第4夜 弟
夢をみた。
私は少女で、親と暮らしている。私たち家族が住む部屋に突然、金色に輝く少年があらわれた。西洋的な顔立ちに、ゆたかなブロンドの髪。ガラスのような絹のようなうつくしい水色の服を着ている。
私は、なぜそんな人がとつぜん、何の変哲もない私たちのところへ現れたのかわからない。困惑したし、拒絶もしたかった。だけど彼は、誰にも迷惑をかけることなく、にこやかに、控えめに、ただ存在するばかりだったから、私はそのうち、彼の存在に慣れてきた。彼の水色の服が、歩くたび、ギリシャの彫刻みたいに整然と波打つのはみていて心地よいものだった。
私は、彼に話しかけてみようと決心した。
考えてみれば、彼が出現してから、いちども話しかけたことがなかった。
彼に声をかけようと思って、その朝、寝室から廊下に出たけれど、彼はどこにもいなかった。そのかわりに、彼と同じくらいの背丈をした、黒髪の少年が歩み寄ってきて、くったくなく笑った。
この子は私の弟だ、と気が付いた。
弟が見えるようになるまで、こんなにも時間がかかってしまった。
(おしまい)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます