第4話 名前を教えてね

「じゃ、まずYoutubeで軽く俺の魂のゲームについて学ばせるか」

俺は早速、検索窓に……


「その前にお腹すいた~」

はにゃあ、とでもいいたさそうにお稲荷様の使いが倒れこむ。


「最近だれもお供え物してくれないんだもの~」

「自販機のとこに前あったって言っただろ?もうお供えなんかできっこない」

俺が笑うと


「お社はちゃんと移動してくれたんだもん!でも誰も来てくくれない……ときどき子供が、大事そうに飴なんかお供えして、『仮面ライダーになれますように』とかいうだけ。お腹、空いた……」


ぐ~、お腹の鳴る音がする。

「だから時々自販機のとこに行くの、そうすると『あたり』の一本を取り忘れる人が時々いて、わたしメロンソーダ大好き!」


「なんともはや、食生活が思いやられるなぁ」

俺はPC前から移動する、確か冷蔵庫に油揚げがあったような……


「え、油揚げ嫌い~!」

言う前に苦情を言われた。

「お稲荷様の使いと言えば油揚げってまず決まってるんだけど、嫌い?」

また俺の考えを勝手に読まれた、まぁいいけど。


「なんでだか全然わかんないけど油揚げばっかりお供えされたから見るのも嫌になっちゃった。好きな食べ物はねぇ、生麦、生米、ひえとか粟とかそういう五穀、あ、お餅もいいかも」


 お稲荷様の使いの表情がころころ変わって面白い

「神前にお供えするみたいなやつな」


 俺は納得する、お稲荷様の使いは瞳を輝かせた

「他の人間の食べ物にも興味あるよ、飴じゃないメロンってどんなんだろう」

玄関のチャイムが鳴る、


「あ、は~い」

「タイタイ軒せ~す、ハオ担々麺一丁まいど~、880円ね」

あやしい言葉遣いの店員がおかもち片手にやってきた、


「もう?早いなぁ」

「安くて早くて旨い、これショウバイのヒケツね」


俺はハオ担々麺みたいな辛い物は苦手だけど、憑りつかれていたとはいえ俺の手で神器から注文してしまったものはしかたない、しぶしぶと自室に戻り、バックから財布を取り出して千円札を店員に渡す。


「まいどある、どんぶりは玄関先に出しておけばヨロシ」

おつりを渡されて思う、これ、どうしよう


「いい匂い、食べないの?」

お稲荷様の使いがおかもちを開けて、どんぶりを持ち上げ匂いを嗅いでる


「君食べる?」

「食べていいの!」

お稲荷様の使いは瞳を輝かせる。


「明緒ー、なにやってんのー、おなかすいたんなら食パンでも焼いたらいいのにまったくもう、出前なんかたのんで。まぁいいわ、夕ご飯はサンマよー」

台所からおふくろの声が聞こえた。


「……相変わらず地獄耳だなぁおふくろ、わかったよちゃんと食べるー」

「サンマ!」

お稲荷様の使いはきらきらの瞳で俺を見つめてる。かわいい。


「……わかった、神棚にもあとでお供えするから、とりあえずハオ担々麺、喰うだろ」

「うん!」

能天気な笑顔、いい、880円ちょっときついけどその笑顔のためにたまにだったら美味いものをおごってやりたくなる。


「触れないのに食えるのか?」

俺の素朴な疑問にも

「食べ物からね、『気』を戴くの。美味しいものの『気』はちゃんと美味しいから、お供え、ちゃんとして欲しいなぁ……なんて」


自分の欲求を伝えつつ、ちゃんと答えてくれる、初対面のときも思ったけど、うん、いい子だ。

「じゃあ俺の部屋で喰えよ」


俺は自室に向かいながら、もう一つ気になっていたことをお稲荷様の使いに言った

「それとさぁ、やっぱりなんか名前考えようよ、いつまでも『君』とか『お稲荷様の使い』じゃあやりにくいこともあるかもしんないし」


「うん」

お稲荷様の使いは素直にうなずいた。

 あぁ、これで触れたらなぁ。

 俺は心を読まれるってことも忘れて、ちらっとそんなことを考えた。

 

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