第39話 たどり着く場所
──結局、トアンは譲らなかった。ルノは焦る気持ちと心配する気持ちに板挟みにされ、そして考えた末に約束をした。……必ずまた、全員で同じ場所に立つこと。
トアンの右手、指の部分を落としたグローブから出た素手の小指にルノは自分の小指を絡ませながら、もう一度トアンの瞳を見つめて頷いてみせた。トアンも頷き返してくれる。
「……じゃあ、オレ行くね」
「気をつけて」
「ルノさんも」
そういい残すとトアンは背を向け、メルニスと一緒に反対方向へと走り出す。……メルニスが何度かこちらに視線を送っていたが、ルノは気付かないふりをして、後ろにある外へと続く扉から飛び出した。
──トアンから制止を掛けられ話し合いをしている最中でも、ルノは一刻も早く走り出したかった。トアンのことも、セイルもトトもコガネもウィルもレインも全員が心配だったが、それ以上にシアングのことで頭が一杯だったのだ。処刑まで時間がない。城の地下でも予想以上に時間がかかっていた。
(時計を持ってこなかったのは失敗だったな。あと二十時間、あるかないか……。最悪あと十時間ほどか。……時計を見たくなかったのは私のワガママなのだし、自業自得だな)
ふ、と思わず苦笑をしながら、石の回廊を走る、走る。回廊は黒い布によって喪に服していた。まだ処刑は行われていないのに、なんという気の早さだ。遠くにぼんやりと見える城の門には兵士がずらりと並んでいて、 ルノはこっそりと地下の抜け道に感謝した。
(……正面からの突破は不可能だったな……ん?)
黒い回廊の先は濃い霧の中に続いており、先の見えない境界線にルノは焦った。焦りによって、まるで夢の中のように足がうまく動かない。もつれて、それでも前に進もうとし、何とか体勢を整え、そしてまた足がもつれ──数回繰り返した後、ルノは転倒した。しかしすぐに立ち上がり、足を動かす。一歩踏みしめるたびに膝からがくりと折れてしまいそうなほど足が震えているが、ルノは無視することにする。自分を客観的に見つめ、大丈夫まだ間に合うのだからと何度も言い聞かせ、やけに大きく聞こえる呼吸音を必死に整える。──白い壁は、もうそこまで迫っていた。
(黒の次は白か……なんでもこい!)
──ゴーン……ゴーン……。
霧の中でベルサリオの鐘の音が響いていた。
──白い世界だった。
重くうねる様な鐘が、ルノの足音を真っ白な霧の世界に吸い込まれていく。
(霧の中で鐘の音が反響している──前に進んでいるのか、方向が違うのかすら、わからないな……)
そう気付いたとき、ルノはがむしゃらに動かしていた足をふと止める。先ほどまでは、一度止めてしまえば焦りと緊張にその場にへたりこんで、もう動けなくなってしまうかもしれないという恐怖から自分の中でタブーとしてきたが、ルノは迷いを振り切った。──このまま見当違いの方向に走り続けるほうが怖い。ゼェハァという自分の呼吸音が落ち着くのに比例して、心がどんどん冷静さを取り戻していくのを感じた。
──ゴーン……。
(まるで嘆きの鐘だ)
ふと、そう思った。
(この国の悲しみと嘆きが、あの鐘の音から伝わってくるようだ……。ここはどこだろう、もう処刑場のすぐ傍まで来ているのだろうか)
──……ン……。
ルノが思考をめぐらせていると、霧の中の鐘が不意に途絶えた。途絶えた、というよりは掻き消えたといったほうが正しい。白い霧がザワザワとざわめきだし、白い世界がゆらゆらと揺れた。しかしルノは不安には感じず、何故か切なくなって俯いた。理由は自分でもわからない。
「……シアング、どこにいるんだ」
思わずぽつりと呟く。もちろん何かが起こるなどと期待していたわけではない。──なかったのに、突然霧の世界に異変が起きた。ルノの声に反応したのか鐘の音に反応のか、それともただの風の気まぐれだったのかもしれない。
──フッ。
霧が波が引くように逃げていき、これまで隠れていた辺りの景色が唐突に現れる。──辺りは、城の中庭のように四方を壁に囲まれ、石畳の広い空間が広がっていた。先ほどまで走っていた黒い回廊が案外近い場所に見える。……辺り一面には何もなかった。ただ一つ、広場の中央には石で作られた巨大な台座と……。
「……シアング」
思わず呟いた声は震えていた。
台座の上に据えられたのは巨大な十字架。その十字架に縫い付けられるように吊るされていたのは、紛れもなくシアングの姿だった……。
シアングの姿は、最後にあったときとはかけ離れ、変わり果てていた。
エルバスの塔で再会した頃のように衣服は汚れていたのは同じだったが。──髪は乱れ、俯いているために表情はわからないが、前髪の隙間から僅かに見える唇はガサガサに荒れていた。水平に伸ばすようにベルトで十字架に固定された両腕、左手の掌は太い杭で打ち付けられ、さらに視線を落とせば両足の太ももも槍と杭によって打たれ、周囲には既に乾ききった血のあとがあった。
「シアング……?」
ルノは無意識のうちに確認をするように名前を呼ぶ。何も反応はない。
「シアング」
ほんの僅かに、シアングの髪が風に揺れた。──いや、風ではない。
「……シアング、シアング! シアング!!」
それが彼の精一杯の反応だと気付いたとき、ルノは台座を駆け上っていた。傍によると濃い血のにおいがしたが気にはならない。足の戒めに触れないように注意しながら背伸びをし、限界まで手を伸ばしてシアングの前髪を掻き分ける。
「……ルノ……。」
弱弱しい声だった。
前髪の下で、優しい金色の瞳がルノを見下ろしていた。ルノは思わず息を詰まらせる──殴られた痕が頬と目の下に紫の痣となって残っていたからだ。それでもシアングは、まるで泣くように笑っていた。
*
トアンは入り組んだ廊下を抜け、階段を駆けおりて今度はぐるぐると長い長い螺旋階段をのぼっていた。メルニスは螺旋階段の下で別れ、隠れているように指示をだした。彼女も一緒に此処から連れ出すべきだとトアンは考えていたのだが、メルニスは首を縦に振らなかった。
「わたくしはこの国の次期女王。逃げ出すわけにはいきませんわ。それにトアン様がゼロリード様と剣を交えるならば……なおさらのこと。どうかわたくしのことはお気になさらず、シアング様をお救いくださいませ」
ふわふわとした柔らかさ、世間知らずで温室育ちだと思われた少女、メルニスのみせた強い意志にトアンは頷くことしかできなかった。ここに居る以上、「君にも責任が追及されるよ」と言ってみても、「わたくしは甘んじて受けましょう、許嫁の立場で侵入者の手引きをしたことは確かですわ」、と言い、
「それでもシアング様をお救いしたいのです。シアング様にわたくしは必要ではないかもしれないけど、まだお傍において欲しいのです……」
そう言ってメルニスは少しだけ悲しそうに笑った。
「メルニスさん……」
「ご安心ください。責任を取って自害、なんてことはしませんわ。わたくしは生きなければならないのです。……そしてセイル様をお守りしなくてはいけません。それがわたくしができるシアング様への唯一の恩返し……。」
「恩返し……?」
「さあ、もう行ってくださいませ」
トアンの心に小さな疑問を残したまま、メルニスが頭を下げた。トアンはほんの少し迷ったが、彼女がそう決意する以上何を言っても邪魔になるだろう、ならば自分は自分にできることをすべきだという結論に至り、隠れているようにと言い残して一人螺旋階段に向かって駆け出した──というわけだ。
(……みんな、大丈夫かな)
窓の外から見える景色は、もう大分高いところに居ると教えてくれた。城と谷を越えて向こうに広がる森、草原までもが見渡せる。
(ルノさん……大丈夫かな。一人にさせちゃったけど……でもルノさんは心が強いから、かえって過保護にしないほうがいいって思ったんだし、もう後戻りはできないんだ)
走りながら横目で見る窓からは、処刑場には深い霧がかかっていて何も見えない。──いや、霧が晴れたとしても、逆に中途半端な高さの所為で処刑場の様子は見えないだろう。
(……もっと高く。この螺旋階段の先にゼロリードさんがいるんだから)
全速力で階段をのぼり続けているお陰で、身体中が熱い。汗が玉となって転げ落ち、呼吸も激しい。頭の芯がぼうっとしびれて、何も考えられなくなるような、けれども仲間の心配をしてしまい──無駄だと考え付き、そして再び夢中で走り続けるループにトアンははまっていた。……しかし、完全に思考能力がぼやけていたわけではない。
(この城、初めて見たとき捻じ曲がった奇妙な形って思った。この長い螺旋階段はきっとあの時みた城の概観の、一番歪な部分なんだ)
……その歪みの上に君臨する、狂気に堕ちたゼロリード。
(国民もゼロリードさんを慕ってた。幸せそうな国だと思った。……けど、シアングは暴力を受けてた。……どこからこの国は歪んでいっちゃったんだろう。どこで何を間違えたんだろう……シアングから『影抜き』のセイルさんが生まれたから? 奥さんを封印したから……? ……!)
「うわ!」
思い至った思考にはっとした瞬間、トアンは足を滑らせた。なんとかバランスを整え、後ろ向きに転げ落ちることは防いだが、逆に脛を思い切り階段にぶつける。
「……つつ……。……そうだ、そうだった」
思わず涙目になるが、先ほど見つけた考えをまた見失うことはなかった。──愛するものを失い、狂気に魅入られた人物はゼロリード以外にもいる。キークだ。愛するものが見えなくなる、それだけで堕ちる可能性は十分にあるのだ。
(でも、そこまで……? オレにはまだわからないや。……一年前、ウィルを刺したとき、チェリカと離れ離れになった時、兄さんが一度死んだとき、シアングが操られていたとき、ルノさんが氷に閉じ込められたとき……確かに辛かった、悲しかった。チェリカとルノさんの背中を見送ったときもシアングが裏切ったときも、今に至るまでも何度も大事な人を見失いかけたけど、狂気に魅入られるまではいかなかった……そうだ。どこかでまた逢えるって思ってたから、そう信じていたからオレはまだ平気でいられた)
……もし、それが永久の別れだとしたならば。
(……そうしたら、オレは……オレも……?)
──チリ……
ふと、心のどこかでまるで氷が溶ける瞬間に立てる音が聞こえた気がした。
(……いや、こんなこと考えてる場合じゃない)
しかしトアンはすぐに忘れた。今はこの階段をのぼりきることを考えなければ。……それだけを考えていればいい。トアンは思い出した足の痛みを耐えながら、再び永遠に続くような螺旋階段をのぼり始めた。
壁と階段と、ぼんやりとした蝋燭の灯り。たまに窓。それだけがトアンの視界に収まっていた。音は自分の息遣いと足音だけ。その繰り返しが何度もループし、そして唐突にループは終わった。……最上階へたどり着いたのだ。
「……うわ」
唐突に開けた世界に、トアンは思わず声を上げた。階段の先には、左右に伸びる廊下と目の前に巨大な扉が一つ。等間隔で灯る照明が右も左も遥か遠くまで続いていた。暗がりで廊下の果ては見えない。ただ、遠くになるにつれおぼろげに霞む照明が、その距離を教えてくれる。……しかしトアンは右へも左へも進路を進めず、ただ正面に聳え立つ、威圧感を纏った扉を見上げた。……天井もとても高い。扉の先は、やはり見えない。
(オレの力で開くかな……あ!)
トアンが扉に手をかけようか迷っていると、音もなく扉が開門し始めた。なんの抵抗もないように、するすると滑るように──そして、開ききると軋んだ悲鳴をあげて制止する。扉の中は廊下と同じようにうす暗かった。やはり等間隔の照明が奥に続いていて、違うのはその最奥の玉座と床の赤い絨毯がはっきりわかる明るさだった。
──その玉座の上に、男が腰掛けていた。
肘掛に頬杖をついて足を組み、鋭い眼光を押し殺すように目を細め、扉から一歩踏み出したトアンを射抜く。数段高みにある玉座から伝わる威圧感に、トアンは思わず足を止めそうになり──動かした。
男は何も言わない。トアンも口を開かなかった。ゆっくりと踏みしめるように近づいて、絨毯の上に一瞬だけ足跡を残していく。目は絶対に逸らさずに笑顔を貼り付ける男を見つめ続け、そして玉座の下にたどり着いたとき、トアンは膝を折った。
──屈したわけではない。これは礼儀だ。なにしろ相手はゼロリード。現雷鳴竜、そしてこの国の王なのだから。
「ゼロリードさん、お久しぶりです」
「ああ久しぶりだなトアン……お前さん、随分なご登場じゃないか。地下から侵入するたあな」ゼロリードが足を組みかえる。
「……しかもだ。俺のプライベートな部屋までも入り込んで……躾がなってないのかね?」
「ごめんなさい。お城の中を荒らしたことは謝ります」
「ふうん。……用件は?」
「シアングを解放してください」
「無理だな」即答だった。トアンが反論するよりも早く、ゼロリード両手を組んでくるくると回しながら上機嫌で続ける。
「もうすぐだ。カナリヤに会える。あいつをあの忌々しい封印から助け出してやれるんだ」
「自分で閉じ込めたのに! そんなにシアングを殺したいんですか!?」
「……うん」
ゼロリードが小さく唸り、ため息をついた。その様子にトアンは理不尽な怒りを覚て叫ぶ。
「心が痛まないんですか!」
「……痛むさ。そりゃ、自分の息子だ。俺としちゃそこまでする……いや……」
……それは、実に不可解な反応だった。ゼロリードはしきりに首を傾げ、自問自答を繰り返す。その様子を見ていたトアンは怒りの感情以外にも自分の心に潜むものを見つけた。──異変だ。
(何だろう……何かおかしい。この城で前にあったときも、塔のときとも違う?)
すると、暫く考え込んでいたゼロリードが虚ろな瞳でぽつりと呟く。
「……カナリヤ。俺は、どうしてもお前を食い殺すのはいやだった」
「ゼロリードさん?」
──ゴーン!
トアンが恐る恐る問いかけたその時。鐘の音がすぐ真上から降ってきた。かなりの音量に空気が震え、絨毯の床が小さく震える。ゴーン、ゴーンと続く音に部屋中が悲鳴をあげ、トアンは思わず両手で耳を塞ぎかけ──手を止めた。鐘の音に混じって何か聞こえる。見れば、ゼロリードが玉座の上で笑っていた。笑い声はほとんど鐘の音に塗りつぶされていたが、その姿は狂気としてトアンの目に映る。
「……まるで、レクイエムだ」鐘の余韻の中、ゼロリードが笑いながら言った。すぐさま鳴り響く次の鐘の音が、笑い声をもみ消そうとする。
「この鐘はシアングの死を悼んでいる。そして嘆いている……そう思わないか?」
「思いません!」
叫んだ声は伝わっただろうか。高い天井の上を狂ったように響く鐘が暴れ周り、びりびりと揺れる空気が肌に痛い。
「俺は思うな。……なんだ、全てあいつの言うとおりじゃないか。最初からこの世界は狂っていたのかもしれない……」
──ォォン……。長引いた余韻を残し、ようやく鐘の音が溶けて消えていく。ゼロリードは玉座から立ち上がって両手を広げ、目を閉じていた。まるで何かを受け入れるように。
──一度は静まり返った大気が、再び震えたのはその直後だった。
「……ふふ、はは、はははははは」
体勢は静止したままのゼロリード静かな笑い声に、トアンはゆっくりと剣の柄に手を当てた。……そこで頬に冷たい汗が流れているのに気付く。自分自身を安心させるために、跪いた姿勢のまま十六夜の柄を握りこんだ。
──最早、話し合いの手立てはないと悟っていた。最初からなかったのかもしれなかった。ゼロリードは盲目的なまでに、シアングを殺すということに固執している。……説得の余地はなかった。
「……お前さんの考えている通りだよ、トアン」
「……はい?」
「俺がまともじゃないって考えてるんだろう。……はは、はずれじゃあ、ない。俺の心は既にヒトではない。……気が狂うほどの長い年月を越え、ヒトの血肉を喰らい……。そんな俺へのせめても哀れみだとでも思って、さっさと消えてくれ」
「こ……断ります」
「シアングは俺の息子。どうしようと関係ないだろう?」
「……シアングはシアングです。親が勝手に子供を、しかも自分の都合で殺すなんてそんなの──」
「やれやれ……そろそろ時間なんでね、手身近にしようや」
トアンの言葉の終わりを待たず、スラリ、とまるで剣を抜くようにゼロリードの瞳が開かれた。……次の瞬間、ゼロリードは素早い動きで空を薙ぐ。──切り裂かれた空が刃となって、トアンの元へと襲い掛かってきた! トアンは床を蹴って後ろに跳ぼうとするが、毛の長い絨毯によって思うように逃げることがない。
「くっ……そんなの駄目です!」
しかし既に掴んでいた十六夜を引き抜き、続きの言葉をこめてゼロリードの放った刃を正面から叩き折った。しゃおん、軽い鈴のような音と一緒に赤い光が部屋を踊る。
「……やはり妙な剣を持っているな? 子供のおもちゃにしては危ないのではないか」
「オレの……十六夜は真実を見出す剣です!」
二撃、三撃をなんとか同じように弾きながらトアンは答えた。弾いた衝撃で滅茶苦茶な方向に拡散する衝撃派が、絨毯を切り裂き蝋燭のともし火をかき消す。
「面白いな。その赤い棒切れで俺の狂気も終わらせてくれるのか?」
「あなたをとめることが、オレのするべきことですから」
「……ふん。立派な売り出し文句を言うだけのことはある」いくらやっても無駄だということに気がついたのか、ゼロリードが面倒くさそうに頭を掻いた。
「あァ……邪魔だ邪魔だ」
ちぇっ、と舌を鳴らし、今度はゼロリードが手を振り翳す。──なにか来る、トアンがそう思った瞬間、頬のすぐ傍を熱い何かが通り過ぎた。一拍置いて、心臓の音にあわせて血が噴出す。
(雷の刃……!?)
「……夢幻道士。魔力を一切持たぬ、この世界でもっとも人間らしく、もっとも神や精霊たちとは遠い存在」ゆっくりとした速度でゼロリードが数段の高さからおりてくる。その右手の指には、いつしかシアングが作り出した雷の剣を数倍小さくし、さらに数倍鋭利にしたと思われるナイフがいくつか踊っていた。
「……つまりだ。魔力を持たないお前さんをさっさと片付けるには、こんなんが効果的面ってことだな」
左手にはバレーボールほどの大きさの黒い球体を持っていた。いや、掌から少し浮いているところをみると持っていたよりもあったという表現のほうが正しい。ボールの両面には龍が這うように小さな黒い電流が走り、禍々しく光っていた。……ゼロリードは振りかぶり、ナイフを寸分の狂いもなくトアンの眉間目掛けて放つ! ……しかし先ほどの衝撃派と同じように、トアンは剣でナイフを弾き返すことができた──が。
──一旦床に落ちたかと思ったナイフが、突如浮き上がって再び向かってきたのだ。咄嗟ののことで身動きができず、無防備な姿勢のままのトアンに、どん、と誰かがぶつかった。
「ぴゅいいいいいいい!」
鋭い小鳥の囀りのような鳴き声が部屋に響いた瞬間、トアンの周りに温かい空気が流れ、それはすぐさま光の壁へと変化してナイフを止めた。何が何だかわからないトアンに、群青色の瞳が笑いかける。そうしてようやく、トアンは自分を助けてくれた人物の正体を知った。
「トトさん……!」
「遅くなってしまってごめんなさい」
トアンを支えたままトトが笑った。その肩に乗ったコガネの黒珠の瞳が細められる。トトの頬は赤く、少しだけ息を切らせている。どうやら階段をのぼりきったあと、そのまま部屋の中へ飛び込んできてくれたらしかった。
「あ、ありがとう」
「……コガネ」
トトが指示をだすと同時に、コガネが尾を振った。するとトアンたちを覆っていた光はふっと消え去り、力を失ったようにナイフが絨毯の上にトンと刺さっていく。
「……なんだァ、お前さんは。そういや最初にトアンが来たときにいたな」
突然の戦いへの侵入者にゼロリードが興ざめしたようにため息をついた。左手の球体を指先でくるくると回してトトとコガネを値踏みするようにみる。
「ゼロリードさん」
トアンを離し、トトが真っ直ぐにゼロリードを見返す。その手が首筋を辿り、胸元の金の鎖のネックレスに触れた。……それを認めたのか、ゼロリードの瞳が細められる。
「そいつは」
「あなたが、セイル兄ちゃんに渡したものです。今は俺がもらいましたが」
「……ふうん? あいつ、それをついに捨てたのか。雷鳴竜の『影抜き』という出来損ないからでた不良品のパーツに、お情けで渡してやった家族の絆だったがな」
「兄ちゃんは不良品のパーツなんかじゃない。シアングさんも、出来損ないなんかじゃあない」くく、とゼロリードが笑うのに対し、トトは真摯な表情を崩さずに答える。
「……それはあなたが一番にわかっていることでしょう?」
「あ?」
「シアングさんがどうしてあなたの理不尽な命令を聞き続けているか、本当にわからないんですか」
「……さあてね? 反抗期の息子の心境なんざ、さっぱりだ」
「……では」
一旦言葉を切って、トトがゼロリードを睨み付けた。穏便な彼の珍しい態度に、トアンは唖然とする。十六夜が出番を逃した不満さゆえか、チリチリと火の粉を上げたが気にしなかった。
「封印されている奥さんが、すでに死んでいるのはご存知なんですか」
その一言に、ゼロリードの瞳が見開かれた。
「……え? ト、トトさん、それ本当?」
「本当です。レインさんが言ってました。封印の中にあったのは死体。……殺されてから、封印されたようだと」
「……馬鹿な」
沈黙の後、鼻から笑うように呟いたのはゼロリードだ。ばかばかしい、と頭を振りながらも、その声に若干の動揺が混じっていることはトアンにも分かった。
「真実です。……封印は解かれました。あなたの奥さんは死体として封印をされていました。シアングさんを殺す必要はもうないでしょう」
残酷な内容を顔色も変えず、はっきりと言い放つトトの瞳は静かな怒りに燃えている。……セイルとシアングに対するゼロリードの言葉が気に入らなかったのだろうか、それともゼロリードのやり方全てが許せないのだろうか。
「なにを……。カナリヤが死体なはずはない。何故だ、何故死ぬ必要があった? 俺は確認しているんだ。カナリヤが封印されるほんの直前まで共にいて、いつか再び会う事を約束した。それなのに……何故?」
「……いい加減に目を覚ましたらどうですか」
「なにを……なにを馬鹿なことを! そうだ、カナリヤはまだ封印されているのではないか? シアングを殺さなければ、本当のカナリヤは……」
「カナリヤさんは死んでいます」
「嘘をつくなあああ!」
ゼロリードとは対照的に、凍て付くような声でトトが言い放つとゼロリードは頭を抱えて叫んだ。トアンがそっとトトの表情を窺ってみると、トトの群青色の瞳の奥でちろりと小さな紫の炎があがっていた。
「……あなたは可哀想なヒトですね。自分の最愛のヒトを遠ざけて、大事な家族まで手にかけようとして……一刻も早く、処刑を中断してください。シアングさんまで失ったら、あなたは本当に愚かな竜になる」
「黙れ小僧! ゲルドは嘘を言わん! あいつの指示通りにすれば、間違いはない!」
怒り狂ったゼロリードが、左手に持っていた球体を投げつけた! 球体は空中で中央から裂けて広がると、牙のようにトトの首目掛けて飛んでくる。──それは風を超える凄まじい勢いで、トトが避けることはできない。
「──うわ……!」
トアンの隣に立っていたはずのトトがあっという間に吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。
「ト、トトさん……!?」
衝撃で暗い室内に埃が舞い上がる。トアンは埃を手で払い、トトの姿を確認した。
(まさか……首が……)
トアンは最悪の事態を想定したが、しかし球体がトトの首を挟みきることはなかった。
──トトの足元にいるコガネの体毛が、淡いピンク色に変わっている。毛を逆立て爪をたて、その周囲ではまるで電気がショートするようにパチパチと光がはじけていた。
(コガネが……トトさんを守ってくれた)
先ほどもそうだが、今まで命の危機は何度かあったが、ここまではっきりとコガネが動くのをトアンは初めて見る。小さな身体でゼロリードの魔力に精一杯抵抗しているようだ。長い尻尾がゆらりと揺れる。
「コガネ……!」
掠れた声でトトが叫ぶ。喉も無事なようだが、牙のような形にがっちりと首を壁に固定されていて身動きができないようだ。トアンが駆け寄ってそれに触れるがびくともしない。
「……ふん、でかい口を叩くワリにはたいしたことないな。なんだか知らんがそんなものに守ってもらわないとそんなザマか……」
先ほどの動揺を捨て去り、形勢の逆転を悟り薄い笑みを浮かべたゼロリードが右手を翳すと、コガネの爪が絨毯により深い傷をつけた。──少しずつ、コガネが圧されていく。トトが苦しそうに顔をしかめて歯を食い縛る。
「トトさん、トトさんしっかり!」
「……っく……」
咄嗟に十六夜で叩いてみるが、キン、という鋭い音とともに刃が跳ね返される。トアンはどうにかして外そうと試行錯誤するが、牙はビクともしない。段々とトトの首に、ほんの少しずつ食い込んでいく……内側は鋭利な刃物のようになっているようで、トトの首筋にうっすらと血が滲んでいく。
(このまま動脈が切られたら、トトさんは……!)
パニックにトアンの頭の中が真っ白になった。そしてその白い世界に、鈴の音が響く。幻聴? いや現実だ。
その瞬間、不意に世界が止まる。
──ちりりん。
すぐ背後から音が聞こえた。トアンが振り返ると、そこには小さなぬいぐるみの猫が座っていた。景色はセピア色に染まり、猫とトアンだけが唯一色を保っている。トトは苦悶の表情を浮かべたまま固まっていた。コガネも、牙も、ゼロリードすら。
「久しぶりだにゃ」
猫が目を細めた。──片目を。猫の右目は、大きな眼帯で覆われていた。
「え……え?」
「トトを死なせるわけにはいかないにゃ」
てて、とトトがトアンの脇を通り過ぎ、トトの首を戒める牙に軽く頭をこすり付ける。
「あ、あの、アルライドさんだよね……?」
「そうにゃ。……本当に、久しぶりだにゃ、トアン」
トトから離れ、猫が尻尾を揺らした。
「どうしてまたその姿に?」
「……俺は、ずっと後悔をしてたにゃ。これは俺の罪滅ぼし……。」猫は緑色の光を宿すボタンの瞳でトアンを見て、言う。
「トアン、竜たちは助けにこないにゃ」
「……え?」
「『この時代』の竜たちは、いいや、俺も誰も間違いに気付けない。堅苦しい決まりに縛られて、誰もが本当に大事なことを見失ってる」悲しそうに瞳を伏せ、猫は呟く。一拍置いてからトトを見上げて、囁くように続けた。
「トト、君の瞳は真実を見届けるための瞳。しっかりするんだ、目を閉じるな、見失ってはいけない。君にしか見届けられない」
「アルライドさん……?」
「……トアン。君も、見失ってはいけない。守りたいものと、守らなくてはいけないものはイコールじゃないと気付くんだ。……運命にのまれないで」
「え……?」
「俺は……あんな運命、間違ってると思う」
急かされるように、けれどもとても悲しそうに猫はトアンにそう告げると、てん、と軽やかにジャンプした──そして次の瞬間には溶けるように消える。……するとざらざらと砂が零れ落ちるような音とともに世界に色が重ねられていき、音も時間も再び動き出したことをトアンは実感する。
(……今のは……? アルライドさん、だよな。竜たちはこないっていってたけど、なんだか他にも気になることを……)
「……ううっ」
「! トトさん、大丈夫?」
トアンの思考はトトの呻き声に中断された。アルライドの登場があまりにも突飛すぎる上言われたことが理解できなかった。トアンは動揺し、今の一瞬を夢か幻であったかのように錯覚する。腑に落ちないことも幻の一言で片付けそうになり……しかし。
(……違う。今のは幻でもなんでもない。今の一瞬は確かにあったこと……)
トアンは──トトの首を戒める牙が光を失い、鋭さのない、ただの拘束するため物体になっていることに気付いた。──猫が頭を擦りつけたからだろう。
(……思い出せ。突飛すぎて流しそうになるな。アルライドさんはトトさんを死なせるわけにはいかないと言って……運命がどうのかこうのかって。……だめだ、今は余計なことを考えないようにしないと)
トトの首を戒める牙の刃はなくなっている。しかし壁にめり込んでいてトトは身動きができない。コガネはまだ爪をたてたまま、小さく唸っている。トアンが触れてみると牙はずしりと重く、今度はそれがトトの首や肩に圧し掛からないように支えているようだ。
「オレの力じゃだめだ、外せない……どうしよう」
「……。」
眉を寄せ、トトが薄目を開く。意識はあるようだ。
「──うん?」今更ながら変化に気付いたらしい、ゼロリードが小さく唸った。
「おかしいな、俺の魔法をとばすなんて……そのチビじゃあないだろうし、トアンは夢幻道士だし……ま、いいか」
そんなゼロリードの呟きを聞き流しながら、トアンはコガネとトトの状態を確認する。一人と一匹は動かせる状態ではないのが明らかだ。
「……、さ……ネを……。」
トトがトアンを見て何か訴えている。喉に対する圧迫が強すぎて言葉になっていないが、トアンはその意思を汲み取った。
(コガネを安全なところに……? ……でも、だめだよ)
うんと頷いてトトを安心させてから、トアンはコガネに言う。
「……コガネ、トトさんを頼むね」
「ぴゅい」
コガネの爪がほんの少しだけ鋭くなる。刃を失ったとはいえ、ゼロリードのつくりだした牙を支えるのはやはり相当大変なのだろう。トトが講義するように口を動かすがトアンは応えなかった。
(決めただろ。オレ一人でもやるんだ。……トトさんが言うようにすでに奥さんが死んでいるなら、もうシアングを殺す意味がない。それを認めさせないと……!)
トアンは立ち上がり、再びゼロリードを見た。十六夜の感覚を確かめる。アルライドの言葉は恐らく正しいのだろうと納得していた。……つまり、竜たちはこない。理由はわからないが、こない以上頼れない。
「あん? まだやるのか」ワザとらしく驚いたようにゼロリードが言う。
「とっとと終わりにしようぜ? お前と違って俺は忙しいんだよ。処刑を行わないといけないからな」
「……させません」
「助っ人がそんな状態で、お前一人で俺に敵うとでも本気で思っているのか? それともなんだ。竜たちがくるのか」
「竜たちは……きません。……でもオレは退かない。シアングを見す見す殺させるわけにはいかないんだ!」
「やれやれ……舐めるなくそガキ!」
ゼロリードが吠えた瞬間、白い霧が彼の身体を隠してしまった。……しかしトアンは動かなかった。霧に映る影がみるみる巨大化していき、ヒトから別の姿に変わるのが分かったからだ。
『時間がないと何度も言わせるなよ、人間風情が』
ギャオオオン、罅割れた鳴き声が響くと霧が恐れるように晴れ渡った。……そこに居たのは、高い天井の下、それでも窮屈そうに翼と身体を縮め、獣が獲物に対してとる構えをとったゼロリードの竜となった姿だった。以前エルバスの塔で見たようにその姿は黒い鱗に覆われ、時折赤紫色にキンと光り、三本の指には鋭い鉤爪。縦長い瞳孔を持つ狂気の金色の瞳とずらりと並んだ研ぎ澄まされたナイフのような牙が、見るものに圧倒的な存在感と恐怖感を植えつける。
しかしトアンは恐れることなく間合いを取った。
『おや、死ぬ気かい』
「……圧倒的すぎて全然怖くないですよ」
『ふん、良く言うな』
「あなたが正気に戻るまではね……!」
言うや否や、トアンは絨毯を蹴って駆け出した! 完全にトアンを甘く見ているゼロリードが首を伸ばすがその脇を駆け抜け、玉座を押しつぶして立っているその右足に思い切り振りかぶった一撃を叩き付ける。
しゃらん──!
澄んだ音が部屋に響き、その音自体が透明な刃となって右足を切りつけた。さらに赤く焦がすように燃える刃が肉を裂き、しかし骨まで切断することは敵わずに刃が止まる。トアンは躊躇なく引き抜いて、その瞬間振り下ろされてきたゼロリードの右手に剣を向けた。シュパン、……ドスン! 鋭い音の後に鈍い音が続く。右手の三本の指のうち、トアンが切り落とした中央の指が絨毯の上に転がった音だ。
『──の、ガキ……!』
ゼロリードが怒り狂ったように吠える。トアンの頭は命の削り合いの戦闘に高揚していたが、その心は冷静だった。
(今のは、まぐれだ。オレをただの人間だとゼロリードさんが油断してたからだ。こんな幸運、何度も続かない)
罪悪感を感じないわけではなかったが、浸っている余裕がないことも理解していた。トアンは素早くゼロリードから離れると相手の出方を窺う。傷口から血は出ているものの、対したダメージにはなっていないようだ。
『邪魔をするな! あともう少しなんだ!』
「奥さんはもう死んでます!」
『カナリヤは死んでなどいない! そんなはずはない!! 俺を一人にしないと約束をした! 必ず帰ると!!』
がばりと大口を開けたゼロリードの口の中で光が収束していく。トアンは素早くその狙いが自分だけであることを確認すると、迎え撃つように剣を構えた。
「それでも……カナリヤさんを封印したのはあなただ。自分の衝動から逃れるために封印して、そして死んだという事実を認めない。そんなのシアングも殺そうとしている言い訳にはならない」
『黙れ!』
「黙りません! このままシアングを殺させるわけには──」
『うるさい、うるさいうるさい!』
ゼロリードの口から勢い良く光の玉が発射された。ギュルギュルと激しく回転しながら向かってくるそれを弾き飛ばそうとトアンは振りかぶるが、それは予想外の軌道でトトとコガネの方に向かっていく。
「──トトさん!」
咄嗟に身体をねじり、十六夜を横に薙いでなんとか玉を弾き飛ばす。重い衝撃にびりびりと手が痺れたが、なんとか十六夜を取り落とさないように手に力をこめる。玉は壁を破壊し、空に舞って散った。
(よかった……トトさんたちを守れた)
吹き込んでくる風の強さと広がる空と大地から、現在地がかなりの高さにあると今更ながらトアンは認識した。──その一瞬の油断の間で、ゼロリードの尾が間近に迫っていることに気付くことができず……対応が遅れた。
「……っぐあ!」
重い衝撃に一瞬何が起きたか理解できず、トアンは目を見開く。時間がスローモーションのようにゆっくりと流れていく中で、舞い散る瓦礫と目の前に広がる空、ぐるんと視界が回ると眼下に大地が広がっている。……そこでようやく、城の外に投げ出されたことをトアンは悟った。
目の前を非情にゆっくりと瓦礫の破片が舞っていく。遥か下のベルサリオの都市では、喪に服した街中から白い煙が立ち上っている。パンでも焼いているのかと思いきや、ほんのりと鼻をくすぐったにおいは香だった。死者を悼む様な、色の褪せたにおい。
(──オレ、このままじゃ……死ぬ?)
香なんて焚かないで、まだ気が早い、シアングはまだ生きている。けれどもこのままでは自分が、それはつまりシアングも助かることがない……?
(……そんなのいやだよ)
ゆるりと頬を風が撫でていく。甘い香りがふっと消えていく。このままでは自分も消えてしまうのだろうか。
(そんなのいやだよそんなのだめだよ、ああ、でもオレこのままだったら間違いなく、助かることもなく、だってずっと下のほうに城の屋根があるけれど何メートルあると思ってるんだ、このままじゃオレは)
パニックに陥る自分と冷静に見つめる自分の複数の主観。酸素を吸っても吸っても入ってこない、まるで自分が真空状態に居るような錯覚。……知らず知らずのうちに、涙が滲んだ。無力な自分への後悔か、ここで終わることへの悔しさかはわからない。
(いやだよ)
涙が泡になり、上空へと舞い散っていく。
(……いやだよ! 死にたくない、まだ死にたく──)
──その時、非情にゆっくりと経過していた時間が神の慈悲から離れ唐突に動き出すのを、痛いほどの風圧と肌を切り裂くように冷たく鋭い風の悲鳴を聞いてトアンは理解した。ぐんぐん迫ってくる眼下の景色、とてつもない恐怖感と不快感。
──オレは もう 死
──バスンッ……
凄まじい衝撃に身体が仰け反った。あれほど冷たく痛かった風が身体を切り裂くことを諦めたようで、むしろ周りの空気が温かかった。何が起こったのかわからず、トアンは呆然と瞬きを繰り返す。……眼下に見える景色は先ほどよりほんの少し大きくなっていたがまだ遠い。……そして、それ以上大きくなることはない。
「……あれ? なんで……?」
呆然としたまま呟いたとき、しっかりと腰に回された二本の腕にやっと気付いた。黒のアームウォーマーに包まれた白い小さな手。足元の不安定な感覚と一緒に、うなじにかかる柔らかい髪の毛にも気付く──と、耳元で優しい声がした。
「危なかったねえ、すごい危機一髪だよ。もー、なにやってるの? トアン、私がいないと駄目だね」
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