第7話 学校へ行こう
次の日、明緒が目覚めたらお稲荷様の使いはどこにもいませんでした。
PCにあの神社の名前を入力してもなんにも出てきません。
ネットで確認したら1万六千円分残金は減っています。
なのに机の上には落ち葉一枚。
どうも昨日は狐に化かされていたようです。
欲張りはなんにもいいことない、というお話でしたとさ、とっぴらぴんのぷう。
……てなことを昨日の夜ちょっとだけ考えたけれど、翌朝机の上を見たらちゃんとiponeによく似た『神器』が置いてあった。
契約書を印刷したものもある。
「……おはよう、ハオ」
俺はトントンと押し入れの戸を開ける。
「おはよう、今日は丁稚先を探すのね?」
ハオが眠い目をこすりながら押し入れの戸を開ける、やっぱり、夢じゃなかったんだ。
「うん、学校に行って、帰ってからバイト先を探そうかな」
「働きながら勉強するなんて、きっと明緒は長者になれるね」
俺のパジャマを着たハオが押し入れから出てくる。昨日は俺のパジャマを渡したものの、女の子の着替えを見てはいけないと(すげぇ見たいけど!)慌てて部屋から出て、女の子と一つ部屋だってことだけで興奮して、結局いつ寝たんだかって感じだったなぁ。
にしてもだ、
「なぁハオ、学校、行きたくないか?」
俺は昨日眠れない瞳でずっと考えていた。
ハオは尋常小学校しか出てないってことは、きっと教育レベルはあんま高くない。
でも昨日接してみてわかった、ハオは人間を知りたがっている。
その他の、色んなことも。
この二つを叶えるためにもぱっと見は同世代だし、なにより俺以外には見えないんだし、一緒に学校、行ってみるのもいいんじゃないかなぁ。
「え、いいの?」
ハオが喜んでいる。
じゃあ、ちょっと着替えるね。あ、朝ごはん、お供えしてね?」
「いいよ」
う~んいいなぁ、今日から何度も夢に見た「女の子と一緒に登校」だ、やったぜ。
これも神器の効果かなぁ?昨日はどうせ寝れないから、あれから神器で俺の魂のゲームから「なんでこんなの製品化したんだ」といいたくなるような愛すべきク◯ゲーに至るまで神器で検索しまくったから、ちょっとは神器にも「そういう知識」がついたのかも。
あ、でも。というのは嘘で、実際は俺の実力で。
俺はまだ本気出してないだけで、よくいるギャルゲーの主人公みたく、今から本気出せば、ノーベル賞やら芥川賞、インターハイ出場、その他もろもろ。
……長者ってのはないけど、ハオの言ってることもあながち間違いじゃなかったり。
ハオが着替えるのを扉の向こうで待ちながら、俺はそんなことを考えていた。
☆
さて、朝ごはんを食べて支度をしたらお楽しみ一緒に登校タイムだ。
「えへへ、学校楽しみだなぁ」
ハオが浮きながら俺についてくる。う~ん、いい。
このなんともいえず90年代な感じ、って言っても俺その当時の空気とかわかんないけど、『初代ときめきメモリアルヒットした時ぐらいに、今は倒産したゲームメーカーによってつくられたギャルゲー』っていったらわかってもらえるだろうか。そんな感じ。
「ね、神器、昨日いじってたよね。操作方法はもうわかった?」
ハオが神器について俺に話しかけてきた。
「だいたいな、ま、iponeと一緒だ」
俺は結局乗り換えではく新規契約した。だってこれってあくまで携帯の契約ではなく神様との契約だから、今んとこ、俺が契約するのはお稲荷様しかいない。
「召喚っていうのかな、主人公になりきるの、どのアイコンかちょっとわかんなかったけど」
俺がどんなにいじっても、神器のアイコンによく特撮であるみたいな「いかにも」なアイコンは見当たらなかった。
「あ、それ?それはねぇ」
ハオに神器を渡すと、ピッ、と光が灯り画面が変わった。
「ホームにじっと手を当てて、念を送るの」
「念、ねぇ……」
信じて夢見る心みたいなものかなぁ。
ハオから神器を渡されて、やってみる。
「できればもうちょっとイケメンで女の子にもてて……そういう主人公に……」
俺はそこでハタと気付いた。
「あ、でもこれって、ドラえもんでいうところの『道具でモテても意味がない』オチになりそうだな、これさ、一日何回とかあるの?」
集中をやめて俺は言った。ドラえもんなら俺は全巻持ってたからわかる、日本昔話でも、だいたいこういうのってそうだったりしないか?
「……わかんない。だって神様は気まぐれだから、一回で疲れちゃうときや『もっと褒美をやろう』って時があるみたいだし」
「わかんないのか、まぁハオは神様の使いで神様そのものではないしなぁ」
と、いうことはあんまり無駄遣いはできないな。
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