六章 ⑨『バスターズの復活』
✚
「仕方ないよね……」
歩きだしてしばらくたってから、マーちゃんがそう言った。
「そうだよね……これ以上は、あたしたちには無理だよ」
あたしはなんとなくマーちゃんの手をつないだ。怖かったのと、寂しかったのと、そして自分の無力さが恥ずかしかったから。
マーちゃんもあたしの手を握り返してきて、帰り道はそのままずっと手をつないで歩いた。
「あたし、パパに相談してみる」
「そうだね。マーちゃんのパパなら何とかしてくれるかも」
「そうだといいんだけど……」
マーちゃんはそう言って、少し口をつぐんでしまった。
「その、やっぱり何か問題があるの?」
✚
「まぁね。パパはさ、ママが死んじゃってから信仰をなくしちゃったの」
マーちゃんはそう言って、それから急に泣き出した。そのまま泣き崩れて、最後には地面にしゃがみ込んでしまった。
急にいろんなことが洪水のように襲いかかってきたのだろう。とにかく涙があふれて止まらない、そういう泣き方だった。
「マーちゃん……」
あたしもその傍らにしゃがみ込み、マーちゃんの体を抱いた。マーちゃんはあたしのジャージにしがみつき、いつまでもわんわんと泣いた。
ここは農道のど真ん中。通りかかる人も車もない。あるのはまっすぐ延びた道と、広がる田んぼ、のしかかるような灰色の雲、いつまでも落ちてくる細かな雨の粒。
こんな寂しい世界で、あたしたちは抱き合ってうずくまっていた。
✚
やがて雨があがった。
雲の切れ間から、弱々しい太陽の光が射し込み、世界をつかの間、明るく照らし出した。何本もの光の柱が地面から空までをつなぎ、雨上がりの空気が蜂蜜のような淡い金色に染まった。田んぼの緑が青々とよみがえり、あたしたちもまた立ち上がった。
「すっかりぐしょぬれだね」
マーちゃんの涙も雨とともに乾いていた。
「ほんとにインフルエンザになっちゃうね」
「ねぇさっちゃん、家に寄っていってよ」
「え?教会に?」
「うん。そうしてよ。そしてさ」
「マーちゃんのパパを一緒に説得するんでしょ?」
マーちゃんはえへへと笑った。
「そう。今はさ、事実を知ってるのはあたしたちだけだし、とにかく今は、できることは全部やらなくちゃ、ってそう思って」
「あたしも同じこと考えてた。後悔だけはしたくないよね」
二人で力強くうなずきあった。
こうして二人だけのヴァンパイアバスターズは不死鳥のごとく甦ったのだった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます