
システムはちゃんと聞かないとな。
「あ、えーっとね、その女の子の写真を撮って、勾玉みたいな光が写ればそうだって。あ、でもさっきみたいに急になんか駄目なんだから」
めっ、怒られてしまった、いいなぁそういうのも。
「わかったわかった、期限とかはあるの?」
そういうのも聞いとかないと、
「一か月……」
そんなにっこり一か月って……うわぁ、けっこうきついなぁ。
「そうか、ありがとう話してくれて、俺、やってみるよ」
俺は快諾する、男十六、そうやすやすと女の子一人に世界を救う重責を背負わせてたまるか。
それにそうすればハオとも……ぐふふ。
「あ、肉団子食うか?」
「食べる!」
俺とハオはそれから仲良く屋上でお弁当を食べた。
うん、やっぱりこういうイベントこそギャルゲーの肝だな。
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