第11話

 そこは見たこともない場所だった。


 どこかの城に迷い込んだような紅水晶で出来たロココ調の壁、ところどころに大きく隆起した紅水晶。天井も紅水晶で出来ており、なぜか白い光が乱反射して内部を神秘的に照らしていた。きらきらとあちらもこちらも輝く紅水晶に囲まれた場所だった。振り返ると、重厚な木造りの扉があり、ここが迷宮の入り口であることがわかる。


「綺麗だね」

「紅水晶の城っていう遊戯迷宮だね、今日は貸し切りで私たちだけなんだって」

「なんでもいい。お前らの課題は何だよ」

「俺はイーサ草だ」

「私は鈴生草」

「おれは魔石。鈴生草とイーサ草ってことは地下4階まで潜ればとって来られるね」

「俺も魔石。ちっ落ちこぼれと一緒かよ。拾える奴でいいんだろとりあえず行くぞ」

「待って」


 一歩踏み出そうとしたショウゴをナガメが止める。怪訝そうに振り返ったショウゴが見たのは、背負っていた緑のリュックサックを地に置き、中から地図を取り出すナガメだった。

 当然地図を取り出し広げたナガメに、ホウコとコヒラも目を丸くする。


「なにやってんだ、お前」

「マッピングを。それと罠が仕掛けられやすいとことか、過去に仕掛けられてたところとか書いてきたんだ。1枚しかないけど、見といて」

「なっくんすごい」

「お前、やるな」

「ちっ・・・わかった」


 こればっかりはショウゴも反対せず、4人で地図をのぞき込む。


「赤いのが今いる入り口部分。緑が過去に罠が仕掛けられたところで、青で囲ってあるのが仕掛けられやすいところ。ここの罠は大体2段構えになってることが多いみたい、だから」

「気をつけなきゃ、だね!」

「わかった」

「・・・落ちこぼれが仕切ってんのはむかつくが、わかった」

「だから落ちこぼれじゃないってば!」


 赤、緑、青と示しながら説明したナガメに素直に頷くコヒラとホウコ。ショウゴだけは憎まれ口をたたきながらも了承して、ホウコにかみつかれていた。さらにごそごそとリュックサックをあさり、中から黒ペン、グローブを手にはめて、杭、ロープ、金槌を取り出すナガメ。


「なっくん、それどうするの?」

「帰るときにわかりやすいように、ここに杭でロープを刺してって、それを持ちながら行こうかと思って。そうすれば失敗したとしても何回でも入り口からやり直せるし」

「お前・・・」

「ちっ」

「なっくんすごーい!」


 知り合いの冒険者がいて、そうするといいって言ってたんだと照れ笑いながらナガメは邪魔にならない隅の方に杭を穿ち、ロープを張る。そのまま金槌はそこに置いておいて、中身のだいぶ軽くなったリュックサックを背負い直す。ナガメは3人を振り返った。


「一応、それぞれテスター出してから行こうか」

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