六章 ⑨『バスターズの復活』

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「仕方ないよね……」

 歩きだしてしばらくたってから、マーちゃんがそう言った。


「そうだよね……これ以上は、あたしたちには無理だよ」

 あたしはなんとなくマーちゃんの手をつないだ。怖かったのと、寂しかったのと、そして自分の無力さが恥ずかしかったから。

 マーちゃんもあたしの手を握り返してきて、帰り道はそのままずっと手をつないで歩いた。


「あたし、パパに相談してみる」

「そうだね。マーちゃんのパパなら何とかしてくれるかも」


「そうだといいんだけど……」

 マーちゃんはそう言って、少し口をつぐんでしまった。

「その、やっぱり何か問題があるの?」


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「まぁね。パパはさ、ママが死んじゃってから信仰をなくしちゃったの」


 マーちゃんはそう言って、それから急に泣き出した。そのまま泣き崩れて、最後には地面にしゃがみ込んでしまった。

 急にいろんなことが洪水のように襲いかかってきたのだろう。とにかく涙があふれて止まらない、そういう泣き方だった。


「マーちゃん……」

 あたしもその傍らにしゃがみ込み、マーちゃんの体を抱いた。マーちゃんはあたしのジャージにしがみつき、いつまでもわんわんと泣いた。


 ここは農道のど真ん中。通りかかる人も車もない。あるのはまっすぐ延びた道と、広がる田んぼ、のしかかるような灰色の雲、いつまでも落ちてくる細かな雨の粒。


 こんな寂しい世界で、あたしたちは抱き合ってうずくまっていた。


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 やがて雨があがった。


 雲の切れ間から、弱々しい太陽の光が射し込み、世界をつかの間、明るく照らし出した。何本もの光の柱が地面から空までをつなぎ、雨上がりの空気が蜂蜜のような淡い金色に染まった。田んぼの緑が青々とよみがえり、あたしたちもまた立ち上がった。


「すっかりぐしょぬれだね」

 マーちゃんの涙も雨とともに乾いていた。


「ほんとにインフルエンザになっちゃうね」

「ねぇさっちゃん、家に寄っていってよ」


「え?教会に?」

「うん。そうしてよ。そしてさ」

「マーちゃんのパパを一緒に説得するんでしょ?」

 マーちゃんはえへへと笑った。


「そう。今はさ、事実を知ってるのはあたしたちだけだし、とにかく今は、できることは全部やらなくちゃ、ってそう思って」

「あたしも同じこと考えてた。後悔だけはしたくないよね」


 二人で力強くうなずきあった。


 こうして二人だけのヴァンパイアバスターズは不死鳥のごとく甦ったのだった!

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