第6話 新規で神器を契約のお客様へ
ふと机の上には携帯みたいにさりげなく置かれた神器、
「そういえばこれって充電しなくっていいの?料金は?あと契約したらって言ったけど、どうやって契約するの?」
神様に鳥居とかを奉納するって話だってあるし、神器の通話料金やなんかが無料とは限らない、これだって結構大事な話だ。
「あ、えっとねぇ……」
ハオはまだ慣れてない携帯電話店のアルバイトがするみたいに、つっかえつっかえ説明した
「あのね、順を追って説明すると、まず気をいただくためにも『充電』は必要で、アイポーン?向け充電器が必要です」
とすると充電器は買わなくっちゃ駄目だな
「月額料金は一万六千円ぐらいだったかなぁ……確か詳しいサイトってのがあったとおもったんだけど」
「サイトがあるの?」
料金がそれなりにリアルなお値段なことより、俺はそっちに驚いた。
「うん、なんかねぇ、『これからの時代にあわせて』ってお稲荷様が作ったの、でもあんまりお客さんっていうの?『アクセス』がないみたいで、なんでかなぁ、えっと、どうやって出すの?」
「あぁそれね、ほらここに、そのサイトの名前を入れて」
俺はGoogleの検索窓を開いた、ハオはなんだか聞いたとこない神社の名前を入力。
「ほら、これ」
検索結果をクリックして見ると一見なんでもないような、いかにも「素人が作りました」的な昔ながらの個人HPみたいなサイトが一つ、ポツンとあった。
「五穀豊穣、家内安全……う~ん、どう見てもただの神社のHPだ」
ハオは俺に事情を説明した。
「あのね、前はあそこお社だったの、そのまた昔は神社だった……その名前でやってるの」
「神社がつぶれるなんて聞いたことないなぁ、まぁでも、そうなんだ」
狐耳を伏せてハオがしょげているから、きっと深い事情があってのことだろう。
「でねぇ、ほらここに『お供え』ってあって、ここの鈴をクリックすると」
ハオは自分のいたところだったからか、軽快にマウスを操る
「神器の料金説明が出るよ、あ、契約もここから」
俺が欲しい欲しいと思いつつも二の足を踏んでいたiponeの契約画面とよく似た画面が現れた。ちょっと待て、一つ大事な問題があった、俺がiponeを買わなかった最大の理由が。
「……本音をいえばこれ、神器?すげぇ欲しいよ、でも料金が……」
月一万六千円なんて俺の小遣いじゃ無理だ、おふくろに頼むのも気が引ける、前なんとなく言ってみたら
「携帯なんて話せりゃいいじゃないの、ネットに繋がる?ネット依存にでもなったらどうすんの。どうせゲームでしょ?」
と全く耳を貸さなかった
「お金がないなら働いたらいいじゃないの、お稲荷様を信仰して明緒と同い年ぐらいから働いて、長者になった人もいるよ」
「長者から離れようよ」
俺はちょっとだけイラッとしながら言った、ハオに悪気がないのはわかるけどさ。
「明緒も長者になれるよ!だってわたしがついてるんだもん」
ハオはぐっと両手を握って無邪気にこう言った、
「まぁ確かに、アルバイトぐらいだったらなんとかやってみるかなぁ……」
流されているのは自分でもわかる、でもこういう時ってだいたいギャルゲーとかでもアルバイト先でも女の子との出会いがあって、しかるのちムフフ。
「そうか、明緒はお嫁さんが欲しいんだ」
「な!」
今のは読まれて恥ずかしい心だ。
「良縁成就も問題ないよ、わたしに任せて。明緒は安心して丁稚奉公や勉強に集中してればいいよ」
そういうハオの笑顔はちょっとたよりないけど、お稲荷様の使いにそう言われるとちょっとだけ頑張ってみようかな、って気にもなる。
「丁稚奉公じゃなくてバイトだけどね。まぁそれはおいおい」
俺は一旦ブラウザを閉じた、三万ぐらいだったら、なけなしの小遣いからコツコツと貯めたのがあったなぁ。
「……契約しないの?」
ハオはちょっと寂しげに俺に聞いてきた。
「このサイトよく見たら『18歳以下は保護者の同意が必要です』って書いてある、待ってろ、夕飯喰いながらおふくろ説得してみせる」
俺はハオにそう言ってPCのデスクを立った、もうすぐ、おふくろが呼びに来る時間だ。運ぶのぐらい手伝って機嫌を伺うか。
「サンマ、忘れないでね」
ハオは俺の部屋で待つことにしたらしい、色々とみられてやばいものとかもあるし、そのうちなんか考えないとなぁ。
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