第七章 神のいない教会

七章 ①『教会』

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 あたしたちはそのまま教会へと向かった。平坦な農道を途中で曲がり、丘の上の方へとなだらかな道を登ってゆく。


 雨はとりあえずあがったけれど、濡れたジャージがへばりついて、なんともいえない嫌な感触だった。それに靴も靴下もぐっしょりと濡れて、それがなんか蒸してて、これもまた気持ち悪かった。


 でも復活したあたしたちはへっちゃらだった。もう手もつないでいない。二人並んでぐんぐんと坂を上っていった。


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 片側が崖になった坂道をしばらく登ると、途中から道の両脇に木の柵が現れた。白いペンキが塗ってある。このあたりから教会の敷地が始まっているらしい。さらに坂を登り最後に右に折れる急カーブを抜けると、目の前に巨大な教会が現れた。


「うわ。すごいね……」

 実はあたし、教会に来たのは初めてだった。とくに理由があった訳じゃなくて、たまたまその機会がなかったせいだ。この町は昔からキリスト教の人が多かったけれど、家はずっと神社の方だったのだ。


「そうでしょ。とにかく古いのよ」

 マーちゃんはそう言ったけど、あたしが驚いたのはその大きさだった。教会は平屋の石造りだが、その天井の高さはたっぷり二階分はあった。正面には巨大な木製の扉が一つあるだけ。でも馬に乗ったまま、二列で入れるくらいの大きさがある。


 教会全体の大きさは大きな体育館位で、その四隅には中世のお城みたいに、先の尖った塔がそそりたっている。そしてそれぞれの塔の先端には、真っ黒い鉄製の巨大な十字架が立っていた。さらに教会の屋根には、ガーゴイル、っていうの?不気味な悪魔みたいなのが膝を抱えていっぱい座っていた。


 はっきり言って、この教会こそ、吸血鬼が住むのにふさわしいように見えた。


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「パパぁー、帰ってきたよぉ!」

 マーちゃんは敷地に入るなり、空に向かって大声でそう言った。がらーんとした敷地でその声がかすかにこだまを返した。


「お帰りぃー!裏にイルよー!」

 姿は見えないが、かすかに英語なまりの日本語が聞こえてきた。


「裏だわ。行こ」


 マーちゃんに手を引かれるままに、ぐるりと教会の裏手に回ってゆく。教会のまわりにはぐるりと花壇が作られており、今はくちなしの白い花が咲いて、香水のような強い芳香をふりまいている。ちなみにこの花がくちなしとわかったのは、若君のおかげである。


 ぐるりと壁沿いに回り、教会の真後ろに出たところにマーちゃんのパパがいた。


 

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