七章 ⑧『消えた若君……』

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 どうしよう?どうしたらいいんだろ?なんて切り出そう?


 あたしは部屋に引き上げてから、もう何度目だろう、そう考えた。昼寝したせいか、緊張しているせいか眠れなかった。そして夜中の一時を回ったところで、また同じことをグルグル考えていることにイライラがつのり、あたしはついに起きあがった。


「もうダメ!」

 あたしってのんびりはしてるんだけど、これで白黒はっきりつけないとダメな性格なのだ。覚悟を決めてジャージの上下に着替えると、若君の和室へと階段を下りていった。


 もう先延ばしには出来ない!


 ええい、とにかく対決だ!


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「夜遅くにすみません」

 あたしは若君のいる客間の前、庭のぐるりの廊下から、ふすま越しに声をかけた。雨はすっかり上がり、雨雲も消え、今は青い夜空にすっきりとした月が昇っている。

「あの、どうしてもお聞きしたいことがあってきました」


 やっぱり若君はいないのかな?分かんないけど、じっと待つ。でも出てこない。


「お聞きしたいことがあってきました」

 もう一度、さっきよりはちょっと大きな声でそう言った。それからふすまの向こうの気配に耳を澄ます。


 やっぱりいないみたいだ。寝てるとは思えないんだけど……


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「あの、ちょっと失礼しますよ」

 あたしはそう言ってから、ふすまに手をかけた。もし中にいたら、たぶん怒られるだろう。でも返事をしないのがいけないのだ。そのまま静かにふすまを開けた。


 ガラーンとしていた。真っ暗な部屋の中に静かに月の光が射し込む。部屋の中に若君はいなかった。ただ畳が並んでいるだけ。そして上座の板の間にあるはずの、日本刀も消えていた。


 やっぱり出かけてるんだ……


「失礼しました」

 一応そう声をかけてから、もう一度ふすまを閉めた。


 やっぱりいなかった。たぶん出かけているのだ。

 でもどこへだろう?

 まさか血を吸いに行ったのかな?


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 あたしは部屋に戻り、家の中の気配に耳を澄まし、若君が帰るのをしばらく待っていたが、夜が明ける頃には再び眠ってしまった。

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