第12話
「ねえねえ、なっくんのテスター・・・えっと、シロ君? 美人だねえ。キメラ様カラ―じゃん」
「え・・あ、うん。初めてみた時見とれちゃったよ。あ、このあたりから罠があるらしいから気を付けて」
大きな山犬の身体に、頭から背にかけて生えている炎の鬣。小さな灯の尾をもつ<流動>・・・粟に乗りながら、にこにことホウコは言った。片手にロープを持ち、首にぐるぐるとシロを巻きつけたナガメが足を進めながらも照れ笑う。
孔雀の尾に3つ目の白いカラスである<多彩>を肩に乗せたショウゴと、ゆらゆらと歩くたびに揺れる触手の尾を持った白猫<千手>を足もとに歩かせながら、コヒラはナガメとホウコの前を歩いていた。
「そういえば、シロ君てなんの
「・・・何も」
「え」
「何も、使えないんだ」
粟に揺られながらきょとんとした顔をさらすホウコに、ナガメは苦く笑って見せる。魔技。野生の魔物やテスターが少なくとも1つは使えるはずのそれが、使えない。それは野生にとって致命的なはずだが、ナガメに出会うまで、シロ一体どうやって生きてきたのだろうか。
気遣うようにしゅるしゅると首に巻き付いたシロが動いたかと思うと、首を持ち上げてちろちろと炎のような赤い舌でナガメの頬をなめた。
慰めるようなそれにナガメが小さく笑っていると、ショウゴが横槍を入れる。
「はっ!テスターまで落ちこぼれなのかよ」
「だから落ちこぼれじゃないってば!」
「おれのことはいいけど、シロを悪く言わないで」
今まで一度も言い返さなかったナガメの反抗に驚いて目を見開くショウゴ。
何か言い返そうと口を開いた瞬間。
くんっと足に何かが引っかかったのを感じた。
「てめ・・・え?」
「なによ?」
「どうかしたのか」
「なに・・・って、伏せて!」
最後まで言い終わらないうちに、目の端をちらついた銀色。ものすごい勢いでナガメ達の方に向かってくるそれに、とっさにナガメは叫んだ。
さっと皆が地に伏せると中、ひゅんひゅんと音を立てて矢がナガメ達の上を通り過ぎていく。
「あっ・・・ぶねー」
「この辺罠エリアだって言ってたじゃん! 用心してよ!」
「うるせーな、たまたまだろうが!」
「動いちゃだめだ!」
「は? うお!?」
ほっと胸をなでおろしたショウゴに食ってかかるホウコ。若干涙目なところが彼女ッが恐かっただろうことを示していた。
コヒラは何も言わず震えるテスターを抱き上げていて、ホウコに言い負かされたショウゴがもう一歩踏み出そうとした途端。
ナガメはショウゴの足元に光る一本の線を見つけた。が、警告した時には遅くショウゴはそれに引っかかった。
途端。
ショウゴを中心に足元で魔法陣が展開され、発動した。そして、魔法陣内の足場が消失した。
つまり、ナガメ達の足場がなくなったのだ。
ふわりと浮いた身体。思わずナガメは地上に手を伸ばすが当然届きはしない。
そのまま先も見えないような深い穴の中に、ナガメ達は吸い込まれるように消えていった。
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