第4夜 弟

 夢をみた。


 私は少女で、親と暮らしている。私たち家族が住む部屋に突然、金色に輝く少年があらわれた。西洋的な顔立ちに、ゆたかなブロンドの髪。ガラスのような絹のようなうつくしい水色の服を着ている。

 私は、なぜそんな人がとつぜん、何の変哲もない私たちのところへ現れたのかわからない。困惑したし、拒絶もしたかった。だけど彼は、誰にも迷惑をかけることなく、にこやかに、控えめに、ただ存在するばかりだったから、私はそのうち、彼の存在に慣れてきた。彼の水色の服が、歩くたび、ギリシャの彫刻みたいに整然と波打つのはみていて心地よいものだった。


 私は、彼に話しかけてみようと決心した。

 考えてみれば、彼が出現してから、いちども話しかけたことがなかった。


 彼に声をかけようと思って、その朝、寝室から廊下に出たけれど、彼はどこにもいなかった。そのかわりに、彼と同じくらいの背丈をした、黒髪の少年が歩み寄ってきて、くったくなく笑った。

 この子は私の弟だ、と気が付いた。

 弟が見えるようになるまで、こんなにも時間がかかってしまった。


(おしまい)

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