第4.2話 長瀬慎吾の憂鬱2
図書室の扉を開けると牛飼がいた。心臓が止まるかと思った。
「なに」
「よ、よう。牛飼も図書室利用したりするんだな」
「悪い?」
「いや、別に」
淡々とした言葉。感情がこもっていないが、なぜか悪意を感じてしまう声。そう思うのは俺にやましいことがあるからだろうか。
「どいてくれる?もうすぐ授業始まるよ」
「わ、悪ィ」
俺は慌てて横に飛びのく。扉を挟んで俺は図書室から出ようとする牛飼の進行を邪魔していた。
俺が道を譲ると、牛飼は毅然として目の前を横切る。俺は牛飼に無視されたようで、ちょっと嫌な気持ちになって、つい声に出して呼び止めていた。
「牛飼!待ってくれ」
「なに?」
「いや、大したことじゃないんだけど」
「じゃあ呼び止めないでよ」
「あ、いや、違うんだ。……えっと、昨日は、ごめんな」
一瞬の間。
「なにが?」
「ごめん、だから……」
「ごめん、話し掛けないでくれる?あたし今、“長瀬”と話す気分じゃないんだ」
じゃあ、と小さく付け足して、牛飼は去って行った。
俺は持っていた本を落としそうになった。それくらい、俺は心の中でビビっていた。彼女から感じられた感情は、拒絶でも憤怒でもなく、ただの『否定』だ。俺は否定された。牛飼に。
“長瀬”――牛飼にそう呼ばれるのはいつ以来だろう。いつの間にか、俺は信吾って呼ばれるようになっていて。
はっきり言ってショックだった。だがそれは仕方がないこと。自業自得だ。だって、先に彼女を否定したのは他の誰でもない、俺なんだから。
俺は彼女の気持ちと行動を否定した。牛飼は俺の存在そのものを否定した。拒絶ではない。彼女の目が雄弁に語っていた。「私はお前に、興味がない」と。
マズい。ショックで立ち直れない。足がすくんで、動けない。あいつに否定されるのが、こんなにも堪えるとは。
それで少しずつ俺の気持ちの輪郭がはっきりしていく。
ああ、なんか泣きそうなんですけど。
休み時間の終わりと、授業の始まりを告げる鐘が鳴った。
◇◇◇
放課後、腑抜けた牛飼がいた。誰もいない教室で、干からびたワカメみたいに机にうつぶしている。
「どうした少年、暗い顔しちゃってさ」
私はおどけて言ってみた。
「テンションの高い猪狩って、なんかキモい」
「失礼な奴だなあ。せっかく元気づけてあげようと思ったのに」
「余計なお世話だ。ていうかあたし少年じゃないし」
「知らない?少年って言葉には女子も含まれるのよ」
私は牛飼の前の席に座って、椅子を後ろに向けた。
「あのさあ」
少しの沈黙を置いて牛飼が口を開く。
「あたしが男だったら勝ち目あったと思う?」
牛飼が男だったら秋は山崎より自分を取ったか、そういう意味だろう。
「もしもの話はあんまり好きじゃないな。でもまあ、勝ち目とか以前の問題でしょ」
そう、本人だってわかってるはず。だからこれはただの事実の確認。
「牛飼が女で、友達だったから、今の秋がいるんでしょ?牛飼は秋にとって必要だったのよ」
間。少しきょとんとした顔をして、すぐにやる気を失ったへなちょこ顔。
「なんだかなあ」
はあ、とため息をつく牛飼。
「あーあ、彼氏でも作ろうかなあ」
「どうしたの、藪から棒に」
「なんかそんな気分なだけ」
「まあ、欲しいと思ってすぐにできるものでもないけどね」
「まあ、ね」
間。ふう、とため息をつく牛飼。
「あのさ、猪狩って彼氏いるよね」
あまりの不意打ちにゲホゲホとせきが出た。むせた。
「なによ、藪から棒に……」
「いるよね」
「なんで?」
「よし、いる」
私の質問なんてお構いなしに、牛飼は自己完結。そして勝手に話を続ける。
「どんな人?」
「どんなって……」
「年上?」
「…………年上」
「やっぱりか」
「何がやっぱりなの?」
「だって猪狩って、自分と同等かそれ以下のモノって興味ないでしょ」
驚いた。私が、見透かされていた。牛飼に。
いつも他人を観察して、傍観者を気取っていたが、同時に私も観察される対象に成りうる――そんな簡単なことを忘れていた。
いや、そういうことじゃない。本当に驚くべきことは、牛飼が私をちゃんと見ていたという事実。
「ごめん、気を悪くした?」
「いや別に。ただちょっと、あまりに図星でフリーズした」
「ははは、なにそれ」
「なんで、そう思ったの?」
「んー、なんとなく。猪狩ってなんでもできるし完璧だけど、どこか冷たいよね」
やられた。なんだ、全然騙せてないじゃないか。本当の私を、見透かされている。それは私の仮面が緩くなったせいか、それとも牛飼が思ったより切れ者だったせいか。
「ごめん、今度こそ気を悪くした……?」
「まあそれなりには。というかまあ、ショックだったと言うべきかな。牛飼って結構観察力あるんだね」
「観察力とかじゃないよ。ただの、印象」
「印象かあ……。そういうの、だだ漏れてる?」
「ごくたまに、若干」
ショックだ。いろいろと。
「あ、でも大丈夫だよ。最近だいぶ柔らかくなったし」
「さいですか……」
他人に自分を把握されているのって、なんとなく面白くない。
「牛飼ってさあ、こんな辛辣なこと言う子だったんだね」
「しんらつだった?」
「辛辣だった」
「ていうかごめん、しんらつって何?」
「知らんのかい。辛辣っていうのは、なんだろ、極めて手厳しいとか、そんな感じ」
「そうかあ、手厳しかったか」
「まあね。図星は得てして痛いものだよ」
間。なんとなく気まずい空気が流れた。何か言わないと、そう思って言葉を探していたら、牛飼が先に口を開く。
「ごめんね、思ったこと言っちゃって。自暴自棄になってるのかも」
「いやいや、フォローになってないから。それに自暴自棄なら矛先は自分にだけ向けなよ」
「……ごめん。でもさ、猪狩にならいいかなって思ったんだ」
「なによそれ」
「あのさ猪狩」
「なに?」
「昨日は……」
「ん?」
「いや、やっぱりなんでもないや」
俯いて、逡巡した牛飼はわざとらしく明るい声で言った。
「話は戻るけど、猪狩の彼氏ってどんな人?この学校の人じゃないよね?」
ドキリとした。
「あ、う、うん」
「どこの高校の人?それとも大学生だったり?」
「えーっと……社会人」
「マジで!?」
「うん」
「何歳年上?」
「8歳、かな」
顔が熱くなってきた。誰かにこういう事を話した事がないから、ものすごく恥ずかしくなってきた。
「すげえ……」
「すごくない、すごくない。あのさあ、話題変えない?」
「ダメ。首突っ込んだんだから最後まで責任取りなさいよ。あたしを元気づけるとか言ってなかった?」
そんなこんなでそれから1時間くらい私は強制的に恋の話をさせられた。まあ、絶対に彼の正体をバラしたりはしなかったけど。
私が喋るだけ喋らされた後、牛飼は言った。
「あーあ、あたしももっと女らしかったらなあ」
「何よ突然」
「まあ、ご覧の通り実に男らしいんで、全然浮いた話の一つもないんですわ」
「それって、秋のこと好きだったからじゃないの?」
「かなあ」
「多分。まあ、確かに男より男らしいけど」
「おい」
「まあ、最後まで聞きなよ。でもやっぱり牛飼は自分で思ってるよりずっと女らしいと思うけどなあ」
「そうかあ?こんなだぞ」
「ぶっちゃけ私より胸でかいし」
悔しいけどね。そこでちょっと恥ずかしそうに俯くな。そういうところがかわいいと思うんだけどなあ。
「男子に結構人気あると思うよ、牛飼は。すごく話しやすいし」
「そうかなあ」
「そうだよ。まあ、仲良くなっても友達感覚が抜けないってのもあるかもしれないけど」
「やっぱりそうかなあ……」
「でもやっぱり、牛飼は秋が好きだからってのが一番大きいんじゃない?」
「……………」
「あのさ、さっきからこういう話題ばっかりだけど、もう秋のこと好きじゃないの?」
「……好きに決まってるよ。簡単に気持ちなんて、変わるわけないじゃん。でもまあ、あたしは失恋した負け犬さ。笑いたきゃ笑えよ」
「またそうやって自暴自棄になる……」
「あーあ、今日まともに秋の顔見れなかったなあ」
「秋、寂しがってたよ。今日はみっちゃんとお話できなかったって」
「そっかあ」
「今日はそっとしといてあげなって言っておいたけど。ねえ、休み時間の度にどこに行ってたの?」
「ああ、図書室行って寝てた」
「なるほどね。昼休みも?」
「うん。まあ、あんまり眠れなかったけど」
「ご飯はちゃんと食べた?」
「あーそういや食べてないや」
「こら……。倒れるよ」
「ああ、大丈夫大丈夫。体だけは頑丈にできてるから」
「……言う程でもないくせに。食事だけはちゃんととった方がいいよ。あと睡眠」
「ん、ああ、がんばる」
「大丈夫かなあ……。図書室行ったならさ、長瀬君に会わなかった?」
「…………ん、いや、どうだったかなあ」
「……あのさ、長瀬君と何かあった?」
「別に、何もないよ。ただ痛いところをつかれただけ」
「そっかあ……」
本当は泣かされてる現場を目撃しちゃってるんだけど、そんな事は口が裂けても言えない。私は見るだけ見て、何もしないような卑怯な人間なのだ。
「秋の事は……まあ、明日からはちゃんとやるよ。今まで通り、普通通り。今日はちょっと、気持ちの整理をつけたかっただけ」
「もう気持ちは伝えないの?」
「しない。意味ないし。多分伝わらないし、あたしが入ってあの二人の関係が少しでも微妙になったら嫌だな、とか思ったり。それにほら、気付いちゃったの。あたし勝ち目全然ないって。それにほら、女同士だし。あたしレズってわけじゃないと思うんだけどなあ」
「でも秋のこと好きなんでしょ」
「うん、まあ。すごく大切な人だから、秋は。それは今でも変わらない。今のあたしがいるのは、秋のおかげだから。あたし、みんなが思ってる程いい奴じゃないからさ。本当はズルくて、卑怯な奴なんだ。最初秋と一緒にいたのは優越感に浸る為だったんだ。秋は昔何も知らなくて、何もできなかったから。だから、この子はあたしがいないと生きていけないんだって、そう思うことであたし自身の存在を確立したかったんだよ。ほんと、最低でしょ?」
そうか、牛飼のことを少しわかった気がする。だからか、私の影に気付いたのは。私達は似ている。誰かを見下して、自分の存在を確かめていたっていう点が。ただ対象が特定の一人か、不特定多数かってだけで。
「そういうの、私はわかるな。だから、私は牛飼のこと軽蔑したりしないよ」
「そっか……。あたしね、秋には幸せになって欲しいから、だから諦めることにする。あたしは秋が好きで、性別とか超越してめちゃくちゃ好きだからさ、それってやっぱり恋じゃないのかな、って今は思うよ」
「それは違うよ。私の目から見て、牛飼はちゃんと恋してた。始まりはどうか知らないけど、秋のことを想ってがんばる牛飼は、ちゃんと恋する女の子だったよ」
「……ありがと」
牛飼は照れくさそうに言った。それを見てあたしまで照れくさくなってしまう。
「だからさ、彼氏でも作って前に進むかあ、って前向きに考えてみたりしたんだけど……なんともね。
あたしは、猪狩とかすっごい憧れるよ。すごく大人っぽくて、女らしくて」
「牛飼が落ち着きがないだけじゃない」
「うぉい」
「私だって牛飼に憧れてるよ」
「嘘!」
「ほんとだよ。だって、牛飼って誰とでも自然に話せるし、明るくて活発で。あたしにはそういうのが全然ないから、すごくうらやましいよ」
「な、そんな!あたしだって、猪狩がうらやましいよ。なんでもできるし、頭がいいし、ちゃんと周りや人のことを見れて、余裕があって。あたしみたいに未熟なできそこないには、逆立ちしてもかなわないって。あたしも、なれるものなら猪狩みたいになりたいよ」
なんだか無性にむずがゆくて、恥ずかしくて、うれしくて、私は笑いが込み上げてきた。
「なんだかんだ言って、私達って似たもの同士なのかも知れないわね」
「そうかもね」
二人で顔を見合わせて笑い合った。もしかしたら私達は、意外といい『親友』ってやつになれるんじゃないかって、そう思った。
/
私達が教室を出ようとすると、ガタンと戸が開かれて、長瀬君が飛び込んできた。
「ここにいたのか」
どうやら長瀬君は牛飼を探していたようだ。でも牛飼は面倒臭そうな顔をして、鞄を片手に立ち上がった。
「行こ、猪狩」
「う、うん」
私達は長瀬君を無視して教室を出ようとした。私は気になって長瀬君の顔色を伺ったが、彼は牛飼の顔しか見ていなかった。
「待てよ」
「なに」
「ちょっと話したいことがあってさ」
「あたしはないけど」
「ちょっと聞いてくれよ」
長瀬君の手が伸びて、牛飼いの腕を掴もうとした。次の瞬間、パンという音が教室中響いた。牛飼が長瀬君の手を払ったのだ。
「触らないでよ」
「あ、そんなつもりじゃ」
行こう、と言って牛飼は教室を後にした。取り残された長瀬君に私は言ってやった。
「男の子って子供だよね」
すると去勢を張るかのように、長瀬君も言い返してきた。
「それは経験からか?」
でもそんな意地は何の意味も成さないよ。
「ううん、ただの一般論」
私はそう捨て台詞だけを吐いて教室を出た。
長瀬君、まだまだわかってないね。女は一度怒らせると、なかなか許してもらえないし、フィルターが張られて普通の言葉すら届かなくなるものさ。何か特別なきっかけでもない限り好転はしないね、この状況。
あの時、牛飼に何を言ったのかはわからない。でもなんとなくの状況はわかる。牛飼は泣きながら告白を邪魔されたと言っていた。私も水族館にいたわけだから、同罪と言えば同罪なのだが。
しかし本当に、何を言ったのさ長瀬は。牛飼をあれだけ怒らせるなんて。いや、もう怒っているのとは違うか。関わりたくない、って感じか。
女は感情論だからね。何を言ったのかは知らないけど、あなたが牛飼を傷つけたって事実だけはどうしても消えないのよ?
/
長瀬君が来る少し前、牛飼がものすごく照れ臭そうに、少し視線をそらしながら、言った。
「昨日は……ありがとう」
昨日は、ありがとう。これは牛飼が泣いているのをなだめたお礼、だろうか。
はっきり言って驚いた。ごめんと謝られることはあっても、礼を言われるとは微塵も思っていなかった。
そうか、さっきからこれを言いたかったのか。言いたくて、そのタイミングを待っていたのか。泣き止むまで側にいてくれてありがとう、と。
だったら、なんて、なんて素直で、なんて素直じゃないんだ。この子は、牛飼未衣という少女は、なんて真っ直ぐで不器用なひとなんだろう。
私は牛飼が愛おしくてたまらなくなった。ああ、わかった。私は牛飼が好きだ。もちろん変な意味じゃない。友人として、応援してやりたいし、支えたいと思った。
いつも打算的だった私にしては、もしかしたら初めて芽生えた感情なのかも知れない。初めて、女友達ができた、そんな気がした。
くすりといたずらっぽく笑ってみせて、私は言った。
「私が失恋したら、お願いしようかな」
まあ、そんな予定は全くないけどね。
◇◇◇
初恋は、ぶっちゃけて言うと、秋だ。
長瀬っていうのは結構面倒臭い家で、古いしきたりやら伝統やらで縛られた悪く言えば外界から閉じた家系だった。
とは言え、本当にごちゃごちゃドロドロしているのは直系というか本家というか、主となる家の奴らで――それがまあ、秋の家だ。
うちも長瀬家だったが、本ちゃんとは違う遠巻きだった。少し離れた親戚って奴だ。本流の連中は、少しでも遠い長瀬を嫌煙していたというか差別していたというか、まあはっきり言って見下していたみたいだ。父親は本流に入れてもらえないことにものすごくコンプレックスやらプレッシャーやらを感じていたようだが、外から嫁いで来た母や親戚関係が面倒な俺にとっては、この主流派閥との距離が気楽でよかった。
話を戻すが、秋はそんな面倒臭い長瀬の家のしがらみを一人で背負わされた被害者だった。詳しい話は知らないが、跡取り問題やらで振り回されて、家に閉じ込められて、言ってみれば体のいい生け贄だ。
小学生の時の秋ははっきり言って暗い奴だった。人の中に上手く溶け込めない、上手く話せない、そんな子供。
小学校は一応同じだったが学校で絡むことは全くと言っていいほどなかった。
家も一応近くて、時々秋と遊んだりした。それは親に言われたからというのがあるからだろう。そうじゃなきゃ、薄気味悪い本流の家になんか近づきたくはない。父親は本流とのパイプ役として俺を使おうとしたようで、我が親ながらなんて打算的な男だ。もしかしたら俺と秋を結婚させて本家に入れてもらおうという腹だったのかも知れない。くわばらくわばら。ついでに母親も俺に秋と遊ぶように勧めた。それは人間関係を大事にしなさいという優しい母的感情と、やはり本家とのワンクションが欲しいという思いから出たものであろう。「長瀬さんちのお嬢さんと仲良くするのよ」みたいな感じで。おい、俺も長瀬だぞ。ああそうか、俺がひねくれたのはこの両親のせいか。
しかしよく考えれば秋と俺が遊ぶのをよく本家の連中が許したななんて思ったこともあったが、今にして考えてみるとそれは秋のリハビリを兼ねていたのかも知れない。あの頃の秋は本当に閉じていて、大人の目からみてもヤバかったのだろう。そういうわけで俺が友達役になり、秋のおもりみたいなことをすることになった。
秋は凄まじくおとなしい子供だった。外で走り回りたい俺は、はっきり言って秋と遊ぶのはつまらなかった。ままごと遊びをしたり、絵を描いたり。だから秋とはたまにしか遊ばなかったわけだが。
本家の庭で会う時の秋はまだマシな方だった。どうマシかって言うと、まだ人間らしいというか、まだコミュニケーションが取れるというか。学校での秋はそれはもう目を背けたくなる程に、ヒドかった。
あいつは他人の中に入ると完全に閉じてしまって、誰とも全く話さないのだ。そんなだから無視されるのは当たり前。本格的ないじめまがいのことは起こらなかったが、それは本家からの圧力があったからとかなんとか。どんだけすごいねん、長瀬家。でもまあそんな組織的圧力なんて、個人の友人関係にまで――ましてや子供の――にまで及ぶこともなく、孤立した秋はもうどうしようもなかったわけだ。先生や両親や、強いては秋の親にまで学校で秋と仲良くするように言われた。口ではOKと言いながらも、心の中と行動では完全にNOを示した。だってそうだろ、クラスで完全に無視されている奴に下手に話し掛けたら、どんなとばっちりがあるかもわからない。クラスが違ったのは唯一の救いだった。俺は小学校では秋を全力で無視し続けた。秋の方もなんとなく空気を読んだようで、学校で近づいて来ることは全くなかった。
正直に言おう。俺はあの頃の秋が怖かった。他人との接触を完全に絶って、何を考えているのかわからないあいつが。俺の生活を脅かすかもしれないあいつが。
本家での秋も閉じていた。きっといつも監視されて育ってきたんだろう、下手なことをしたら怒られるから、何もしない。学校での秋は俺を侵食する時限爆弾のようで嫌いだった。家の中よりも、庭での秋は少し話やすくて好きだった。本家から少し離れた山で遊ぶ時の秋は時々笑うからもっと好きだった。
そのへんからだろうか。秋が笑う顔を見るようになってからだろうか、俺が秋を好きだと思ったのは。
とはいえ、子供ながらに複雑な感情を抱えることになってしまった。小さな少女から、俺は淡い恋心と粘い恐怖を与えられた。外で秋と会って好きになる程に、この笑顔を知っているのは自分だけなんだと、誇らしくなった。内で秋を見かける度に、俺を壊されそうで、怖くて怖くてたまらなかった。
だからこそ、俺は社交性を手に入れた。長瀬秋という爆弾が爆発しても、俺の足場が――俺の居場所がなくならないように。友達はたくさんいたし、周りからの印象も悪くない。家では秋の面倒を見るし、大人の評価も良好。するり、するりと、俺の表面を流れていく。万事オッケー。俺は何も間違っていない。俺は完璧だ。
そんな、小学生時代。
小学生のとき、俺は牛飼未衣を知っていた。が、認識はしていなかった。名前と顔という情報としては知っていたが、個人として意識したことはない。それは牛飼にとっても同じだったのだろう。もしかしたら、俺が秋といとこだってことも知らなかったんじゃないだろうか。
牛飼と秋が仲良くなったのは小学校3、4年生の頃だろうか。ちょうど俺が秋に――といっても学校の外で会う彼女――に恋心を抱いていた時期だ。いつだったか秋を泣かせてしまって、それからもっと気になるようになって、でもいつの間にかそんな気持ちは消えてしまって。消えてしまった想いはどこに行ってしまったのかとも思う――が、それは牛飼が持っていってしまったのかも知れない。
牛飼と一緒にいるようになって、秋は少し変わった気がした。なんというか、明るくなったというか。俺はそれに戸惑いを感じた。俺は今まで通り、学校では秋を無視するのか否か。俺は自分の保身の為に、学校では秋を切り捨てた。それなのに俺は秋に恋をしている。これはなんという矛盾か。秋が二人で遊ぶ時に、牛飼の話をするようになった。牛飼の話題は日に日にその割合を増やしていった。
ほんの僅かだが、ほんの少しずつ変わっていく秋。小学5年生にして、俺は初めてある感情が芽生えた。
罪悪感だ。
今まで全くなかったとは言わない。だが、ある日、ふとした瞬間から、俺の心は言いも言われぬ恐怖に似た感情に支配されていった。
俺は秋を見捨てたんだ。誰からも相手にされない秋に救いの手を差し伸べることもなく、自己中心的な感情から、逃げた。
それに気付いてしまった。その瞬間から、俺の中の何かが瓦解していった。少しずつ秋と遊ばなくなった。俺の中から秋が少しずつ消えていった。小学6年生、小学校最後の年は、ほとんど秋に関わらなかった。外でも、内でも。男が女と遊ぶのも恥ずかしいことだと思ったし――っていうのは言い訳だな。だって秋と会っている俺は誰にも見せてなんていないんだから。
俺は心の奥底に暗澹としたものを抱えながら、社交的で明るい小学生を演じ続けた。傍観者を気取り、他人との距離を計りながら。
そして俺は、中学生になった。
中学生になって大きく変わった事が2つある。
1つは秋が他人と話すようになったこと。
そしてもう1つは、俺が秋と学校で話すようになったこと。
中学に上がって、秋はまた一段と変わった。今までの自分をリセットして、新しい人生を歩き出したかのように。だから俺もリセットした。俺は今までの事をなかったことにして、秋に近付いた。
俺は秋を見守ることにした。それが俺の償い。秋を見捨てていたことの懺悔。
秋の側にいるという事は、牛飼ともよく顔を合わせることになるということ。ここに来て、秋を挟んで平行線だった二人の接点がようやく交わる。
中学三年間は概ね平和だった。相変わらず秋は人付き合いが苦手だし、俺も他人を観察しながら距離を取っていたが、俺達の取った行動は概ね正しい。それぞれが、自分の居場所を確立する最善の手段であった。
俺は秋への後ろめたさが抜けないまま、月日を重ねていった。それは妹を想う兄のような優しい鹿護欲みたいなものだったが、根底はそれである。とはいえ、俺達は上手く行っていた。
そして――
そして、三年の夏、事件が起こる。
三年の夏休みに、秋の両親が死んだ。自殺だったらしい。
だが死んだのは彼らだけじゃない。長瀬の家の本流派閥そのものが死んだのだ。事業に失敗したとか、政治的圧力がかかったとか、色々な噂を聞いたが結局真相を俺は知らない。
そういうわけで、長瀬の本家は解体された。だがそれは俺達の家に全く、何の影響も与えなかった。俺達は結局本流に入れてもらえなかった部外者。こんなことになってようやく、父親は主流にいなかったことを喜んだ。
本当に俺は遠かったのだ。こんなに近くにいたのに、長瀬の家にも、秋にも。そう思い知らされた。だって、俺が秋の為にできることなんて何一つなかったんだがら。
秋は――秋は、変わらなかった。今まで通り、感情を表に出すのが不器用で、人と話したり接したりするのが苦手な女の子。
でも、秋は変わった。出力の部分は変わらない。でも、中身が何か変わってしまったような。彼女の心は、また昔のように閉じてしまったのか。
でもそれを確かめる手段を俺は持ち合わせていなかった。だって、俺は遠いから。秋の側にいるのに、秋のことを何もわからない。牛飼ならわかっていたのかも知れない。秋には、牛飼がいて本当によかったと思う。秋はきっと、牛飼のおかげで救われた。なんて、希望的観測だけどな。そう思うことで、救われたいのは俺自身なんだ。
その後紆余曲折を経て、秋は祖母と二人きりで暮らしている。
どうして俺が今になってこんなことを語っているのかって?それはあれだ、洋や猪狩と初恋の話をしたからだ。俺にとって秋は何なのか、それを再び紐解いた。そして牛飼も。
そう、俺は知ってたんだ。秋にとって牛飼がどれだけ重要な存在なのか、そして牛飼にとって秋がどれだけ大切な人なのか。
俺はそれを否定した――ってことになっちまうのかな、これは。
それで牛飼に一言謝りたくて、何度か接触しようとしたんだが、この通りさ。完全に線を引かれちゃったな、牛飼に。それで色々考えた挙げ句、出た結論がこれ。俺一人の力じゃどうしようもないってこと。
だから俺は携帯電話を取り出して、山崎洋に電話をかけた。
◇◇◇
夜風は意外に冷たくて、少し背中がぞくりとした。マンションの下に到着して、程なくして待ち人が現れた。
「よう、早かったな」
「他ならぬ君の頼みだからね」
「俺らってそんなに仲良かったっけ?」
「そんなこと言うなら帰るよ」
「ごめんなさい。仲良しです」
「それもどうかと」
待ち人、牛飼未衣専門家こと、猪狩華花は少し困ったように笑った。
俺は悩みに悩んだ末に出した結論は、猪狩に助言を請うことだった。だが猪狩との連絡手段がなかったので、洋に電話して猪狩の携帯の電話番号を聞いた。とは言っても実は洋も番号を知らずに秋に聞き直すという二度手間になってしまったわけだが。
猪狩の電話番号を手に入れた俺は、すぐにアポを取り付けた。そして猪狩のマンションの下で待ち合わせ。自転車で行ける距離だったのでダッシュで移動。待ち合わせ時間よりも少し早く着いたが、猪狩も時間より早く現れた。
「悪いな、突然呼び出しちゃったりして。しかも夜に」
「大丈夫だよ、まだ8時だし。それにうち、今誰もいないから。あ、上がっていく?」
「いや、さすがにそれは」
遠慮しておく。
しかしちょっとドキっとしてしまった自分に少し自己嫌悪。現金な奴、俺って。
「で、相談したいことって何かな?」
ふう、と息を整えて俺は話し始める。とりあえずはあれだな、水族館事件で牛飼を泣かせてしまったいきさつからか。
一通り話し終わると猪狩はふむ、と顎に手を当てて頷く。
「まあなんとなくの話は牛飼に聞いていたわけだけど」
やっぱりか。
「やっぱりそれぞれの主観が入ると、なんとなく印象が変わってくるね」
そうっすか。
「とりあえず整理。客観的事実のみを述べると、まず牛飼が山崎くんたちのデートを邪魔しようとした。そして秋にキスしようとした」
猪狩は、そうかキスかあ、などとぼそぼそ呟いていた。言ってよかったのだろうか。
「そして長瀬くんがそれを止めた。その後、牛飼が邪魔しやがってと怒った。そして長瀬くんが牛飼が起こした行動は秋の気持ちを踏みにじるものだと罵った」
うん、まあな。罵ったってところに若干悪意を感じるがな。
「そして牛飼は気持ちが暴発して号泣、と」
そういうことらしいな。
「それで牛飼と関係が気まずくなって、それを修復したい、と」
ご明察。でもまあ気まずいというか、一方的に避けられてる感じだけどな。
「あのさ、思ったこと率直に言っていい?」
「ど、どうぞ」
なんだ?何が飛び出すんだ?友人としての非難か?女としての罵詈雑言か?
「長瀬くんさ、もしかして牛飼のこと好きなの?」
頭が一瞬フリーズした。ん、待て待て、今なんとおっしゃいました?
俺が牛飼を好きだって?まさか。どんな冗談だ。
「まさか。そんなことあるわけないじゃないか」
とりあえずポーカーフェイスを装ってみる。
「ふーん、じゃあさ、どうして君は牛飼未衣にそんなに固執しているのかな?」
固執している?俺が?牛飼に?
「全く、根拠の無い言いがかりはよしてくれよ」
やれやれと首を横に振ってみせる。
「逃げるな」
一言。一言で、ぶったぎられた。
「言ったよね、その気持ちから逃げないで、考えてみてって。考えてみた?」
そんな真っ直ぐ目で俺を見るなよ。そして事実を突きつけるなよ。
苦し紛れに反撃してみる。
「根拠は?俺が牛飼のことそう思ってるっていう証拠は?」
我ながら痛いことを言っている。気持ちなんて目に見えないものに証拠なんてあるはずないのに。だが猪狩は平然と返してきた。
「だってそれは、君が証明してるのよ。だって長瀬くん、ずっと未衣のこと考えてるでしょ」
決定打だ。本当は自覚していたのさ。四六時中牛飼のことで頭がいっぱいだってことに。
泣かせたことがショックなんじゃない。嫌われたことにビビってるんだ、俺は。
ああそうだよ、白状するよ。俺は牛飼のことが好きさ。だって、あいつが泣いてる顔って、めちゃくちゃかわいかったんだぜ。
「何か反論があるならどうぞ」
猪狩の言葉に返す言葉なんて持ち合わせていない。降参ですわ。
「やっぱそうかな」
「そうでしょ」
「わかるもんなの?」
「わかるもんだね」
さすがは女の子。
「あーあ、なーんでああいうのを好きになっちゃったかなあ」
「認めたね」
「認めるよ。しっかし、俺のタイプって牛飼とは全然違うんだけどなあ。どちらかというと、猪狩さんが全然タイプなんだけどなあ。あ、ごめん、別にそんなつもりじゃ」
本人を目の前に何を言っているんだ、俺は。でも本当、俺の好みは猪狩嬢だ。知的で、綺麗なお姉さんタイプ。
「それは光栄ね。私も長瀬くんみたいな人、好きだよ」
「またまたご冗談を」
「本当だよ。じゃあここでネタばらし。突然の呼び出しに来てくれてありがとうみたいに言ってたよね」
「ああ」
「普通なら私だって面倒臭くて嫌だけどね、人の相談に乗るの」
そいつは申し訳ない。
「でも私は他ならぬ君の頼みなら、って言った」
そうだったな。
「それはね、私が長瀬くんの事が好きだからだよ」
心臓が跳ねた。顔がめちゃくちゃ熱くなった。
「す、好きって」
「うそだよ」
「へ?」
「嘘だよ。ごめん、ちょっとからかっちゃった」
猪狩華花がいたずらっぽく笑う。
待て。誰だこいつは。いつものクールな猪狩嬢はどこに行ったんだ。なんだこの茶目っ気たっぷりの姉ちゃんは。
「長瀬くんってね、私の好きな人に似てるの。だから、なんとなくほっとけなくてさ」
なんだよ、ビックリしたじゃないか。マジで惚れるところだったぞ、ボケ。
「心臓に悪いよ……マジ勘弁してくれ」
「ごめんごめん。じゃあごめんついでに、もう一つ忠告していい?」
どうぞ。
「君みたいなタイプはステージにあがっちゃダメなんだよ」
すまん、意味がわからんのだが。
「私や君みたいな、他人を観察して考察して距離を取ってる人間は、事件の当事者になっちゃいけないってこと。ただでさえ自分の身の問題解決が困難なんだから、足元すくわれるよ?」
やられた。この女(イキモノ)には勝てない、そう思った。ちくしょう、どこまで見透かしてやがるんだ。
「まあ、踏み込んでこそ人間。私たちもそろそろ成長しなきゃいくないんだろうけどね。モラトリアムできるうちに、大人になる準備、しとかなきゃ」
なんだこいつ、神か?偉そうによ。自分が痛過ぎて何も言えないじゃないか。
「善処します……」
とりあえずそう答えておいた。
「あのさ、ちょっと聞くけど、長瀬くんって巨乳好き?」
「はあ?何言ってんだよ」
ほんと、今日の猪狩は予測の範疇を逸脱しまくっている。俺の中の猪狩のイメージが大暴落ですのことよ。
「お願い、真面目に答えて。私にとってすごく重要なことなの。胸が大きい女の子と、小さい女の子、どっちが好き?」
なんつー迫力だ。とりあえずリアルな回答しとくか。嘘を見破られてもそれはそれで痛い。
「まあどっちかっつーと大きい方が好みだけど」
そうかあ、と猪狩が頷く。ちょっと機嫌が悪くなってるのは気のせいか?
「やっぱり似てるわ」
「猪狩さんの好きな人ってやつに?」
「うん」
反応に困るぞ、これ。
「好きな人って、彼氏?」
「なんで?」
「いや、猪狩に彼氏がいるって噂聞いたことあるから」
「マジ……?」
「マジ」
「そうかあ、わかっちゃうものなのかな。一応隠してるつもりなんだけど」
「まあ猪狩さんって大人っぽいし、余裕があるから、そういう風に見られるんじゃないのか?」
うーむ、と唸る猪狩。何が不服なんだろうか。
「私が誰と付き合ってるかって、知ってる?」
「え、俺の知ってる奴なのか?」
「え、いや。違うと思うけど」
猪狩がわからねえ……。今日の結論はやっぱりそこか?
「でもさ、長瀬くんが牛飼を好きなのってなんとなくわかる気がする」
「なんで?」
「牛飼って胸大きいし」
おい。違うぞ。俺は別にそれきっかけで好きになったわけじゃ。待てよ、ていうか牛飼って胸デカいんだ。中学からの付き合いだからあまり意識したことなかったぞ。そういや男子がそういう話をしていたような……。
「言っとくけど、そういうんじゃないからな」
「ごめんごめん、わかってるよ。やっぱり思った通り長瀬くんはいい人だね」
「そうかあ?」
「そうだよ。まあ牛飼のことは応援するから」
「うーん、応援されてもなあ」
「付き合っちゃいなよ」
「よくそういうことを平気で言えるなあ。今それどこじゃないだろ。だって、俺今、嫌われてるから」
「そうだねえ、とりあえず当面の目標は、仲直りか」
「そうだなあ。ずっとあんな態度取られたらつらいマジで。それにやっぱり、ちゃんと謝りたいから。俺、牛飼の気持ち、本当はわかっていたと、思うから」
「そっか、じゃあ、一肌脱ぎますか」
「え?」
うん、と頷いた猪狩は思案気な顔をして、口許はあやしく緩んでいる。何を企んでいるんだ……。
俺が猪狩に訊こうとした時、突然男の声に呼び掛けられた。
「おい、お前らこんな時間に何やってんだ?」
振り返ると、知った顔がいた。一瞬誰だったっけと思ったが、すぐに思い出した。
「あ、高松」
「こら、呼び捨てするな」
「あ、すみません、先生」
数学の高校教師がそこにいた。二年になって高松の授業を受けるようになったが、顔を知っているってだけで話したことなんてほとんどなかった。
「こんな時間て……」
携帯で時間を見る。22時12分。あれ、俺たちそんなに長く話してたっけ?
「最近物騒なんだから、あんまり夜遊びするなよ。特に女子は」
高松が俺と猪狩に先生っぽく言う。いや、先生なんだけど。
「先生、大丈夫ですよ。長瀬くん、今日うちに泊まりますから」
「「はい!?」」
先生と俺の声がかぶった。
「違います!違いますから!俺たち全然そんな関係じゃないし、今もたまたま会ってちょっと話し込んじゃっただけで」
焦った。めちゃくちゃ言い訳してるんですけど俺。何を言い出すんだ猪狩!
「せんせ、冗談ですよ」
猪狩はいつも通り、クールに笑っていた。
わからねえ。猪狩華花がわからねえ。
「お前ら、早く家に帰れよ」
「はい!」
俺は急いで自転車に乗ると、逃げるようにその場を去った。
後で猪狩にメールしておこう。話を聞いてくれてありがとうってのと、俺が牛飼にラブってことは他言無用でってことを。洋ちゃんにも知られたくないな、うん。
しっかし高松はなんでこんなところにいたんだろうか。まあいいや。
とりあえず今夜は色々と収穫があった。俺が牛飼が好きだということを完全に自覚したっていうこと。そして、猪狩華花って人物が意外と茶目っ気たっぷりで、予想以上に何を考えているのかわからないってことに。
人に話して少し楽になったっていうのはあるけど、牛飼のことでしばらくもやもやしてそうだ。
案の定、ドッチボールをやったあの日までの数日間、俺と牛飼は相変わらず気まずくて、俺はずっとブルーだった。
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