第7話 ドッチボール事件3
/決戦終幕
◇◇◇
体育館を後にすると、池上君が待ち構えていた。
校舎の壁に身を預け、腕を組んでポーズを取っている。
滑稽さを通り越して逆に格好良く見えるのだから不思議だ。
「お疲れ様」
私は正義のヒーローだか悪のボス役だかわからない、とにかく主人公であることには変わらない――と本人は常に思っているだろう――彼に声をかけた。すると待っていたと言わんばかりに、池上君は額の前に指を立て挨拶をする。普通にこういう恥ずかしいポーズやら仕草ができる彼に拍手を送りたい。
「猪狩嬢、我々の負けだ。いや、見事だった。全く、賞賛に値するよ」
両手を仰々しく広げ、降参のジェスチャー。相変わらず台詞といい動きといい、いちいちが芝居がかっている。前からこんなに激しい人だったかなあ。イベント事になると、拍車がかかるというか、スイッチが入るのかも。もしかしたら池上君は舞台俳優なんかに向いているのかも知れない。
「まあ主に牛飼の働きだけどね。みんなの勝利だよ。私は特に何もしてないし」
「何もしてない、か。それは違うぞ猪狩嬢。君は優秀な指揮官だ。指揮するものがしっかりしているからこそ、兵士はまとまり、ついてくる」
「まさか。私にはそんな器量はないよ」
「謙遜しなくてもいい。
ところで猪狩嬢、君は戦術と戦略の違いがわかるか?」
「戦術と、戦略?うーん、戦術は一個の戦闘における戦闘力の使用法で、戦略は戦術を束ねた総合的な作戦計画、かな」
「ふむ、辞書的解釈はまあそういうところだろう」
「辞書的じゃない解釈をして欲しかったの?」
「いや、そうではない。猪狩嬢――いや、ここは尊敬の念を込め女史と呼ばせてもらおう。猪狩女史、そもそもドッチボールには戦術しか存在しないのだよ」
「と、言うと?」
「わかるだろう。戦術とは試合に勝つ為の陣形や運用だ。そもそも連戦を催す公式戦などではなく、たかだか体育の授業の一環だ。長期的に組まれた――そうだな、例えばクラスマッチのような幾つかの戦闘を考慮した場合、或いは戦略的要素は必要かもしれん。が、これは刹那で終わるワンゲーム。そもそも戦略など必要がないのだよ」
「刹那って一瞬だと思うけど」
「比喩表現だ。話を逸らすな。単刀直入に聞こう。猪狩女史、君の目的は何だ?」
「何って、どうせ勝負するなら勝ちたいなって思っただけだけど。それって普通のことじゃない?
それに目的があるって言ったら、男子達の方じゃなあ?」
「ふん、あれは所詮は戦術目標に過ぎん。しかし同時に崇高たる使命だ」
「……男子って、馬鹿だよね」
「誉め言葉として取っておこう。しかしそれすらも君の計画の内だった。俺はそう分析している。我々の戦術目標は“女子を愛でること”にあった。ならば、君の戦略目的はどこにあった?」
ふぅ、と息を吐いて気持ちを整理する。さて、なんと答えたものか。池上君も何も考えていないようで、実はいろいろ見て、考えている。私の行動も何かしらの意図、他意があったと思われても不思議はない。別に私は事情を全て話してしまっても問題はないが、黙っていた方がいろいろとおもしろいかも知れない。さて、どうしたものか。
「女史、君の戦略には何かしらの意思が見え隠れする。それが何かまではわからないが、違和感は拭い切れないぞ」
「違和感かあ。確かに、試合に勝つこと以外に私の目的はあった。あなた達みたいにね。でも、私が何か企んでいるって、いつからわかってた?」
「ふん、そんなものは最初からだ。猪狩華花がクラスを仕切ったホームルーム、その時点でイレギュラーは発生していたのだよ」
「すごいね。それだけでここまで想像できるんだから」
「俺の想像力を甘く見てもらっては困るな。いろんな意味で。
猪狩女史、この計画は、どこから仕組まれていた?」
「どういうこと?」
「言い方が悪かったな。ドッチボールを仕組んだのは君か?」
驚いた。まさかそこまで読まれているとは。
「これは憶測の域を出ない話だがな。しかし、情報は操作できても人の流れや繋がりは隠しきれんよ。戦術の要は人間、戦略の要は情報だ。しかし、情報の要もまた人間だ。君が生徒会や数学教諭の高松に掛け合ったという情報もある。内容までは掴めなかったが、おそらくそれによって体育館の確保、体育教師筋肉の操作、及び男女混合の授業の実現、その全てを行った。全てはドッチボール対戦を設定する為に。違うか?」
完敗だった。
その通り、私は“先生”を使って事態を動かした。先生と体育教師は大学の知り合い(師弟関係で、先生がパシられていたが、筋肉も先生の言うことはよく聞く)だと前に聞いていたし、生徒会にもラインを持っている。
全ての計画は、長瀬君が私に相談に来たあの夜に始まった。長瀬君と別れたあと、先生にお願いしたのだ。(その日は家に両親がいなくて、先生が泊まって行ったのだけど、それはまた別の話。こそこそしている先生がかわいかった。)
先生を通じて学校の情報は入って来る。だったら、あとはその情報をどう使うか。私は生徒会に手を回し、グラウンド整備の時期を2週間早めた。名目は天候と、クラスマッチに備えて。天候については確証はなかったが、色々とこじつけて言いくるめた。
必然的に体育の授業の場所はサブグラウンドか体育館に限定される。そして全学年の時間割の都合上、私達のクラスは男女合同でやるしかなくなる。別の学年同士で男女分けられる可能性も少しはあったが、それも先生を通して筋肉に釘を刺しておく。体育科で一番発言権を持った筋肉だ。これで条件はクリアされる。あとはドッチボールをやるようにと先生に筋肉を誘導してもらい、私がホームルームで男子対女子のルールを宣言するだけ。
ちなみに筋肉が最初に牛飼に仕切るよう促したのも、私の差し金である。先生に「牛飼にまかせとけば大丈夫ですよ」とか筋肉に言ってもらっておけば、単純な彼は牛飼を指名する。最近腑抜けっぱなしの牛飼だ。主導権を私が握るのは容易い。みんな牛飼が仕切るとなれば安心して気を抜き、自分で考えたり事態を動かしたりはしなくなる。池上君が予想以上に乗って来たのは、それこそ“イレギュラー”だったけど、それも結果的には良い誤算となった。
とはいえ――ここまで読まれるとは。
今回の作戦で何が失敗しても、誰にも実害はない。私が計画していることがバレても、私にとってデメリットは発生しない。
しかし――しかしだ。私と先生との繋がりが漏洩することだけは避けたい。これだけは、卒業するまでずっと隠しておきたい。これは先生にも迷惑がかかる重大な問題なのだ。私と先生が付き合っているっていう事実、これだけは隠し通さなければ。
だというのに、目の前の彼、悪の指揮官のような池上啓介には見破られていた。これはマズい。下手な事を言ったら、藪をつつかれて、何を飛びださせてしまうかもわからない。
だったら、私が取るべき行動は、私が発するべき言葉は――
「妄想でしょ?」
誤魔化すことにした。全ては彼の抱いた壮大な妄想。そういうことにしておけば、私の行動も構想も幻想へと霧散する。何も実を持たないまま消え失せる。
あとは彼の返答次第。数秒の間を置いて、彼は口を開く。
「なぜわかった」
滑稽だった。何よりも、自分が。
私はおかしくて、声に出して笑ってしまった。なんだ、本当に妄想か、当てずっぽうか。
「笑うな。俺は真剣に考察してだなあ」
「ごめん、でも、おかしくって。すっごい妄想力だね」
私はお腹を抱えて声を出して大笑いした。こんなに笑ったのは久しぶりかも知れない。
「く、なかなかおもしろい推測だと思ったんだがなあ」
よかった。私が笑ったのが池上君の妄想に対してだと思ってくれたみたいだ。本当は自嘲の意味と、緊張感が解かれた笑いなのだけれども、うまいこと世界は回ってくれているみたい。
「しかしだな猪狩嬢」
池上君は少し恥ずかしそうに言葉を続ける。笑われたことがそんなに悔しかったのか。それにしても、なぜか呼び方が嬢に戻っている。
「嬢、これだけは言えるぞ。君の戦術――攻め方は長瀬慎吾を“残している”ようにも見えた。つまり、君の目的は長瀬対牛飼の構図――違うか?」
もしかしたら彼は天才なのかも知れない。私の筋書き、その全てを掌握された。妄想ではあるが。
「当たったってことにしてあげる。私はただ、牛飼に存分に暴れて欲しかっただけ。ただそれだけよ」
これは私の素直な気持ちだった。
「ふむ、なるほど。しかし解せないな」
「何が?」
「君程の指揮官が、そんなことの為に、戦線を張るのか?」
「そんなことじゃないよ。私にとっては、きっと重要なこと」
多分。きっとそれは、私が今まで感じたことのない、友情が動機。
「ふむ、君という人間が少しだけわかった気がするよ」
私も池上啓介という人間が少しだけわかった気がする。彼は常に道化を演じているが、実は一番聡い人間なのではないか。しかしそれでいて、常におもしろいことを求めている、妄想家。もしかしたら私の意図や先生との関係も全てバレているのかも知れない。でも、そこを言及しないのは、私に気を使ってのことか、それとも彼の“おもしろさ”の定義に似合わない内容だからか。後者のように思える。或いは、本当にただの大馬鹿なのか。これだけは言える。彼は利口ではあるが、どうしようもなく阿呆である、と。
「嬢、最後に一ついいかな?」
「なに?」
「女子の賞品の話だ。女子の中で活躍したものには、牛飼の乳を揉ませるという噂があった。あれは君の提案か?」
「うん、まあね」
「ならば、その情報を男子サイドにリークしたのも君か?」
「それは……ご想像にお任せしますよ」
「ふん、恐ろしい女だ。君は牛飼をどうしたいのかよくわからんな。しかし――いい夢を見せてもらったぞ」
親指を立ててグッジョブと満面の笑み。これだから男子ってのは……。だからこそ、そこにつけこんで勝てたわけだけど。
「それだけの力があるんだ、生徒会長にでもなったらどうだ?」
「まさか。柄じゃないし、向いてないよ。私は人を使うことはできても、率いることはきっとできない。みんなのリーダーなんかは、牛飼みたいなタイプが似合ってるんだよ。私はそうね、それを裏で支える参謀かな」
「操るの間違いではないか?」
「まさか」
「ふ……とにもかくにも、クラスマッチでは期待しているぞ、参謀殿?」
「そういう池上君こそ、文化祭で演劇でもやってみたら?結構合ってると思うよ」
「演劇、か。なるほど、おもしろそうだな」
怪しげな笑みを浮かべる彼。もしかしたらものすごく余計な事を言ってしまったのかも知れない。
「あ、そうだ池上君、私からも一つ、いいかな?」
「なんだ?」
「牛飼のこと、あんまり変な目で見ないでね。他の男子にも言っておいて。牛飼に不利益なことや、嫌なことしたら、私が許さないって」
「君が仕組んだのだろうに、全く、怖い女だよ、君は。重々承知しておこう。それでは猪狩嬢、アデュー」
格好良くポーズを決めて、踵を返す池上氏。ポーズがどんなだったかは敢えて描写しないでおく。ご想像にお任せします。
「池上君、あのさあ……その嬢とか女史とかやめてくれない?」
氏は不敵な笑みを浮かべる。了承してくれたかどうかは甚だ疑問である。結局のところ彼はおもしろいことを追求するエンターテイナーなのだなと諦めにも似た納得が私の心に芽生えた。
◇◇◇
放課後、牛飼に呼び出された。
ドッチボールですっきりしたとはいえ、少し身構えてしまう。相変わらずビビりの俺である。
でも俺だって牛飼に言うことがある。言いたいことがあるんだ。
放課後の体験館裏――まるでそれは告白イベントのようではないか。俺は少しだけ心臓の音が早くなるのを感じた。
「よっ」
ほどなくして、牛飼が来た。
いつもの制服姿。体操服姿がかわいかったなあ、なんて思ってしまう俺は馬鹿なんだろうか。体操服で暴れまわる牛飼を思い出しながら、制服もやっぱかわいいな、なんて考える。病気だなこれは。
「よう」
俺はなんとか平静を装いながら、挨拶を返した。
牛飼はニヤニヤと妙な笑みを浮かべたまま、喋り出した。内容は、さっきのドッチボール大会の感想とかだ。池上が口ほど活躍してないだの、男子にボールを思い切りぶつけるのが楽しかっただの、いろいろだ。
俺もつられていろいろ話した。牛飼の玉は殺人的威力だっただの、池上はやっぱり馬鹿でどうしようもないだの。
俺たちがいつも通りに、最近みたいによそよそしい感じじゃなく、今まで通りに楽しく駄弁っていると、突然会話が途切れた。沈黙に耐えられなくなった俺が次の話題を必死に探していると、牛飼が真面目な顔で話始めた。
「あたし、ウジウジするのやめたから。らしくないなあって、思ってさ。ほんと、あたしらしくない。だから、あんたといろいろあったことは、もう忘れる!てか、もう忘れた!あたし、何を怒ってたのかよくわかんなくなってさ。いろいろ考えてたら、頭ん中ごちゃごちゃになって、でも」
まっすぐ俺を見て、
「秋を好きだって気持ちは変わらなかった」
決意するように言った。
「あんたに言われたことは正論で、図星で、だからダメージを受けたんだと思う。でも、あたしは、あたしだから」
牛飼が言っていることは、はっきり言ってよくわからなかった。でも、牛飼の気持ちはなんとなくわかる。こいつは竹を割ったように真っ直ぐで単純な奴だけど、同時にセンチメンタルでナイーブな女の子なんだ。
「ねえ慎吾、覚えてる?」
何を、と訊こうとして口をつぐんだ。こいつとの思い出なんて、秋関連に決まっている。
それくらいずっと、俺たちは秋を見守って来たんだ。
「約束したよね、二人で秋を守るって」
「ああ、したな」
それは呪縛にも似た言葉だったのかも知れない。そうだ、俺たちは互いに釘を刺し合った。逃げられないように。俺たちは共犯者なのだと。
俺たちはずっと、秋に負い目を感じていたんだ。
秋や牛飼と過ごした三年間、それは楽しい思い出だったけど、本当は心が休まる時は一瞬としてなかったのかも知れない。
幼い心が犯した罪は、傷痕となっていつまでも俺たちに罰を与え続ける。
そう、俺たちは共犯者だった。
一度だけ牛飼と話したことがある。俺たちの罪の話を。
小学生の時。俺は秋を見捨てた。牛飼は秋を見下した。
中学生の俺たちには、その罪を抱えるのは重かった。許せなかったんだ、誰よりも自分が、自分を。
秋を好きになればなるほど、罪の意識は重くなる。
だからもっと、秋を好きにならなければいけなかった。秋を守らなければいけなかった。秋の幸せを望まなければいけなかった。
一人で抱えきれない気持ちを吐き出す為に、俺たちは互いに都合が良かったんだ。
大好きな人を、自分の中で汚した罪。それは自分を否定することと同意。だったら、それはなんて悲しいことなんだ。
俺たちは秋が大好きで、でも誰よりも怖かった。自分の醜さをさらけ出す鏡にも似た存在。悪いのは秋じゃない。“そんなこと”を思ってしまった俺たちだ。
だからこそ牛飼は、こんなにも秋のことを好きになるのに必死だったんだ。
守りたかったのは、自分の心。それをつついてしまったから、俺たちの関係は一時でも崩れてしまったんだ。
「あたしは、まだ秋の幸せを祈ってるから」
今の牛飼の言葉は逐一が重い。
彼女は腹を据えたようだ。自分の生き方を決めたような、確固たる意思が感じられる。
「あたしは秋のこと、これからもずっと好きだし、ずっと見守っていきたい。そりゃ、高校卒業したらどうなるかなんてわかんないけど、でもそういうことじゃないんだ。もっと精神的なっていうか、これからは真の友情として――だから」
「言ってることわけわかんねえよ」
「だ、だから!」
「わかるよ。言ってることわけわかんねえけど、言いたいことはわかるよ。秋が好きで、それでいいじゃん。でもさ」
でもな、牛飼、これだけは言わせてくれ。
「お前もそろそろ、自分の幸せ考えてもいいんじゃないのか?」
俺はドッチボールのおかげでシンプルに考えることができた。そう、物事はとても簡単なことなんだ。
「お前も幸せになっていいんだよ」
いつまでも縛られてたんじゃ、人生がもったいないってもんだ。それに俺も、もう決めた。
「なーにカッコつけてんの」
牛飼はケタケタと笑いながら俺の肩を叩く。痛え、マジ痛えから!
「わかってるよ、そんなのは。まあ、お互い楽しくいきましょうや」
オヤジみたいな口調でオヤジみたいに笑う。いつもの牛飼だ。しっかし俺はなんでこんな女に惚れちまったかね……。
「慎吾の方こそ、ちゃんと幸せになりなよ」
「あ?ばっか、俺は――」
俺は、お前を――
おい待て、言うなら今のタイミングしかないんじゃないか?これは行くべきなのか?いや、行くべきだろ!言う。好きだって、言うんだ、よし、
「なに?」
小首を傾げたその仕草が、すごく女の子らしくて、つい、見とれてしまった。
馬鹿野郎、ぽうっとなって、言える言葉も飲み込んでしまった。
「どうしたの?」
「な、なんでもねえよ……」
物凄く焦ってるぞ、俺。ああ、結局のところ、俺はただのビビりなんだ。情けない。
そのあとは誤魔化すように、俺は喋り続けた。ああビビりさ、優柔不断さ。
そうしていると、猪狩がやって来た。
「牛飼ー秋が呼んでたよー……って、お邪魔だったかな?」
にやにやと笑っている。確信犯だろ、お前!
牛飼があいよと返事をしながら俺から離れる。
替わりに猪狩が近づいてきて、
「告った?」
と小声で訊いてきた。
「ねえよ!」
俺は不機嫌さ全開で言ってやった。すると、
「ヘタレ」
と返ってきた。
あれ、コノヒト本当に猪狩さん?
どうもこれから先ずっといじられ続けそうで嫌だ。ほんと、相談したの失敗したか?まずいガードを握られた気がする。
と、牛飼が小走りでまた戻ってきてから俺に、
「じゃ、そういうわけだからこれからもよろしく!」
と言った。なんだか男らしさを感じてしまった。かっこよくもある彼女に乾杯。
そして猪狩の方を向き、
「ありがとな、猪狩」
と控えめに言って走り去った。まるで告白のようだと俺は思った。
するとどうだ、猪狩は顔を真っ赤にして俯いているじゃあないか。はっきり言って、めちゃくちゃかわいかった。まるで恋する乙女ではないか。
牛飼が好きとはいえ、俺のタイプは猪狩なんだ、ちょっとくらいときめくくらい許してくれ。
しかしなんだ、今度は猪狩が牛飼の方に向くフラグが立ったってか?
まさかな。
まさかだ。
猪狩だっていろいろ変わっているんだろうさ。俺たちが少し成長したみたいに、あのガチガチの優等生みたいなこいつも。きっと最近よく見るあか抜けたこいつが、本物猪狩華花なんだろう。
猪狩も多分、牛飼が自分にとってどういう存在か気付いて、戸惑っているんだろう。
その感情が恋じゃなく、俺のライバルにならないことを祈るさ。
そのあと、猪狩に忘れるように言われた。何をって、こいつの赤面をだ。俺も牛飼が好きだっていうことを知られているわけで、なんか妙な関係になっちまったな。
牛飼に告白できるのかなあ、なんて今後の不安を憂いつつ、とにもかくにも、こんな感じで今回のドッチボール事件は幕を閉じたのであった。
なんてな。
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