九章 ⑧『じいちゃん登場』
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最初はクラクションだった。注意するというより、威嚇するような長いクラクション。それからエンジンが獣のように吠え、タイヤが甲高い悲鳴を上げ、群がる吸血鬼につっこむようにして体育館に迫る!
というのはあたしの想像。
それはともかく……
入り口からヘッドライトが差し込み、吸血鬼の何人かを体育館の中にはねとばしながら、黒のベンツが体育館の中に飛び込んできた。
運転席にはサングラスに、黒のレザーグローブをはめた芳子ばあちゃんの姿。車はそこで急ブレーキをかけ、あたしとマーちゃんが座り込んでいる鼻先で止まった。
一瞬、あたしは芳子ばあちゃんに殺されるのかと思ったほど。ピカピカに磨かれた銀色のバンパーにはあたしとマーちゃんの姿が歪んで写っていた。
と、ドアがバンと開き、懐かしいじいちゃんの声が聞こえてきた。
「若君!ご無事ですか?」
て、ふつう孫の心配が先じゃない?
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「おう、又兵衛か」
若君は振り返らずにそう言った。
「はい。若君様の応援に馳せ参じました」
じいちゃんはそう言って、車の中にちょっと戻った。それから中でごそごそとやると、中から大きな刀を引き出した。若君がいつも持ち歩いていたあの大きな刀。それを持ち出し、若君の手元に捧げるように差し出した。
「これをお持ちしました」
若君はじいちゃんを見下ろしてニッと笑い、刀をがっちりとつかんだ。
「ようやった、又兵衛。ほめてつかわすぞ」
「へへぇ、ありがたき幸せ」
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「あのさ、その変な劇はまだ続くの?」
藤原君は銃を若君に向けたままだ。その背後には四天王も合流して並んでいる。
「いや、すぐに終わる」
若君は鞘からスラリと刀を抜いた。磨きぬかれたまばゆい銀色、それは優美なカーブを描いて、鋭い切っ先までなめらかにつながっている。刃のあたりにはゆらゆらとした波のような紋様があり、そこだけが青白く不思議な色を放っている。
本当にきれいな刀…それには美しさがある。それだけでなく、何かの力、意志のようなものさえ感じられる。
「これは特別な刀でな、おまえたちのようなものを切るために作ったのじゃ」
チャキッと音を立て、若君はその切っ先を藤原君に向けた。
「その首、もらい受ける」
「そりゃ無理だって。俺たち不死身だもん」
そしてまたあの血の空間が広がった。
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